第14話 目覚め
──ここは、どこだ……?
まどろみの中、ハイルは自分がどこにいるのか考えていた。
目は瞑ってる。その感覚はある。
しかし、目にかかる光りがないと感じる。
つまり、ハイルがいるこの空間は真っ暗な闇の中だと言う事が分かる。
──一体、俺はどうなったんだ……?
ハイルは、気を失う直前の記憶を呼び起こす。
──そうだ……。俺は謎のモンスターと戦って……なんとか力を使う事ができて、みんなを守れた……。でも、その直後に意識が遠くなって……。
ハイルは段々と思い出してきた。
ハルの姿になって使えなくなってしまった力を使えた事。
大切な仲間達を守れた事。
敵は逃がしたが、誰も死なずに済んだ事。
それらを段々と思い出していったハイルは、この真っ暗な闇の中から抜け出す事ができた。
☆ ♡ ☆
「ん……んん……」
ふかふかなベッドの上でゆっくり目を開くハイル。
見慣れない天井が視界に広がり、辺りからは薬品の匂いが感じられる。
「こ、ここは……?」
起き上がる気力が出ず、横になり天井を見上げたまま呟くハイル。
誰に聞いた訳でもないその呟き。しかし、その呟きに答える者がいた。
「ハル君!? 目が覚めたのね!? 良かったぁぁぁ……! ここは治療院だよ!」
「治療院……この声……クロハさん……?」
「うん! 私! クロハだよ!」
ハイルの呟きに答えたのはクロハだった。
クロハは、ベッドの脇にあった花瓶の水を取り替えてきた所で、部屋に戻ってきたタイミングで、ハイルは目を覚ましたようだ。
「ぼ、僕……うっ……!」
「む、無理しないで……!? ゆっくりでいいから……」
起き上がろうと上体を起こすと、全身に激痛が走った。
それにより、一人では完全に起き上がる事が出来なくなってしまったが、クロハが背中に手を添え、左手を握って起こしてくれたので、なんとか座ることができた。
「一週間も目を覚さなかったから、心配したんだよ……」
「い、一週間も……!?」
「うん……。お医者さんも、なんで目を覚さないのか分からないって言ってて……本当に心配したんだから……!」
「っ!」
泣きながら抱きついてくるクロハ。
相当な心配をかけてしまったと、反省をせざるを得ないハイルは、クロハの背中に手を回し、優しくさする。
「ご心配をおかけしてしまい、すみません……。でも、僕は大丈夫です。クロハさんを放って死んだりしません」
「ぐす……本当……?」
「はい。約束です。僕は、クロハさんを置いて、死んだりはしません」
「約束だからね」
「はい」
「んっ」
「え、え〜っと……?」
「約束の証、して!」
「な、何をすれば……?」
「キス」
「ふぇ!? き、きききききききききききキスですか!?」
「うん。ほっぺとかおでこじゃ駄目だからね。ちゃんと、私の口にして」
「ど、どうしても……?」
「うん。どうしても。じゃなきゃ、ハル君の言う事信じないもん。もう二度と、ダンジョンにも連れて行かない」
「うぐっ……」
それは困る。と思うハイル。
「わ、分かりました……後で怒ったりしないでくださいね……?」
「怒んないよ。んっ。早く」
目を瞑り、顔を突き出すクロハ。
クロハは本気だと、もう諦めるしかないと思ったハイルは、ゆっくりとクロハに顔を近づけ──、
チュ……♡
「こ、これでいいですか……?」
「うん! えへへ〜♪ やっとハル君とキスできた〜♡ これはもう、禁断の関係を持つのも時間の問題なんじゃ……♡」
「く、クロハさん……!?」
「はっ!? またいつもの妄想に……!? ご、ごめんね!? な、なんでもないの! 気にしないで!?」
「禁断の関係とか聞こえた気が……」
「わー! わー! なんでもない! 本当になんでもないから〜〜〜〜〜!!!」
クロハの叫びは、治療院中に響き渡ったと言う。
ちなみに、この叫び声がうるさすぎてクロハは、治療院の院長にこっぴどく叱られた。
次話から、ハイルが眠っている一週間の間に起きた出来事が描かれます。
セシリア、リアン、イリン、ミュリン、クロハ。それぞれがメインとなって描かれますのでお楽しみに♪
ブックマーク、ご評価、誠に……! 誠にありがとうございます……!!!
皆様に読んでもらえてると思うと、とても嬉しく、創作意欲が湧きまくります!
これからも沢山更新していきますので、沢山楽しんでいただけますと嬉しいです!




