第九話 光拡剣
九話目です。難産でした。
俺は防壁を降りた後、手に持った金色に耀く剣を見つめた。
光拡剣。俺がエリスに借りた未解物質だ。
俺はすぐさま周りの兵士に撤退命令を出し、こちら側の兵士を退かせた。じゃないと危ないからだ。
そして、光拡剣を思いっきり横に振った。
振り抜く中、スッと体から力が抜けていく感覚が起こり、剣先から一条の光の帯が出て行く。
長さ200メートルくらいか?その光の帯によって、そこら一帯の騎士が消し去られた。
未解物質、光拡剣。自身の技量や実力をもとに、体力を消費し光を放つ剣。振り方によって範囲がや形状が変わる。俺の体力から考えて、あと撃てるのは二、三回くらいだろう。すでにもうふらついてきている。エリスは数十回は撃てるそうだ。
だが、今はそんなことはどうでもいい。俺は前方、消しきれず、今だ健在な敵の本陣を睨んだ。
エリス曰く、騎士団を退ける為には一定以上の騎士を倒し、返り討ちにするか、大将格の奴を倒せば良いらしい。要は部隊として成り立たなくさせればいい訳だ。
俺は駆け出した。何人かの騎士が邪魔してくるが、光拡剣で斬り捨てて行く。光拡剣はただの剣じゃない。未解物質だ。そんじょそこらの剣とは切れ味が違う。
斬り捨て、進む。敵の騎士団からはたまに魔法が飛んでくるが、光拡剣で弾いて無視する。強度は気にしなくていい。未解物質は壊れないから。
進み続け、とうとう俺は敵の本陣までたどり着いた。
敵将であろう一番豪華な装備をした男がこちらに近付いてきた。
「逆徒よ。私はアルゼン・フート・ルシタル。プランゼーレ王国騎士団准将だ。おおよそ返答は分かってはいるが、問おう。降伏せよ」
「はっ!誰がするか。俺はエーギル。仲間達との平和の為立ち上がった平民だ」
「そうか、、、ところで」
いつの間にか敵将、アルゼンの姿がかききえていた。
「敵の前で油断とは呑気なものだ」
横合いから思いっきりに蹴り飛ばされた。
「かはっ!」
倒れる。だが、うずくまる暇もなく魔法での追撃がくる。
俺は転がるようにしてそれをよけた。
「追撃用意」
「ちっ」
アルゼンの声で飛び起き、そのまま駆け出す。止まったら撃ち殺される。
そして光拡剣を振り払った。光の帯によって辺り一帯のが更地になる。
「恐ろしいな。うちの直属部隊が全滅だ。未解物質か?過失技巧か?まあ、どちらにせよ厄介であることは変わらず、違いも特に分からんがな」
後ろに気配を感じ、とっさにかがむ。直後に頭上を剣が掠めた。
俺は全身に魔力を通し、魔導術を発動させ、振り向きざまに光拡剣で凪払った。光で一帯が埋めつくされるが、アルゼンの姿は見えなかった。
「速いな。例の新魔法か。それに顔色が悪い。その剣、ずいぶんと消耗が激しいようだな」
反射的に前を見る。アルゼンが立っていた。どういう事だ?
俺の身体能力や動体視力は魔導術によって強化されている。にもかかわらず、俺はアルゼンの動きを捉えられなかった。
「、、、空間移動魔法?」
「ほう?よく分かったな。荒原の奴にでも見せて貰ったことがあるのか?まあ、わかったところでどうという話だが」
俺が走り出すと同時に俺に向かってアルゼンが駆けてくる。俺とアルゼンとの打ち合いが始まる。剣によって斬りかかるが、光拡剣の切れ味を警戒されているのだろう。その殆どが受け流される。
魔導術によって身体能力は強化されていても、俺の剣技には技量が伴っていない。いくら斬りかかろうとも柳に風だった。
突然、剣が空を斬った。つまり、
「くっ」
俺は後ろからの叩きつけるような剣戟を、光拡剣によって防いだ。
そして、防いだ剣を切り落とし、そのまま光の帯を放った。
「はぁ!?」
アルゼンは驚いた声を上げたまま、光に飲み込まれていった。
光拡剣の切れ味、それに加えた光での攻撃。いきなりの作戦、一か八かだったが、無事成功した。
良かった。ほんとうに、よ、かっ、、、
ドサッ
俺はそのまま気絶し、地面に倒れこんだ。
光拡剣はアーティファクトの中でも弱い方です。なんでそんな物をエリスターナが使っていたかと言うと、エリスが師匠と始めてエンドラインに行った時に入手したアーティファクトが光拡剣だったからです。
もう戦闘シーンは書きたくない。