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第12話 ダンジョン内での戦い/絶体絶命のピンチ

「ギルドへ報告した事についてなんですけど……」

「っ!?」


 ハイルは、勇気を出して切り出した。


 ガイルの証言について。


「な、何か疑問が……?」

「疑問……と言えばそうですね。ガイルさんから聞いた事をギルドへ報告したんですよね?」

「う、うん……」

「その……ガイルさんの事も、ハイルさんの事も存じ上げないのですが、ハイルさんがガイルさんを殺そうとしたと言うのは、本当なんでしょうか……?」

「そんな訳ないっ!!!」

「っ!?」


 ハイルがそう尋ねると、イリンが大声を上げた。

 その声は、ダンジョン内に響き渡った。


「い、イリンさん……?」

「あ、ご、ごめんなさい……私、急に大声を……」

「い、いえ……それより、そんな訳ないって言うのは……」

「……………今から話す事、誰にも言わないでもらえますか……?」

「は、はい……!」


 イリンは、ハイルに近づいてくる。

 ハイルの肩とイリンの腕がピッタリとくっつく。


「っ……」


 イリンのひんやりとしていて柔らかい腕の感触にドキドキしながらも、ハイルはイリンの言葉に耳を傾ける。


「私、ガイルさんの報告をそもそも信じてはいないんです……あの人は、昔から信用なりませんから」


(確かに、あいつの言動は目に余るものがあるからな)


「なので、ハイルがガイルさんを襲ったと聞いた時、デタラメだと思いました。ですが、それは私個人の考え。もしかしたら本当かもしれない。なので、仕方なく報告をしたんです。でも、私は聞いてしまった……」

「な、何を……?」

「ガイルさんが、誰か分からない男の人と話しているのを聞いてしまったんです。ハイルが自分を襲ったのは嘘。本当は、自分がハイルを襲って殺した、と……」


(謎の男と言うのが気になるけど……イリンはそれを聞いたのならなぜそれを報告しなかったんだ……?)


 ハイルはイリンに尋ねる。


「それを報告しなかったのは、なぜですか?」

「私も報告をしようと思いました……でも、もうギルトも国も動き始めていて、言い出せなかった……それに……」

「ガイルさんが怖い……?」

「はい……情けない話ですが、私はガイルさんが苦手で、本当は側にいるのも嫌なんです……そんな人の報告が嘘だったと言ってしまったら、何をされるか……あの話を聞いてしまったことさえ、バレていないか、それが怖くて……報告、できませんでした……」


 イリンは涙目になる。


「情けないですよね……同じパーティーメンバーなのに、恐怖を抱いて、さらには大事な仲間が罠にハメられたと言うのに、自分の身を案じて本当の事を報告できないなんて……私は……私は冒険者失格です……!」


 イリンは大粒の涙を流して、泣き出してしまった。


「そんな事ありません。イリンさんは情けなくなんかない。むしろカッコいいです。自分一人だけで、本当の事調べようとしたんですよね? だとしたら、すごいです。冒険者の鑑ですよ」

「ハル君……」

「それに、むしろその事は報告しない方がいいと思います」

「な、なんで……?」

「皆さんは英雄パーティーなんですよね?」

「うん……」

「だとしたら、英雄パーティーが虚偽の発言をし、ギルドと国を混乱に陥れた事になります。そうなると、虚偽の発言をしたガイルさんだけでなく、イリンさん達もとばっちりを受けてしまう可能性があります。なので、例え真実かどうであろうと報告した事を覆さないほうがいいと思います」

「…………………」

「あ……えっと……イリンさん?」

「あ、ごめんなさい。その……ハル君の言う事が、とても大人びていたので……」

「あ、いや、その……!」


 しまった……と思うハイル。

 つい、ハイルとして喋ってしまった。今の自分はハイルではなく、ハルなのに。


「ご、ごめんなさい……」

「あ、い、いえ! 謝らないでください……! 大人びてるなと思っただけで、責めている訳ではないので……! それに、ハル君の言った事、確かにその通りだと思いました。なので、報告を覆したりはしません。これは、私とハル君、二人だけの秘密、ですよ♡」

「っ! は、はい……!」


 イリンに額を小突かれ、ハイルは顔を真っ赤にしながら小さく頷いた。


「ハル君」

「は、はい……?」

「よいしょ」

「ふ、ふぇ!? い、イリンさん!? な、何してっ!?」

「少しの間、こうさせてください」

「っ……は、はい……」


 イリンは、ハイルを抱きしめてきた。

 クロハよりは小さいが、それでも弾力があり柔らかく大きい胸が、ハイルの顔に押し付けられる。


(こ、こんな……こんなの……ダメになる……)


 ハイルは、イリンの胸の中に顔を埋めたまま眠りに就いてしまった。


「すぅ〜……すぅ〜……」

「寝ちゃいましたか。ふふ♪ 可愛い♡ ちゅ♡ お休みなさい♡」


 イリンはハイルの額にキスをした後、そのまま抱きしめながら見張りを続けた。


 ☆ ♡ ☆


 イリンとハイルが、ギルドや国に報告した事についての話をしている時。

 テントから出ようとして、動けなくなっている人がいた。


(そ、そんな……ハイル様が、刺されて殺された……?)


 セシリアだった。


(ハイル様が死んだ事も、裏切った事も信じてませんでした……でも……まさか、パーティーメンバーであるガイルさんが虚偽報告を行って、その上ハイル様を殺害しようとしたなんて……)


「くっ……!」


 セシリアは歯を食いしばった。


「許せない……!」


 血が出てしまうのではないかと言うくらい、セシリアは歯を食いしばり、手を握りしめた。


 ☆ ♡ ☆


 翌朝。

 クロハ達は、一階層の最後のブロックを見て回っていた。


「うん。やはりこの一階層にはハイルもS級モンスターもいないね」


 リアンがそう言う。


「だな〜。二階層へ続く階段も見つけた事だし、一旦報告しに行くか〜」

「ですね」


 ミュリンの言葉にイリンが賛同した。


 そうして、クロハ達は一度ダンジョンを出て、ギルマス達へ報告をしに行く事に。


 皆が移動を開始した直後──、


「ワオォォォォォォォォォォォン!!!!!」

『っ!?』


 どこからか、雄叫びが聞こえてきた。


「だ、ダークサンダーウルフですか!?」

「それに近いけど……この雄叫び、この威圧感、ダークサンダーウルフ以上のモンスターだと思う……!」

「ダークサンダーウルフ以上って事は、A級モンスターって事か……!?」


 リアン、ミュリン、イリンがクロハとセシリア、そしてハイルを守るように前に立つ。


「一体どこから……」


 イリンが小さく呟いた瞬間──、


「っ……!?」


 ドゴォォォォォォォォンッッ!!!!!


『っ!?』


 突如、大きな衝撃音が響き渡った。

 全員が音のした壁を見ると、そこには──、


「がっ……!? あっ……!?」

「せ、セシリアさんっ!?」


 壁にめり込むセシリアの姿があった。


「い、一体何──がっ!?」


 次に壁にめり込んだのは、リアンだった。


「リアンっ!? クッソ……敵はどこだ……!」


 戦闘態勢を取るクロハ達。


 ミュリン、イリン、クロハ、ハイル。四人で背中を合わせ、四方を油断なく警戒する。


「イリン、探知技能を──」

「今やって──」


 ドゴォォォォォォォォンッッ!!!

 ドォォォォォォォォォンッッ!!!


「「はっ!?」」


 ミュリン、イリンの二人が同時に壁に吹き飛ばされ、めり込んでしまった。


「ほ、本当どこから攻撃を……」


 クロハが辺りを見回す。

 モンスターらしき姿は全く見当たらない。

 気配もなければ、殺気などの威圧感もない。

 なのに四人は攻撃を受けた。


(目には見えない攻撃……? いや、そんなモンスターは存在しないはずだ……)


 ハイルは、クロハと背中を合わせながら思案していた。

 背中と言っても、ハイルの背中に当たっているのはクロハの柔らかいお尻だが。


「っ!? ハル君!!!」

「っ!?」


 警戒をしていたクロハは、何かを察したのか、ハイルの名を叫びながらハイルを抱きしめた。

 その次の瞬間──、


「ワオォォォォォォォォォォォンッッッ!!!!!」


 モンスターの雄叫びが聞こえてきた。

 さらに、その雄叫びは聞こえきただけでなく──、


「くっ……!? くぅぅぅぅぅぅぅぅ……!?」


 衝撃波となって、クロハの背中を襲ってきた。


 おそらく、クロハはこれを察してハイルを抱きしめたのだろう。


 しかし、クロハの予想以上にその衝撃波の威力が凄まじく、クロハと、抱きしめられているハイルの二人は勢いよく吹き飛んでしまった。


「がっ!?」「ぐっ!?」


 吹き飛んだ際、クロハがハイルを抱きしめ地面に落下するのを自分の背中のみにしてくれた。

 そのおかげで、ハイルは最小限のダメージで済んだ。

 だが、背中から地面に勢いよく落下したクロハは、大ダメージを負い、動けなくなってしまった。


「く、クロハさん……!」

「…………………」


 クロハは気を失ってしまったようで、ハイルの呼びかけに応えない。


「リアン、イリン、ミュリン、セシリアさん……」


 壁にめり込んでしまっている四人と、自分をかばって気を失ってしまったクロハ。


 その光景を見た瞬間、ハイルの脳裏にとある記憶がフラッシュバックする。


「あ……あぁ……あぁぁ……ぁぁぁ……」


 その記憶が流れた瞬間──、


「あああああああああああああああああああ!?」


 ハイルは叫び声を上げた。


 まるで、絶望に支配されたかのように。

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