File45.皇居の最終決戦と、新秩序(ニュー・オーダー)の創造について(決戦・了)
「ははは! どうした道満! また失う気分は! お前はいつだってそうだ! 何も守れはしない!」
カガチの勝利を確信した嘲笑いが、混沌に染まった皇居の空に響き渡る。 オサキは私の過去の術が生み出した『虚数の牢獄』に飲み込まれ、私自身が生み出した呪詛システム『楔』は、この国の秩序を根底から破壊し続けている。 呉葉と同じ。 いや、それ以上の絶望。 私の心が『道満』の絶望に引き戻されそうになる。
「……」
私は目を閉じた。 そして、ゆっくりと開く。 その瞳に宿っていたのは絶望ではない。 コンサルタントとしての、冷徹な『分析』の光だった。
「……カガチ」
「……何だ?」
「お前の『システムの……致命的な欠陥』を……見つけたぞ」
「……なにを……戯言を……」
「お前は言ったな。お前は俺の『絶望』から生まれた、と」
「……」
「お前は俺の『過去』そのものだ。……だからお前は、俺の『過去』の術しか知らない」
「……!」
「だがな、カガチ。俺は、この『九十九』として……お前が知らない『現在』を……生きてきたんだ」
私は懐から、これまでに集めてきた『報酬』たちを――九十九として得てきた絆の証たちを――静かに構えた。
「――コンサルティング、最終フェーズ、開始だ」
カガチが、私が取り出したガラクタ(報酬)に一瞬戸惑う。
「まず第一に、『社員の安全確保』だ」
私は懐から、ツチノコから授かった『隠形発見の笛』を取り出し強く吹いた。 音は物理的な空間を超え、カガチの仕掛けた『虚数の牢獄』という『概念』に響き渡る。 『失われたモノ』を探し出すその音色が、暗闇の中で凍えるオサキの『魂』を捉えた。
『……九十九さん……?』
「見つけたぞオサキ! そこを動くな!」
「無駄だ! 牢獄の『壁』はお前の術が創り出した絶対なる『無』! 入ることも出ることもできん!」
「……なるほど。『絶対なる壁』か」
私は次に、ぬりかべから授かった『どこでもぬりかべ』の石板を取り出した。
「ならば『絶対なる壁』には『絶対なる壁』をぶつけるまでだ」
私はオサキが囚われている虚空の『一点』に、その石板を叩き込んだ。 『無』の牢獄の壁。 『絶対防御』のぬりかべの壁。 二つの矛盾した『絶対』の概念が衝突し、甲高い悲鳴と共に空間に『バグ(亀裂)』が生まれた!
「今だオサキ! 出ろ!」
「……九十九さん、しかしこの亀裂は……」
「まだだ!」
私は最後に、座敷わらし(千代)の『一期一会の縁結びの糸』を取り出し、その指に結び亀裂へと投げ入れた。
「――俺とお前の『縁』は、こんな牢獄ごときに断ち切れるものではないッ!」
糸はいかなる障害も物理法則も無視し、最強の『縁』を辿りオサキの手に絡みついた。 私はその糸を渾身の力で引き寄せる。
「――帰って来い! 九十九経営コンサルティングの……俺の唯一の『秘書』よ!!」
「―――御意ッッ!!」
オサキが銀色の狐の姿のまま光と共に亀裂から飛び出し、私の腕の中に着地した。
「……ありえない……」
カガチが絶句する。 自らが創り出した『過去』の最強の術が……得体の知れないガラクタ(報酬)によって……いとも容易く破られたのだから。
「……お待たせいたしました、九十九さん。……服が埃だらけになってしまいました」
「……全くだ。後でクリーニング代は経費で落としておけ」
私はオサキを地面に降ろし……カガチに向き直った。
「さてカガチ。第二フェーズだ。お前のその『混沌事業』の『監査』を続行する」
「……黙れ! 黙れ道満! お前が知るか! お前の絶望がどれほどのものだったか!」
カガチが逆上し、赤黒い『混沌の概念上書き』の奔流を私に向かって叩きつけてくる。
「……その『本質』を見てやろう」
私はその奔流の前に立ち……あかなめの『森羅万象の味覚椀』を構え……一つ目小僧の『看破の義眼』を開いた。
『義眼』が、カガチの根源的な『恐怖』を映し出す。 ――それは『秩序』から拒絶され、誰にも理解されず、『無』へと消えていく……孤独な自分の姿。
『味覚椀』が、その混沌の『本質』の味を伝えてくる。 ――それは『怒り』でも『憎しみ』でもない。……ただひたすらに濃く……哀しい……『助けてくれ』という……『呉葉を救えなかった道満の後悔の味』。
「……そうか」
私は全てを理解した。
「……カガチ。お前は……ただ……『認めてほしかった』だけなのだな。……師の『秩序』に……そして俺自身に」
「……な……何を……分かったような……口を……!」
「お前のビジネスモデルは破綻している、カガチ。……『混沌』では誰も救われない。……お前自身さえもな」
「だま、れ……ッ!!」
カガチがその全存在を賭け、最後の一撃を放とうとする。
「――監査は終了だ」
私は最後の『報酬』を取り出した。 閻魔大王の『契約抹消の墨』。
「お前のその歪んだ存在理由……。『道満の絶望』という『契約』そのものを」
私はその黒い『墨』の石を……カガチではなく。 ……自らの『胸』……かつて道満だった、その心の中心に……強く押し当てた。
「――『九十九経営コンサルティング』代表として……『蘆屋道満』との過去の因縁=『契約』を……これより破棄する!!」
「―――な、……に…………?」
私が自分自身に『抹消』の術を行った瞬間。 カガチの存在の根幹が……崩れ始めた。
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