第16話 ギルドへの報告/隣国へ
治療院で目を覚ましたリアン達は、クロハに別れを告げ、ダンジョンへと向かっていた。
「な、なんか今のダンジョンに入るのは怖いね……」
「そうだな〜。あんなモンスター達がまだいるのかと思うとな〜」
イリンとミュリンが会話をしながら歩いている。
その前を、リアンが歩いている。
ダンジョンの前には、騎士服を着た兵隊が左右に立ち、警備を行っている。
「【多種多様の集まり】です」
「現在、一階層の探索は三十分に制限されております。それに注意して、お入りください」
「はい。ありがとうございます」
兵隊の人との受付を終えたリアン。
二人の元に戻り、三人でダンジョン内に入って行った。
☆ ♡ ☆
ダンジョンから帰ってきた三人は、ギルドへやって来ていた。
「イシュさん」
「ん? あっ、リアンさん! お帰りなさい!」
「ただいま」
「イシュちゃ〜〜〜〜ん!」
「ほいストップ〜」
「うげぇ!?」
掲示板の前に立っていた受付嬢のイシュに、勢いよく抱き着こうとするイリンを、ミュリンが首根っこを掴みそれを制止した。
「な、何すんのよぉ〜!」
「お前はいつもイシュちゃんに抱きつくだろ。あれ、結構痛そうだからな?」
「え!? イシュちゃんごめんね!?」
「あ、あは、あはは……」
イシュは苦笑いするしかできなかった。
「それで、本日は?」
「あ、えっとね。さっきダンジョンに行ってきたんだ」
「ダンジョンに?」
「うん。ハイルの事、何か少しでも分からないかなって。それでね、一階層を時間ギリギリまで探索したんだけど、こんなのを見つけたの」
リアンがカバンから何かを取り出す。
「拝見します」
リアンが取り出した物を、イシュが丁寧に受け取る。
「これは……爪、ですか? ウルフ系統のモンスターの」
「やっぱりそう思うよね。私達もそうだと思うんだ。私達を襲ってきたのもダークサンダーウルフだったし」
「最後に襲ってきたモンスターも、ウルフ系統でした?」
「う〜ん……それがよく分からないのよね。姿が見えなかったから」
「なるほど……これは、最後に襲われた場所で?」
「ううん。また別の場所。特に襲われたりとかはしてない場所だったよ」
ちなみに、リアン達が爪を見つけたのは、デルビーズがダークサンダーウルフとトライデントランサータウロスを召喚した場所だった。
「なるほど……詳しくは鑑定してみないと分かりませんが……おそらくはウルフ系統のモンスターで間違いないと思います」
「鑑定、お願いしてもいいかな……?」
「もちろんです! 鑑定はギルドに勤める者の役目ですから! お任せください!」
「ありがとう。じゃあ、お願いします」
「はい! 何か依頼を受けていきますか?」
「ううん。今日はもう帰るよ」
「了解です! では、鑑定が済み次第、ご連絡しますね!」
「うん。ありがとう。それじゃあそろそろ行くね」
「はい!」
「今度ご飯奢るね〜♪」
リアンが歩き出すと、ミュリンがイリンの首根っこを引っ張りながら後についていく。
「イシュちゃん、またな!」
「イシュちゃ〜〜ん……! またね〜……!」
イシュは、三人に優しく手を振って見送る。
三人がギルドを出ていった後、イシュは受け取った爪を見て──、
「う〜ん……ウルフ系統のモンスターの爪にしては、黒光りし過ぎな気もするんだよね……」
と、思っていた。
「まぁ、全ては鑑定をすれば分かります! 持てる全てを使って鑑定しますよ〜! 腕が鳴りますね〜! 頑張るぞ〜! えいえいおー!」
イシュは一人で自分に気合を入れていた。
「イシュ〜。ちょっといい!」
「あ、は〜い! すぐ行きま〜す!」
イシュは先輩に呼ばれ、爪をポケットに入れて走っていった。
☆ ♡ ☆
三人は、パーティーの拠点にしている一軒家へと帰ってきた。
玄関を開け、中に入ると、一足の見慣れない靴が置かれていた。
「誰か来てんのか?」
ミュリンが警戒したような口調で呟く。その呟きにリアンとイリンは息を呑んだ。
三人が警戒をしながら、恐る恐る中に入っていくと、リビングにガイルと話す一人の男性がいた。
その男性を見た瞬間、三人はホッと胸を撫で下ろした。
「なんだ、デルズか」
「もう、ビックリさせないでくださいよ〜!」
「デルズさん、いらっしゃい」
「皆さん。お邪魔しております」
そこにいたのは、金髪の男性。
中性的な顔立ちで、優しそうな目をしている。
彼の名前は『デルズ』。
リアン達【多種多様の集まり】とは長い付き合いで、国王であるデリアの伝言やら何やらを伝える為に、度々訪れている。
デルズは、国王直属の秘書官だった。
デリアから受けた任を、密かにこなし、国の安寧を保っている。
「何に驚かれたのですか?」
「玄関に見慣れない靴があったから、もしかして侵入者かと思ってな」
「あ〜なるほど。いや〜すみません。最近仕事で靴を酷使しまして。ボロボロになってしまったので買い替えたばっかりなんですよ」
「そうだったのか」
「はい」
「今日は何かあって?」
リアンが尋ねる。
「はい。仕事から戻ってきたら、国王様からハイル様が行方不明になったと伺いまして……ハイル様に限ってそんな事はないだろうと思い、ここに来たのですが、ガイルさんから報告を聞き、本当なんだと、今しがたショックを再度受けていたところです……」
デルズが暗い顔を浮かべながら答える。
それを受け、三人も顔を暗くして俯く。
「イリン、デルズにお茶を出してやれ」
「あ、う、うん……」
暗い空気を破ったのは、ガイルだった。
ガイルは椅子に座っており、偉そうにイリンに命令をした。
イリンは、それを受け、慌ててキッチンに向かう。
それを見て、リアンとミュリンは嫌な顔をしていた。
「イリンさん、私、自分でやりますよ」
と、言うデルズだったが──、
「いいんだよ、デルズ。こういうのは女がやることだ。客人に茶や菓子を出す。そしてもてなす。それが女の仕事だろ? 女は家にいて、男に尽くす。それだけしときゃいいんだよ。女の冒険者とかマジでいらんだろ」
「が、ガイルさん……しょ、少々言いすぎですよ……」
「あ? いいんだよ。俺はこのパーティーのリーダーだぜ? 発言権や決定権は俺にある。そして、俺の意に逆らう事は許されないんだよ」
「「…………………」」
偉そうに語るガイルに、リアンとミュリンは、歯を食いしばり手を握りしめていた。
「お、お待たせしました……」
そこに、イリンがお茶の入ったコップを持ってくる。
「ありがとうございます、イリンさん」
「ったく、遅ぇんだよ」
「………………」
机を挟み、椅子に座り向かい合うガイルとデルズ。
デルズはイリンにお礼を言い、ガイルは舌打ちを一つして苦言を呈した。
その苦言に、イリンは顔を少しだけ顰めた。
「んでよ〜──」
「あはは! なんですかそれ!」
ガイルとデルズは、楽しそうに話している。
そんな二人の様子を見て、イリンは何かを考えていた。
イリンは、リアンとミュリンの方に戻る。考え事をしながら。
「イリン? どうしたの?」
「何考えてんだ?」
「あ、いえ。なんでも……」
「「ん?」」
イリンは誤魔化した。が、実際は何かを考えていた。
(あの雰囲気……どこかで感じた事が……あっ)
イリンは何かを思い出した。
(この二人の雰囲気、ガイルさんが謎の人と話してる時と似てるんだ……)
イリンはガイルが、デルビーズと話しているのを聞いていた。
よって、会話の雰囲気を覚えていた。
それがどうしてか、ガイルとデルズの会話をしている雰囲気が似ているのだ。
デルズとデルビーズは別人なのに。
(それに、 “声” も違うから、おんなじな訳ないのに……)
この後、イリン達はほとんどガイルとは会話をしないまま、再びダンジョンへ向かったり、ギルドへ向かったりした。
そして、ハイルが目を覚ます二日前になった。
☆ ♡ ☆
いつも通りダンジョンを探索し、ギルドへ寄ってきたリアン達は、家へと戻ってきていた。
そこには、デルズがガイルと話をしていた。
「またいんのかよ」
「ミュリン。そういう事言わない」
「だってよ〜。ここんとこ毎日だぜ? 家になんの用があってそんなに来んだよ」
「ミュリンの言う通りですね。毎日毎日飽きもせず。そんなに話すことあるんですかね?」
「まぁ、それは私も思ってたけどね」
「「でしょ〜!」」
三人は、キッチンで話をしていた。
ちなみに、ガイルとデルズはガイルの部屋で話をしている。
「お三方」
「「「っ!?」」」
話をしていると、キッチンにデルズがやって来た。
「「「ビックリしたー……」」」
「すみません。驚かせるつもりはなかったんですが……」
「まぁ、別にいいけどさ。んで? なんか用?」
ミュリンが代表して尋ねる。
「はい。国王様からお三方にご依頼がございまして。それをお伝えに参りました」
「「「国王様が!?」」」
「はい。ハイル様の探索やS級モンスターの調査の協力を、隣国のロリスタンス王国に依頼しておりまして、そのご返事が本日届いたようなのです。もちろん、協力すると」
「それと私達への依頼と、どんな関係が……?」
リアンが尋ねる。
「はい。隣国から協力してくださる方々をお三方に案内してほしいのです。馬車でこちらにやって来るのは分かっているのですが、このショタリシアス王国はとにかく広い。慣れた御者と言えど道を間違えたら数日、いや、数週間はたどり着けない。我が国、ショタリシアスはそんな場所です。なので、お三方にはロリスタンスに迎えに行っていただきたいのです」
リアン、イリンの二人は納得しているようで、デルズの話をしっかりと聞いている。
「馬車の用意はできておりますので、準備が済み次第、出発していただければと」
「分かりました。少しだけ、時間をください」
「はい」
「それって、ガイルさんは……?」
「ガイルさんは同行いたしません。療養が必要なので」
「そうですか。分かりました(よかった〜……)」
「それでは、準備ができ次第、お声がけください。私はガイルさんの部屋におりますので」
「「はい」」
そう言ってデルズは、二階にあるガイルの部屋へと戻っていった。
「さて。さっきから一言も喋ってないミュリンはどうしますか?」
リアンがため息をつきながら、隣国のロリスタンスと言うワードが出てから一言も喋ってないミュリンに尋ねる。
ミュリンは、頬が痙攣しているかのようにピクピクと動いていた。
表情は苦虫でも噛み潰したかのようなものだった。
「まぁ、ミュリンからしたら行きたくないですよね。幼馴染みのヒメリ様がいる所になんて」
「腐れ縁ですからね〜」
「は……はは……ははは……はははは……」
ミュリンは、苦笑いを浮かべる事しかできなかった。
次話で三人が隣国へと向かいます!
ミュリンと幼馴染みで腐れ縁のヒメリとは一体?
新キャラが多数登場する次話を、お楽しみに!




