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## 第3話「屋上の秘密」

放課後。


俺は約束通り、学園の屋上への階段を上っていた。


昨夜の戦闘の傷は、病院で治療を受けてほぼ完治している。記憶治療という便利な技術のおかげだ。痛みの記憶を抜き取れば、体も回復が早まるらしい。


===================================

【朝倉 蒼】Lv.10

職業:記憶喰らい(D級)

HP:250/250(全快)

MP:100/100(全快)

状態:良好

===================================


「遅い」


屋上の扉を開けると、鈴音が腕を組んで待っていた。


放課後の夕日が、彼女の銀髪を黄金色に染めている。


「すみません、担任に呼び止められて」


「ふーん」


鈴音は俺をじっと見つめた。


「本当に、怪我は大丈夫?」


「はい、もう完璧です」


「そう…ならいいけど」


安心したような、でもどこか複雑そうな表情。


「それで、話って」


「その前に」


鈴音が人差し指を立てた。


「これ」


===================================

【アイテム取得】

『記憶遮断の腕輪』を受け取った!

効果:周囲からの記憶探査を無効化

===================================


銀色の腕輪を渡される。


「これは?」


「記憶遮断の腕輪。これをつけていれば、他の記憶能力者に探られることはないわ」


「そんな貴重なもの…」


「いいから、つけなさい」


有無を言わせない口調だった。


俺は素直に腕輪を装着する。すると、体を薄い膜が覆うような感覚があった。


「これで安心ね」


鈴音はフェンスに寄りかかり、遠くを見つめた。


「昨日のこと、誰にも話してない?」


「はい」


「よかった。じゃあ、約束通り説明するわ」


深呼吸をしてから、鈴音は話し始めた。


「まず、あなたの能力について。記憶視メモリーサイトは確かに珍しい能力だけど、それだけじゃない」


「記憶喰らい、ですよね」


「知ってるの?」


「なんとなく…」


Systemのことは、まだ話せない。


「そう…まあいいわ。記憶喰らいは、歴史上一度も確認されていない能力。理論上は存在するって言われてたけど」


「理論上?」


「ええ。記憶を物質として扱える現在の技術でも、他人の記憶を『摂取』して自分のものにするなんて、あり得ないはずだった」


鈴音が振り返る。


「でも、あなたはそれをやってのけた。しかも、禁忌級の記憶体まで喰らって」


「あれは…必死だったので」


「必死で済む話じゃないわよ」


呆れたような、でも感心したような声。


「普通なら、精神が崩壊して廃人になってる。でもあなたは平然としてる。それどころか」


鈴音が近づいてきて、俺の顔を覗き込んだ。


「レベル10…昨日会った時はF級の見習いだったのに、もうD級。異常よ、これは」


「そんなに凄いことなんですか?」


「凄いなんてもんじゃない」


鈴音が指を立てる。


「普通の記憶屋が、F級からD級になるまで、最低でも3年はかかる。才能があっても1年。それをあなたは一晩で」


「…………」


「ねえ、朝倉くん」


「蒼でいいって、昨日」


「じゃあ、蒼」


鈴音の青い瞳が、真剣な光を宿した。


「あなた、本当は何者なの?」


ドキリとした。


まさか、未来から記憶を受け継いだことがバレて——


「冗談よ」


鈴音がクスッと笑った。


「そんな顔しないで。誰にだって、秘密の一つや二つあるでしょ」


「鈴音は?」


「え?」


「鈴音の秘密は、何ですか?」


今度は鈴音が固まった。


「な、何よ急に」


「だって、誰にでもあるって」


「そ、それは…」


顔を赤くして俯く鈴音。


可愛い。


『おやおや、青春してるわね』


頭の中でSystemの声が響いた。


『邪魔しないでよ』


『あら、私の声、聞こえるの?』


『…!』


しまった。思わず返事をしてしまった。


『ふふ、やっぱり只者じゃないわね、あなた』


「どうしたの?」


鈴音が心配そうに覗き込んでくる。


「あ、いえ、なんでも」


「そう?」


まだ疑わしそうだが、鈴音は話を続けた。


「とにかく、これからあなたは狙われる可能性が高い」


「狙われる?」


「ええ。禁忌級を倒した記憶屋なんて、目立ちすぎる。特に」


鈴音の表情が暗くなる。


「政府の連中が黙ってないはず」


「政府…」


「記憶統制局って知ってる?」


首を横に振る。


「記憶の流通を管理してる政府機関よ。表向きは健全な記憶経済を守るためって言ってるけど」


「本当は?」


「人々の記憶を支配しようとしてる」


風が吹いて、鈴音の髪が舞った。


「危険な記憶を持つ者、強力な記憶能力者、そういう人たちを『保護』という名目で連れ去る。そして——」


「そして?」


「二度と、帰ってこない」


ゾクリとした。


「だから」


鈴音が俺の手を取った。


「私が守る。昨日言ったでしょ?」


「でも、どうして俺なんかを」


「なんかって言わない」


鈴音の手に力が込められる。


「あなたは特別よ。きっと、この腐った世界を変えられる」


「大げさですよ」


「大げさじゃない」


真剣な眼差し。


「私には、わかるの。あなたの中にある可能性が。だから——」


その時だった。


ガチャッ


屋上の扉が開いた。


「あら〜、こんなところで逢引?」


現れたのは、黒髪をポニーテールにした女子生徒だった。


切れ長の瞳に、妖艶な笑み。3年生の制服を着ている。


「黒羽先輩…」


鈴音の声が硬くなった。


===================================

【黒羽 彩夜】Lv.35

職業:記憶狩人(B級)

HP:500/500

MP:400/400

状態:???

===================================


「白石さん、新しい彼氏?」


「違います」


「ふーん」


黒羽先輩と呼ばれた女子生徒が、俺を値踏みするように見る。


「あら、あなた…」


目を見開いた。


「面白い『におい』がするわね」


「におい?」


「ええ、とっても美味しそうな記憶の香り」


ゾクッとした。


この人、ただ者じゃない。


「先輩、何の用ですか」


鈴音が俺を庇うように前に出る。


「別に〜。ただ、噂を聞いてね」


「噂?」


「昨夜、禁忌級が現れたって。それを倒したのが、F級の見習いだって」


黒羽先輩の視線が、俺を射抜く。


「まさか、君かな?」


「…………」


「図星みたいね」


クスクスと笑う。


「心配しないで、別に統制局に通報したりしないから。私、政府は嫌いなの」


「なら、なぜ」


「興味があるのよ」


一歩近づいてくる。


「ねえ、君。私と『取引』しない?」


「取引?」


「そう。私があなたに力を貸す代わりに、あなたの能力を少し見せてもらう」


「断ります」


即答した。


「あら、つれないのね」


「蒼は私が守ります」


鈴音も きっぱりと言った。


「へえ、もう名前で呼び合う仲なんだ」


黒羽先輩の笑みが深くなる。


「いいわ、今日は引き下がる。でも覚えておいて」


振り返りながら言った。


「この学園には、あなたの能力を欲しがる人間がたくさんいる。気をつけることね」


そして、扉の向こうに消えていった。


「……ふぅ」


鈴音が息をついた。


「疲れた…」


「あの人は?」


「黒羽彩夜。3年のA級記憶狩人メモリーハンター


「A級!?」


「そう、この学園最強の一人。敵に回したくない相手よ」


「でも、B級って表示が」


「え?」


しまった。


ステータスが見えることを、うっかり口にしてしまった。


「表示って、何のこと?」


「あ、いや、その…」


誤魔化そうとした時。


『もう、隠さなくていいんじゃない?』


Systemの声。


『彼女は信頼できる。それに、一人で抱え込むには、これからの道は険しすぎる』


「…………」


「蒼?」


心配そうな鈴音の顔を見て、俺は決心した。


「実は、俺には『声』が聞こえるんです」


「声?」


Systemシステムと名乗る、何かの」


そして俺は、昨日の覚醒から今まであったことを、すべて話した。


ステータスウィンドウが見えること。

レベルや職業が表示されること。

そして、Systemという存在のこと。


鈴音は黙って聞いていた。


「…信じてもらえないですよね」


「信じる」


即答だった。


「え?」


「だって、そうでもなければ説明がつかない。あなたの異常な成長速度も、禁忌級を倒せたことも」


「でも…」


「それに」


鈴音が微笑んだ。


「あなたが嘘をつく人じゃないって、わかるから」


胸が熱くなった。


「ありがとう」


「お礼なんていいわ。それより」


鈴音が真剣な顔になる。


「そのSystemって、信用できるの?」


『失礼ね。私は蒼くんの味方よ』


「味方だって言ってます」


「そう…」


鈴音は考え込むような顔をした。


「ねえ、蒼」


「はい」


「これから、大変なことになるかもしれない。それでも、その力を使い続ける?」


俺は頷いた。


「妹を、助けたいんです」


「妹?」


そうか、まだ話してなかった。


「妹が、記憶欠損症で入院してるんです。治療には、1000万メモが必要で」


「1000万…」


「だから俺は、強くならなきゃいけない。もっと価値の高い記憶を扱えるように」


「…………」


「それに」


俺は鈴音を見つめた。


「鈴音も、守りたい」


「!」


鈴音の顔が真っ赤になった。


「な、何言ってるの!私の方が強いって言ってるでしょ!」


「今はね」


「むー!」


頬を膨らませる鈴音。


やっぱり可愛い。


「でも」


鈴音が真面目な顔に戻った。


「わかった。一緒に強くなりましょう」


「一緒に?」


「そう。あなたには力がある。私には知識と経験がある。協力すれば、きっと」


手を差し出してくる。


「パートナーになりましょう」


俺は、その手を握った。


「よろしく、鈴音」


「こちらこそ、蒼」


夕日が、俺たちを照らしていた。


これが、俺たちの本当の始まりだった。


『いい感じね〜』


Systemの茶化すような声は、無視することにした。


「あ、そうだ」


鈴音が何かを思い出したように言った。


「明日から、特訓よ」


「特訓?」


「そう。あなたの能力を制御する方法を教える。それに、記憶の知識も」


「お願いします」


「ふふ、覚悟しなさいよ。私、結構厳しいから」


そう言って笑う鈴音は、とても楽しそうだった。


屋上から見える記憶結晶塔が、夕闇に輝いている。


あの塔の頂上で、俺は何を見るのか。


まだ、わからない。


でも、一つ確かなことがある。


俺は、もう一人じゃない。


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【関係性が変化しました】

白石鈴音:知人 → パートナー

信頼度:40 → 70


【新たな人物情報】

黒羽彩夜:要注意人物として登録

===================================

【更新予定】

毎日更新を目指します!

最低でも週5は更新したいと思ってます。

【お願い】

★(評価)や感想をいただけると、作者のMPが回復します!

特に感想は、次話を書くエネルギーになります。

「ここが良かった」「ここはこうして欲しい」など、どんなことでも嬉しいです!


批判的な意見も大歓迎です。

初心者なので、皆様のご意見で成長していきたいと思ってます。

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