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召喚されたら草だった  作者: 徳島
第一章
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第4話 クラス分け




「(ぎゃはははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」



 豊成が右手で顔を覆い、左手で腹を抱えて笑い声を殺す。


「(草! よりにもよって草!!)」

「(やかましい。芋だってそんなに変わらないだろ!)」


 ひとしきり笑い終えた芋人間は、息を整えて神妙に語った。


「(いいか、穂積。確かに雑草という名の草は無ェ。でもな、それは名前を付ける価値がゼロだからだ。その点、芋は主食として多くの人々を飢えから救い、酒や甘味、医療にハンコと文化面からも支えてきた。歴史的な貢献度が違う)」

「(く、草だっていいところくらいある!)」


 ええと、ほら……なんか気持ちよくなったりとか!!


 僕が反論をひり出そうと必死で悩んでいると、赤ローブが口を開いた。


「ステータスの確認を終えられたようですし、これから皆様には面談を行っていただき、どのようなスキルを活かしどのような役割を目指していくのか、ご相談させていただきたいと思います」


 人がステータスを確認して一喜一憂してる間に、しれっと鉄砲玉ルートを確定させようとしやがって。みんなが浮かれてるところを狙ってやってるなら、とてもじゃないが信頼できないぞ、やっぱこの世界はクソだな!! 僕の八つ当たりは止まる所を知らなかった。

 

 しかし、注意喚起をしようものなら一発でブラックリスト入りだ、何か上手い手は無いものか……。


「あの、すみません」


 僕が動けないでいる中、手を挙げたのは小屋敷君だった。


「ステータスが戦闘向きでなかったり、望まない場合は戦わなくてもいいのでしょうか?」


 うおお、ぶっこんだぞ!  今の発言を聞いて、浮足立ってたみんなもはっとした表情をする。小屋敷君はこの手の知識が豊富でシャイボーイなナイスガイだし、相手に流れを作られるのがまずいと分かっているんだろう。そして、ここで目立ってしまうことのリスクも十分知りながら、クラスメイトのためにそれを引き受け発言した。保身ばかりを考えていた自分が恥ずかしくなってくるね。おお、コヤシキ! 村一番の勇者!!  追放系からの一発逆転を狙ってるとかじゃないよね?


「勿論です、嫌がる方々に危険を強要することはありません」


 わー、やっぱり危ないんだ。


「皆様はステータス画面の意味するところやこの世界についてはまだご存知ありません。方針を決定なさるに当たって、私達がお力添えできるのではと思います」


 赤ローブが手を広げて言う。


「ですが、ステータスというものは基本的に秘すものです。皆様も自分の能力を他人に知られるのは望まれないでしょう。そこで、会談用の別室を用意いたしました。お一人ごとの相談ですから、情報の拡散も防げます」


 それっぽい言葉を並べてるけど、個別に分断して各個撃破しようとしてるとしか思えない。確かに能力をおおっぴらにはしたくないけど、こんな状態で個人面談なんて何を吹き込まれるか分かったものじゃないぞ。


 とてもこんな提案は飲めない、断固拒否の姿勢を見せる時だ。


 行け! 勇者コヤシキ!!


 と無責任な念を送っていたら、新たな勇者が登場した。


「あの、すみません。その面談、2人でもオーケー、ああ……2人で受けてもいいでしょうか」


 野球部の次期エース候補でムードメーカーのナイスガイ、浜君だ。けれど、こういう交渉事は苦手だったはず。


「そうですな、ステータスの内容や今後の方針を相談するとなると、どうしても個人的な話が多くなります。他人を気にした結果、望まぬ面談になってしまっては本末転倒、皆様のためにも面談は個別に行ったほうが良いかと思うのです」


 赤ローブはさも皆様が心配なのですといった顔をした。


「(うーん、スクリーンの中の名優みたいだ)」

「(胡散臭さしか無ェ~)」


 こっちの世界では効果抜群かもしれないけど、欧米的オーバーアクションっぽくて僕らには逆効果に思う。異文化交流って難しい。


「ええと、それについては大丈夫です。一緒に面談をしたいのは、僕の恋人です。僕も彼女もお互いの情報を隠す必要はありません。彼女が困ったときには僕が力になりたいし、彼女の面談を僕は助けたい」


 浜君と付き合ってる野中さんは隣のクラスのはずだが、ご両人とも召喚されちゃったのか。不運というか不幸中の幸いというか……。しかし小屋敷君といい浜君といい、ここ一番で他人のために体を張れるなんて眩し過ぎる。


「(……なるほど、あの2人みたいなのが本当の勇者様なんだろうな。腹の中で上から講釈たれてるだけのやつは人間失格ってことだなァ)」

「(全くだ。2人と違って人間力が足りない奴はそれにふさわしい非人間的職業になるんだろうな)」


 根菜とか。


 下を向いてモジモジしている野中さんと、真一文字に口を結びまっすぐに赤ローブを見据える浜君。

 椅子に座ってチクチク言葉で内ゲバを始めるかわいそうな人外クラス組。


「うむ、よく言った」


 壇上の国王様も、2人の愛に大変感銘のご様子だ。


「大司教よ、彼の言い分ももっともではないのか。本人達が納得しているなら問題あるまい」

「は、仰るとおりに」


 赤ローブは国王に一礼すると、控えていたローブに指示を飛ばした。


「では皆様、ご準備のできた方から、あちらの部屋へお越し下さい」


 結局、面談は既成事実化されてしまった。




◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇




 大学が早々に3人で面談へ突撃し、なし崩し的に3人までOKになったりもしたけど、帰ってきた生徒の記憶が混濁したり目が死んでたりすることもなく、面談は順調に進んでいた。


「こちらはステータスを確認する道具となっております。この水晶に手を当て少々お待ち下さい」


 僕と豊成は7番手グループとして面談室へ入った。重厚な机を挟んで面接官が3人並び、その背後ではローブの集団が資料を積み上げ、最奥で騎士を従えた大司教と王子様がにらみを効かせていた。

 机に置かれた電子レンジ大の謎オブジェ、なるほど、これが第一陣からの報告にあった鑑定装置か。ステータスを虚偽申請すべきかどうか豊成と話し合ってたけど、確かにこんなものがあるなら無駄な議論だったな。


 言われるまま上部の水晶にそっと手を置くと、装置が淡い光を放ちだした。銭湯のジェットバスを弱くしたような緩い圧力が、手のひらから体の中に侵入してくるのを感じてムズムズする。しばらくすると装置が一瞬強い光を放ち、圧力も消えた。水晶には、なにやら文字が浮かび上がっている。これが僕のステータスだろうか? 装置の担当者が読み上げる。


「アカイシ・ホズミ様の職業は……く、草!?」

「草!?」

「草だと!?」


 皆さん急にザワザワし始めた。……誠に遺憾ながら、やはりアレな職業であったようだ。


 呆気にとられていた書紀さんが、すぐ真剣な顔に戻り水晶に映し出された僕のステータスを写しだした。面談の中心人物だろう、長いあごひげを蓄えた机中央のおじいちゃんは隣のローブとヒソヒソ言葉を交わし、後方の皆さんは資料をひっくり返して何やら調べ物を始め、王子様にはお付きの人から報告を受けている。おお、これがかの有名な「俺、何かやっちゃいました?」というやつか! 普通に命の危険を感じて笑えない。あの分厚い辞典、刑法とかじゃないといいなあ。


 まだ部屋のざわつきは収まってないけど、書記さんの作業は終わったようだし、特に何の注文もつかなかったのでそそくさと豊成と交代し大人しくしておく。やれやれ、こんなに目立つもりはなかったんだけどな。


「次、フカヤ・トヨナリ様……い、芋!?」

「芋!?」

「芋!!??」



 ほんとすみません。




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