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第15話 シリシア・ショタリシアスの思い/覚悟

「そう言えば、皆さんは……?」

「みんな無事だよ♪ セシリアさんは用事があってしばらくギルドには顔を出せないらしくて、リアンさん達は三人で隣国へと向かってる」

「隣国、ですか?」

「うん。隣国にハイルさん捜索の協力依頼を出してて、その返事が二日前に返ってきたから、パーティー代表としてリアンさん達三人が向かってるんだ。多分今頃、隣国の人達と作戦会議かなんかしてると思うよ」

「なるほど……そう言えば、どうやって僕達はこの治療院に? 皆さん気を失ってしまっていたのに……」

「あ〜。それはね〜」


 クロハが教えてくれた。


 たまたま報告に戻る為に一階層へと来ていた冒険者達が、倒れているハイル達を発見。

 意識はないが息があると分かり、急いで外へと運び出してくれた。

 そして、すぐさま治療院へと送られ、今に至る。


「なるほど。その冒険者さん達には感謝しかありませんね」

「うん、本当に。その人達がいなかったら、私達モンスターの餌になっちゃう所だったからね。でも、見つけてくれた人が言ってたなぁ。セシリアさんが敵を追い払ったんだろうって。だから、ハル君の側で倒れ、ハル君の手に触れていたんだろうって」

「え……」


 ハイルは、クロハのその言葉に驚愕した。


 モンスターを追い払ったのは自分。

 だが、そこはどうでもいい。誰が追い払った事になっていようがそんな事はどうだっていい。


 ハイルが驚愕したのはその先。

 セシリアが自分の側にいたと言う点だ。


 セシリアはあの時、リアン達と同じように壁にめり込んでしまっていたはずだ。

 そもそも、一番最初に吹き飛ばされてしまい、最初に気を……。


 そこまで考えてハイルは、一つの考えに至った。


「最初に気を失ったから、早くに目を覚ました……?」

「……? ハル君……?」


 クロハの心配そうな呼びかけは、ハイルの耳には届いていない。

 ハイルは今、それどころじゃないからだ。


「だとすると、正体が、バレた……!?」


 ハイルは、自分の正体がセシリアにバレてしまったのではないかと危惧していた。


「は、ハル君、大丈夫……?」

「っ! クロハさん……」


 顔を覗かれた事で、ハイルはやっとクロハが自分に声をかけてきている事に気がついた。


「す、すみません……ちょっと考え事してて……でも、大丈夫です」

「本当……? 何か悩み事だったら、すぐに私に相談してね……?」

「はい。その時はちゃんとご相談させていただきます。ありがとうございます」

「うん♪ じゃあ何か買ってくるよ。何か欲しいものとかある?」

「いや……それは悪いですよ……」

「あ〜もう。そうやって気を使わないの! ハル君は子供なんだから、お姉さんに甘えなさい!」

「は、はい……ありがとうございます」

「よし! じゃあ、なんでも言って〜♪」


 この後、ハイルは甘い飲み物や、甘い食べ物をクロハに頼んだ。

 その際、クロハに「子供っぽくてよろしい!」と言われた。

 それを受け、ハイルは自分の味覚や好みが変わってきてしまっている事に気がついた。


 ☆ ♡ ☆


 ダンジョンから救出され、治療院で治療を受けた翌日。

 一番最初に目を覚ましたのはセシリアだった。


 セシリアが目を覚まし、治療院の人達と会話をしている間に、リアン、イリン、ミュリンの三人、そしてクロハが目を覚ました。

 なので、ハイル以外の五人はほぼ一緒に目を覚ましていた。


「え? セシリアさんしばらく冒険者活動できないの?」

「はい。少し用事がありまして。ギルドへしばらく顔を出せないんです……ハルさんに会えないのが寂しいんですが……」

「そっか〜。用事があるんじゃしょうがないか〜。また会えるのを楽しみにしてるね♪ ん? ハル君に会えないのが寂しい? もしかして、セシリアさんってハル君を狙ってる!?」

「ど、どうしてそうなるんですかぁ〜!? そういう事ではなく、単純に会えないのが寂しいんですぅ〜! ハルさんやクロハさんと話すのは楽しいので♪」

「そ、そっか〜! よかったぁ〜! 私もセシリアさんと話すの楽しいから、会えないの寂しいよ〜!」

「用事が済んだら、必ずギルドへ顔を出しますね」

「うん。約束だよ!」

「はい! それでは、また。皆さんも、また!」

「「「また〜!」」」


 クロハや、リアン、イリン、ミュリンに別れを告げ、セシリアは治療院を後にした。


 ☆ ♡ ☆


 ハイルが目を覚ます二日前。


 ショタリシアス王国の城。


「シリシアが部屋から出てこなくなってもう数日……流石に心配だ……」


 ショタリシアス王国の国王、デリアが娘であるシリシアの部屋の前で右往左往していた。


「デリア……いくら娘と言えど、年頃女子の部屋の前でうろちょろするのは……」

「だ、だがな、リューク! あのいつも元気だったシリシアが、あの! シリシアが、部屋から全く出てこないんだぞ! 食事も一切取らず、城内の者達とも会話もしない! これが心配せずにいられるか!?」

「まぁ、確かにな。お嬢様の事は俺も昔から知ってはいるが、あの元気な子が一切部屋から出ず、食事も取らないのは変だな」

「だろ!? ハイル殿の事で気を落としているのは知っておった。だから気持ちが落ち着くまではそっとしておこうと思った。だが、ここまで出てこないと流石に心配になる!」


 デリアとリュークが、シリシアの部屋の前で話していると、部屋の中から──、


 ゴトンッ!!!


「「っ!?」」


 大きな物音がした。

 その音を聞いた瞬間、デリアとリュークは居てもたってもいられなくなり、ドアを勢いよく開き、中に入った。


「シリシア!? 大丈夫か!? 何があ……った……?」

「お、お父様……」

「ど、どうしたのだ……シリシア……顔も赤く、息も乱れ、髪もボサボサで……一体、何があった……?」

「あ、い、いえ……その……しょ、少々乙女の秘め事を……」

「ん…………?」

「デリア、シリシア様も年頃の女の子です。いくら娘と言えど、踏み込みすぎは厳禁だ」

「あ、あぁ……そう、だな……。無理に探るつもりはない。すまなかったな」

「い、いえ……私こそすみません……」

「何もないんだよな……? それだけは教えてくれ」

「はい。特には何もありません」

「そうか。よかった……」

「ですがお父様」

「ん?」

「リュークさんも。お二人に大事なお話がございます」

「「……………、…………?」」


 デリアとリュークは、互いに目を合わせ首を傾げた。


 ☆ ♡ ☆


 会議室。


 その中に、椅子に座るデリアとその斜め左側に立つリューク。そして、服装や髪型を整え、王族らしく背を伸ばしたシリシアがデリアの向かい側に座っていた。


「それで……話と言うのは?」

「はい。それをお話する前に一つ、お父様とリュークさんにお約束してほしい事があるんです」

「なんだ?」「なんでしょう」

「これから私が話す事、全て他言無用でお願いしたいのです」

「うむ……それだけ重要な話と言うことか……分かった。リュークも、よいな?」

「えぇ」

「ありがとうございます。では。話と言うのは他でもありません、ハイル様の事です」

「「……………」」


 デリアとリュークは、緊張した面持ちでシリシアを見つめる。


「おそらく、ハイル様は冤罪にかけられている可能性があります」

「「冤罪!?」」

「はい。正確には、ありもしない嘘をつかれている。ですが」

「ありもしない」

「嘘、ですか?」

「はい。ハイル様が所属する英雄パーティー【多種多様の集まり(ワイドバラエティ)】のメンバー、ガイルが、嘘をついているかと思われます」

「な、なんだと!? メンバーであるガイル氏が!?」

「はい。どのような理由があって、嘘をついているのかは分かりかねますが、全てはガイルの虚偽の報告です。実際は、ガイルがハイル様を殺そうとし、ハイル様に全ての罪をなすりつけようとした。その為に仲間を騙して」


 シリシアは、険しい表情を浮かべて言った。

 そのシリシアの発言を聞き、デリアとリュークも表情を顰めた。


「まさか、虚偽の報告だったとは……!」

「仲間まで騙し、ハイル様を殺そうとし、何がしたいのでしょうか、ガイルさんは」


 と、二人は言ってから不思議そうな顔でシリシアの方を向く。


「ところで、なぜシリシアはその事を?」

「どこでこの情報を仕入れたのでしょうか?」

「え!? そ、それは、その〜……あの〜……」


 二人に尋ねられ、シリシアはバツが悪そうに俯いた。


 そんなシリシアを見て、デリアは『王』ではなく『父親』としての優しい笑みを浮かべて──、


「まぁいい。理由はどうであれ、シリシアの言った事が事実なのだろう?」

「は、はい……」

「であれば、私から言う事も、無闇な詮索をすることもない」

「お父様……」

「お前の事だ。多少は危険な事に首を突っ込んでいるのだろう」

「ぐっ……」

「別に咎めたり、止めたりはしない。お前は昔から頑固で一度決めた事は最後までやりきらないと気が済まない子だったからな。だから、シリシアの気が済むまで好きにしなさい」

「お父様……」

「だが、無茶だけはするなよ……?」

「はい。ありがとうございます。お父様」

「あぁ」


 シリシアは、父の優しさが心に染み、震える声で感謝を述べた。


「今お話した事、リアンさん、ミュリンさん、そして他のメンバーの方は知らないので、その方々にも……」

「あぁ。決して口外しないと誓おう。今、名前が挙がらなかったが、イリン嬢はこの事を知っているのか?」

「…………はい。というより、イリンさんがその事実を話していたんです」

「何!?」

「シリシア様、どういう事でしょう? イリン様もガイルの共犯者と言うことですか?」

「いえ。イリンさんもまた被害者です。ガイルが何者かと会話をしているのをたまたま聞いてしまったらしく、その話の内容が……」

「虚偽の報告、そして──」

「ハイル様を殺害しようとした、決定的な証言。ですか」

「はい。彼女は真実を知ってしまった事により、一人で苦しんでいました。いくら知らなかったとは言え、ギルドや国に虚偽の報告を行なってしまった。これは立派な詐欺行為に該当してしまう。どうすればいいよか分からず、一人苦しみ、悩んでおられました」


 シリシアからの報告を聞いた二人は、顔を見合わせて──、


「苦しめてしまったのは申し訳なかったな……確かに、本来であれば、知らなかったとしても虚偽の報告を行えば何かしらの罰則が課せられる。しかし、今回は状況が状況だ。騙され裏切られた者に、罰を与える事なんてできんよ」

「お父様……ありがとうございます……!」


 シリシアは、深々と頭を下げる。

 そして、頭を上げるとそこには優しい表情を浮かべた父とリュークが。

 シリシアは、無条件に自分を信じ、苦しむ人の為に最善を尽くしてくれる父とリュークの優しさに、目頭を熱くしていた。


 しかし、今は泣いてなどいられないので、なんとか涙を堪え、シリシアは話を続けた。


「この事、隣国にも伝えた方がよろしいでしょうか?」

「いや……。それはやめておいた方がいいだろう……」

「ん? お父様?」


 シリシアの尋ねに、デリアは渋い表情を浮かべた。


「デリアのかわりに答えましょう」

「リュークさん。お願います」


 渋い表情を浮かべ、胃のあたりを押さえるデリアにかわり、リュークがデリアの渋い表情の理由を述べた。


「先ほど、隣国のロリスタンスから手紙が届きまして」

「ロリスタンスから?」

「はい。ハイル様が行方不明になり、S級のモンスターが存在するかもしれない。その対処はさすがに、我が国だけでは行えません。なので、協力関係にあるロリスタンス王国に調査、捜索の協力依頼を出していたんです」

「それで、その返事が先ほど届いたんですね?」

「はい。協力をしていただけるとお返事をいただけたのですが……その後が大変でして……」

「ん?」


 シリシアは、リュークから手紙を受け取り、中を読む。

 手紙には二つの種類があった。


手記手紙(ハンドメッセージ)】と【声記手紙(ボイスメッセージ)】。


 文字でのメッセージか声でのメッセージ。その二つがある。

 今回のメッセージは、【声記手紙】だった。


『ハイル様捜索の協力依頼、謹んでお受け致しますわ』


 最初に聞こえてきたのは、ロリスタンス王国の国王である『エリア・ロリスタンス』だった。


 エリアは、女性初の国王で、デリアとは昔、同じパーティーで活動していた。


『ハイル様には返しても返しきれない恩がございます。よって、どんな手を使ってでも必ずハイル様を見つけ出して見せます』


 ここまでは普通のメッセージだなぁ。と思うシリシア。しかし、次の瞬間──、


『おい! ショタリシアス!!!』

「っ!?」


 突如、エリア以外の女性の声が聞こえてきた。


『ハイル様が行方不明とは一体どういう事だぁ!!! あのハイル様がいなくなるなど、一体どういう事なんだぁ!?』

「こ、この声……」


 シリシアには、その女性の声に心当たりがあった。


『エリィ! ちょっと、落ち着いて!』

『止めるな、ドゥーザ! あの最強のハイル様が行方不明になったのだぞ! これが落ち着いてられると思うのか!?』

『気持ちは痛いほど分かるけど、今は国王様がメッセージを残してるところだから……!』

『そんな事関係あるかぁぁぁ!!! ええい! 離せ! 離せ〜〜〜!』


 そこで【声記手紙】は終了した。


「「「………………」」」


 沈黙が流れる部屋。

 その沈黙を破ったのは、シリシアだった。


「なるほど……エリィ様が原因でしたか……」

「えぇ……この報告だけでもこの有様ですから、もしシリシア様の情報をお伝えしたら……」

「街……いえ、国が数個、余裕で消滅しますね……」

「はい……」

「分かりました。この事は報告しません。この話は、私達三人だけの秘匿事項、ということで」

「はい」「そうだな」


 そうして、シリシアの報告は終了した。


 ☆ ♡ ☆


「リアンさん達に?」

「あぁ。ロリスタンスに向かってもらうことにした」


 先ほど会議を終えたシリシア達。

 夜になり、デリアに呼ばれたのでシリシアはデリアの私室を訪れていた。


「そうですか。喧嘩にならなければよいのですが……」

「どういう事だ?」

「実は……ミュリンさんとヒメリ様は腐れ縁でして……かなり仲が悪いのです……」

「そ、そうだったのか……では、私の判断は間違い……だったか?」

「いえ、お父様。むしろよかったかもしれません」

「ん? どういう事だ?」

「ヒメリ様とミュリンさんの仲は悪いのですが、二人が喧嘩をしていると、エリィ様は逆に落ち着いているんです。なので、ミュリンさんがいれば、エリィ様も怒らずに話を聞いてくれるかと」

「なるほどな」

「では、私はこれで」

「あぁ。シリシア」

「はい?」


 デリアの私室から出ようとしたシリシアに、デリアが声をかける。


「あまり、無茶はしないでくれよ」

「はい。もちろんです。では」

「あぁ」


 シリシアは部屋を後にする。それと入れ替わりでリュークが入ってくる。


「いいのか? シリシア様はきっと、危険な事に首を突っ込んでるぞ?」

「まぁ、そうだな」

「止めないのか?」

「止めても無駄、と言うのはリュークも分かってるだろ? あの子は一度決めたらそれを達成するまで途中で辞めたりしない。一本の線を突っ走る。そんな子だ。全く、誰に似たんだかな」


 デリアは、椅子の背もたれに寄りかかり、天井を仰ぐ。


「まぁ、あの人の娘だからな」

「あぁ。じゃじゃ馬なところまで似なくていいのにな」


 デリアは、優しく微笑みながらそう呟いた。


 ☆ ♡ ☆


「お父様への報告は済みました。隣国からの協力もえられました。後は、私も覚悟を決めるだけ」


 シリシアは、自室の姿見の前に立っていた。


「この命を懸ける覚悟を……!」


 そう言葉を発した時、姿見に映るシリシアの髪色と髪型が変化した。


 青色の中に銀色が混ざった色でショートカットだった髪から、ボブカットのピンク色髪へと。

 なろう様では初のブックマーク二桁!

 誠にありがとうございます!!!


 お読みいただけるだけでも嬉しいのに、ブックマークをしていただけるなんて、幸せ過ぎます……!


 ブックマークをしていただいた皆様の為に(もちろん、それ以外の読者の皆様にも)、これからも読んでいただける為に、もっともっとたくさん更新していきたいと思っておりますので、楽しみにしていてください!

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