第10話 闇の組織/暗躍する影
時は遡り、ガイルが部屋で謎の男と会話をした直後。
ガイルと話していた、真っ黒なローブを身にまとった謎の男はとある場所を訪れていた。
「──────────」
何か謎の言語を呟きながら、壁を触る男。
この男が訪れていたのは、ショタリシアス王国の王城。
門番に見つからない死角となる場所に侵入し、壁に触れている。
何かを唱え終わったのか、男が壁から手を離すと、手が触れていた所を起点に、空間が歪み始めた。
「ふっ」
その歪んだ空間の中に入っていく男。
男が中に入った瞬間に、空間の歪みは消失した。
☆ ♡ ☆
カツ、カツ、カツ。
薄暗い空間に、一つの足音が反響している。
「…………………」
歩いているのは、先程の謎の男だった。
男は無言でただ歩き続ける。
ここは廊下のようで、道がひたすら長く続いている。
周りが暗いので、ゴールが全く見えず、この道は永遠と続いてしまうのではないかと錯覚させる。
「ふぅ」
目的地に着いたのか、男は足を止めフードを外す。
男は美青年だった。
髪は金が少し入った茶髪で、瞳は右目が紫、左が水色のオッドアイ。
少年のようなあどけなさも残しつつ、大人のようなミステリアスな雰囲気を持っている。
年齢的には二十歳くらいか。
「ただいま戻りました」
男は壁を開け、中に入っていく。
一見するとただの壁にしか見えないそれは、どうやら目的地への扉だったらしい。
中に入ると、辺りは真っ黒な岩に囲まれていた。
岩が無数に点在する中で、中央には道があり、扉から続く道、そして、人が十人以上は並んだり出来そうな広間的な場所。
そして、その広間的な場所の目の前には岩でできた王座のようなものがあった。
「遅いぞ!」
「申し訳ございません」
男が中に入り、足を進めると、広間的な場所に立っている女が声を荒げた。
広間的な場所には、声を荒げた者を含め三人の女が立っている。
「調査に少しばかり時間がかかりまして」
「言い訳などいい! 貴様がボンクラだと言う事は分かっているからな! それで、結果は?」
「英雄パーティーに所属するハイルですが、ダンジョン内で消息を絶ったとの事」
「「「っ!?」」」
男の報告に、三人は目を見開く。
「消息を絶った、だと!? 貴様、そんなふざけた報告が許されると思っているのか!!!」
「そうだな。我々の目的はハイルの確保。居場所を突き止めることじゃない。それに、消息不明と言うのであればなおさら目的を達成できていない」
声を荒げた女と、その隣に立つ女が男の報告に対し文句を述べる。
「そんなんで、どうやって報告を──」
最初に声を荒げた女が、何かを言おうとした瞬間、誰もいない王座のような場所から、突如として声が聞こえ始める。
『ハイルは、見つかったのか……?』
「「「「っ!?」」」」
その声が聞こえた瞬間、四人は一斉にその場に片膝をついて跪く。
「魔王陛下、申し訳ございません。それに関しましては未だ捜索中でございます。もう少しだけ、猶予をいただきたく……」
男がそう言うと、王座のような所から──、
『一体どれだけ時間をかけているっっっ!!!』
「「「「っ……!?」」」」
威圧感のある、背筋が凍るような声が返ってきた。
それにより、四人が顔を伏せ地面を見つめる。
冷や汗を額に浮かべながら。
『あぁ……もどかしい……! 自ら動けない事が、もどかしい……! 自ら動ければ、ハイルなど容易く見つけられると言うのに……!』
相当苛立っているのか、謎の声はどんどん声を荒げて行く。
すると、広間的な場所の左側にある石の扉が開き、そこから少女が入ってくる。
「お姉様!? どうされたのですか!?」
その少女は王座のような所に上がり、置いてある石碑を優しく撫で始める。
「あなた達、お姉様に何をしたんです!」
「へ、ヘルズダール様……落ち着いてください……! 私達は何もしておりません……!」
「では、何が原因でお姉様が取り乱していると言うのです? エリドリアス。答えなさい」
入ってきた少女の名は『ヘルズダール』。魔王陛下と呼ばれている謎の声の妹のような存在だった。
純白の髪色が特徴的。
髪型はロングなのだが、背が低いため、毛先が地面スレスレとなっている。
ヘルズダールは、人間で言うところの十歳くらいの見た目をしている。
そんなヘルズダールに声をかけたのは、銀色の中に青色が混ざった髪色をした女性だった。
光りが当たると、銀色がキラキラと輝き、神々しさを醸し出す。
そんな女性の名は『エリドリアス』。
ヘルズダールに睨まれたエリドリアスは、震えながらも質問に答える。
「はい。その……デルビーズがハイルを見つけられていないと言う報告を行ったのが、魔王陛下がこうなった原因でして……」
「そうなのか? デルビーズ」
「は、はい……!」
報告を受けたヘルズダールが、エリドリアスの隣に跪く男に問う。
謎の男の名は『デルビーズ』。
デルビーズは、震えながらも顔を上げ、ヘルズダールと目を合わせる。
「ま、魔王陛下からいただいた任なのですが、は、ハイルが突如としてダンジョンで行方不明になりまして……捜索をしているのですが、全く見当たらず、進捗が……」
「もういい。黙りなさい」
「はい……」
デルビーズは、力なく黙り込んでしまう。
「お姉様。もう少しだけ時間をあげてほしいんです。このグズ共を使って、必ずハイルを見つけ出すから、もう少しだけ、時間をお願いします」
『ヘルズ……分かった。我の可愛い妹の頼みだ。聞いてやろう』
「わぁ〜! ありがとうございます! お姉様!」
『しかし、それほど待てん。 “あのお方” も仏ではないからな。猶予は三ヶ月。その間になんとしてでもハイルを見つけ出しなさい』
「「「「はっ!」」」」
『では、我は休む』
「今、そっち行くね、お姉様」
そう言って、ヘルズダールは先程入ってきた石の扉を開け、外に出ていった。
そして、謎の声も聞こえなくなった。
この空間に、四人だけとなると──、
「全く……! 貴様のせいでこっちまで叱責されたではないか!」
「どう責任取るつもりだ?」
「っ……結果で示すさ」
二人の女に詰められるデルビーズだが、舌打ちを一つした後、扉へと続く道を歩き出した。
「ふん」
そんなデルビーズの後ろ姿を見ながら、エリドリアスは鼻を鳴らし、ヘルズダールが入退室をした扉へと向かっていった。
デルビーズも外に出て、この空間には女二人だけが残った。
「さて、どうする?」
「そうだな。ひとまず、デルビーズに任せよう。ハイルを取り戻す為には、今は下手に動かない方が得策だ」
「そうだね」
白いベビードールのような服を着た女。
Qカップと言う、現実離れした爆乳と純白のパンツをさらけ出している。
そんな女の名は『ビャクトリース』。
ビャクトリースに問いを投げかけられたのは、黒のベビードールのような服を着て、こちらもQカップと言う現実離れした爆乳と、黒のパンツをさらけ出している女。
その名は『スザリーク』。
スザリークはビャクトリースに答えた後、広間的な場所の右側にある石の扉へと向かう。
そして、ビャクトリースと共に、この場を後にした。
この会話を、デルビーズが聞いていたとも知らずに。
☆ ♡ ☆
時は進み、ハイル達がダンジョン内で調査を行い始めた頃。
「ギヘヘ。それじゃあ、早速始めるとしますか」
デルビーズは、ダンジョンの中にいた。
ハル達がダンジョン内に入っていくのを確認した後、ダンジョン内に潜り、とある作戦を決行しようとしていた。
「トライデントランサータウロス、ダークサンダーウルフ、行きなさい」
「ブモォォォォォォォォォォッ!!!!」
「アオォォォォォォォンッッ!!!!」
デルビーズは、懐から真っ黒な石を取り出し、それを地面に投げ砕いた。
すると、砕けた石からモンスターが出現した。
このモンスター達は、B級で本来であれば一階層には出現しないモンスター達だった。
「さぁ、ハルという少年が、ハイルかどうか確かめさせてもらいますよ。ギヘ。ギヘヘッ」
☆ ♡ ☆
クロハがB級モンスターを退け、皆がダンジョンを脱出した後。
クロハ達がいた場所に、デルビーズが立っていた。
「ふむ……ハルと呼ばれていた少年以外、眼中にはありませんでしたが……まさか、一瞬でこの二体を消し去るとは……エルフの少女……」
何か思い当たる節があるのか、デルビーズは顎に手を当てて考え込んでいる。
しかし、それも数十秒の事で──。
「いや。ありえないな。あんな少女が “セイクリッドガール” であるはずがない。でもまぁ。警戒は必要ですね」
デルビーズは、ハルが倒れていた場所を手で擦りながら──、
「力を使わなかった……いや、使おうとはしていた……。でも、発動しなかった……。子供になった事で力が制御されてしまった……? はぁ。少し危険にはなるけど、致し方ない、か」
デルビーズはゆっくり立ち上がり、黒く禍々しく光る石を取り出す。
そして、それを地面に落として砕く。
「さぁ、ダークネスバイトウルフ。あいつの正体を引きずり出しなさい」
「グルルルルルルルルルルル……ワオォォォォォォォォォォォンッッッッ!!!!」
デルビーズは、巨大なモンスターを出現させた。
そのモンスターは、大きく雄叫びを上げ、どこかに走り去っていく。
「ギヘ。ギヘ。ギヘヘヘ。ガイルさん、あなたの嘘を真にしてあげますよ。あの、S級のダークネスバイトウルフでね」
デルビーズが出現させたモンスターは、 “S級” だった。
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