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銃で戦うダンジョン探索  作者: トロロ将軍
10/13

初踏破とその先

士別ダンジョンから地上へと戻ってきた俺は、大きく息を吐いた。


「はぁ……終わったぁ」


張り詰めていた緊張が一気に解け、全身から力が抜ける。ボス戦の後だからか、それとも初踏破の達成感からか、自分でもよく分からない感覚だ。

管理棟に入ると、暖房の効いた空気が身体を包み込む。外の冷たい空気との温度差に、思わず肩の力が抜けた。


「とりあえず……清算だな」


俺はバックパックを背負い直すと、そのまま清算カウンターへと向かう。今日はボスも倒しているし、そこそこの金額にはなるはずだ。


カウンターに並びながら、ふと周囲を見渡す。

いつもと同じく探索者たちが列を作り清算を待っている。

その中でも俺はボスの魔石を持っているのだ。

優越感が止まらない。


「はい、次の方どうぞ」


呼ばれてカウンターへ進み、魔石と探索者カードを差し出す。


「探索お疲れさまでした。……これは、ゴブリンライダーの魔石ですね」


職員が少しだけ目を見開く。


「はい。さっき倒してきました」


「……お一人で、ですか?」


「まぁ、一応」


軽く答えると、職員は一瞬言葉を失ったように黙り込んだ。

探索者は基本パーティを組むが、ここはFランクダンジョンだ。そんなにソロで倒すのって珍しいのか?


「……失礼しました。査定いたしますので少々お待ちください」


そう言って奥へと魔石を持っていく職員。その背中を見送りながら、俺は目の前のカウンターにもたれかかる。


……疲れた。


思った以上にボス戦で体力を使っていたらしい。疲労で脚に軽い震えが残っている。

数分後、職員が戻ってくる。


「お待たせいたしました。今回の買取金額ですが――」


一瞬の間。


「合計で、二万八千円になります」


「……え?」


思わず間抜けな声が出た。


「内訳は、ゴブリンライダーの魔石が二万円。その他魔石が八千円となっております」


「に、二万円……」


思っていた以上の金額に、思考が一瞬止まる。

昨日まで五千円で喜んでいた俺は一体何だったんだ?


「……すげぇ」


自然と口から漏れる。

これがボスの報酬か。


「初踏破、おめでとうございます。初心者ダンジョンを踏破されたので、斎藤様は【Dランク】に昇格となります」


そう言って職員は軽く微笑んだ。


「あ、ありがとうございます」


金額以上に、その一言が妙に嬉しかった。


未だ実感のないままお金を受け取り、更衣室で装備を外してボストンバッグに詰め込む。その時、破れたSWATの防弾ベストを見て、ようやく現実に引き戻された。


「はぁ……やっぱり買い替えかぁ」


まぁ、仕方ない。

あの状況で無傷だっただけでも良しとするべきだろう。


「……でも、二万八千円か」


ボスの魔石がなければここまでの金額にはならなかった。

そう考えると――


「ダンジョンって、やっぱ夢あるな」


思わず笑みがこぼれる。

軽い足取りで管理棟を出て、バス停へ向かう。

外は相変わらず寒いが、今の俺にはそれすら心地よく感じた。


「士別ダンジョン、踏破……か」


最初にここに来た時は、ゴブリン一匹倒すだけで精一杯だったのに。

そこから2カ月、気付けば最下層まで到達し、ボスまで倒していた。


「……俺、ちゃんと強くなってるよな」


小さく呟く。

誰に聞かせるでもない、自分への確認だ。

だが、その答えはもう分かっていた。


バスに揺られながら、スマホでダンジョン情報を調べる。

次に行く場所、それはもう決めてある。


「次は……剣淵ダンジョンか」


士別よりも一段階上の難易度のEランク指定ダンジョン。

当然、出現するモンスターも強くなる。


「まぁ、いきなり最深部は無理だろうけど……」


まずは様子見。

それでも――


「楽しみだな」


俺は自然と口元が緩むのを感じた。






自宅に着き、玄関を開ける。


「ただいま」


「おかえり!一、今日はどうだったの!?」


家に入るとすぐに母さんが駆け寄ってくる。


「怪我してない?大丈夫?」


「あー、大丈夫大丈夫。ちょっと装備は壊れたけど」


「えっ!?怪我は!?」


「してないって」


苦笑しながら答えると、母さんはホッとしたように息を吐いた。


「もう……心配させないでよ」


「悪い悪い」


頭を掻きながらそう返す。

そして、ポケットから今日の稼ぎを取り出す。


「ほら」


「え?……えぇっ!?何この金額!?」


母さんが目を丸くする。


「ボス倒した」


「ボス!?あんたもうそんなところまで行ってるの!?」


驚きの声がリビングに響く。


「まぁ、たまたまな」


適当に誤魔化すが、内心は少しだけ誇らしかった。


「今日はさ、この金で飯でも食いに行こうぜ」


「えっ、本当に?」


「あぁ。父さんも呼んでさ」


母さんは一瞬呆然とした後、ふっと笑った。


「……そうね。せっかくだし行きましょうか」


その夜、久しぶりに家族で外食をした。

特別高い店ではないが、それでも十分だった。


「一がボスをねぇ……」


父さんが感慨深そうに呟く。


「気を付けろよ。無茶はするな」


「分かってるって」


そう答えながら、ふと思う。

あの時、もし一歩間違っていたら。

そう考えると、少しだけ背筋が冷える。


「……でもさ」


箸を置き、ゆっくりと口を開く。


「俺、もっと上目指すわ。Cランクまで上がって、専業探索者になる」


その言葉に、少しだけ空気が変わる。

だが――


「……そうか」


俺の言葉に父さんは静かに頷いた。


「なら、やるなら最後までやれ。中途半端が一番ダメだ」


「……あぁ」


父さんの言葉に俺は短く返す。

その一言で、十分だった。





その夜、ベッドに横になりながら天井を見上げる。


士別ダンジョンは終わった。

次は、新しいダンジョン。


「もっと強くならないとな」


俺は机に置いてあったHK416を手に取る。

この武器と共に、どこまで行けるのか。


「次も頼むぜ、相棒」


そう呟き、目を閉じる。

新しいステージは、もうすぐそこまで来ていた。

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