第八話
八話目。後二、三話で戦闘は終わるかなと。
僕の名前はジョナサン。騎士団と槍持って戦っている。
戦況は、言ってしまえば厳しい。騎士団は堅実で連携の取れた戦いをしている。僕達は、個々であれば騎士にも勝ててる。つまりエリス様の修行は間違ってなかったってことだ。
でも、数で負けてる。一人、二人では僕達のが強くても、三、四人で連携されたら確実に負ける。
さらにはあいつらは途中から弓や魔法での遠距離攻撃に切り替えてきた。
魔導術の欠点は遠距離攻撃だ。近距離特化である換わりに低魔力で莫大な力を出してるんだ。
それをあいつらは見破った。何人か気にせず突撃してったが、そんなことしても数人殺ったところで包囲されて終わりだ。
つまり、かなり詰んでるってわけだな。
っと。そんなことを考えていたらいきなり騎士の動きが鈍り出した。誰かが魔法かなんかで援護してくれたんだろう。ありがたい。
、、、って、あれアルエットじゃないか!?あいつ農業担当でおとなしくしてると思ったのに、なんでこんなところにいるんだ!
そんなことを考えてる間に、アルエットに向けて魔法が発射された。僕はとっさに振り返って走り出した。後ろから騎士が追いかけてくるが知ったことじゃない。
僕はアルエットに向かって急いだ。アルエットは動揺してわたわたしている。ちがうだろ。さっさと逃げろよ。壁から降りれば良いんだよ。なんでしないんだよ。
あああああ、もう!
僕は脚に全力で魔力を注いだ。アルエットのもとに急ぐ為に。
「ま、に、あ、えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!」
全力で走った。でも、
(くっそ!間に合わない!!!)
そもそも足で魔法に追い付こうとしたのが間違いだったのか?
僕にはアルエットは助けられないのか?
んなもんやってみないとわかんないだろ!!
どうする?どうすれば良い?何をすればアルエットを助けられる?
考えろ、思考を止めるな。考察を投げ出すな。
、、、投げる?
そっか。投げれば良いんだよこの槍を。
僕は全力で槍を振りかぶり、魔法の軌道の先へとぶん投げた。
命中。魔法は爆発した。だが、足は止めない。たとえどんなに足が悲鳴を上げていたとしても。だって、止めたら次の魔法でアルエットが死ぬから。
全力で駆け抜け、町の防壁をかけ登り、アルエットを内側へと押し倒した。
「アルエット!なんで隠れなかったんだ!逃げろよ!お前が一番大切なのは自分の命だろ!」
「で、でも。だって、だって!」
アルエットは泣き声で言い訳しようとする。だが、僕にはそんなことを聞く暇はなかった。
戦場から全力で戻ってきたであろううちの騎士団長様の襟首を掴む。
「お前もだよ!セルバンティ!なんでアルエットを連れ出してんだよ!アルエットは農業担当だろ!お前ら騎士団に守られる側の人間だろ!」
僕は外面もへったくれもなく叫んだ。涙声だろうがなんだろうがどうでも良かった。
「、、、済まない。我々の力不足が招いたことだ。」
セルバンティは、拳を力強く握りしめていた。自分の不甲斐なさでも嘆いてんのか?そんなことはどうでもいい。わかってんならちゃんとしろ。そう伝えようとした言葉は他の奴に遮られた。
「アルエット、大丈夫だったか!?」
エーギルだった。
「、、、エーギル」
僕はセルバンティを突き飛ばし、エーギルに掴みかかった。
「心配すんなら!なんで、なんでこんな戦いになるようなやり方をしたんだよ!お前の責任だろ!だったら責任とって、心配してる暇があったら、さっさと町の外にいる騎士団を倒してくれよ!なぁ!」
この時の俺は過去最高に情けなかったと思う。でも、このことが奴に気に入られるなんて、、、
「、、、そうだよな。エリスに魔導術の使い方を教わって、そそのかされたっていったって。領主襲ったのは俺だよな。、、、なら、きっちりけじめつけなきゃいけないのは俺だよな」
最初は落ち込んだようだったエーギルの声は段々と力強くなり、声量も上がっていった。
パンパンッ
エーギルは頬を力強く叩くと、スッキリしたような表情で俺に言った。
「ジョナサン、セルバンティ。この後俺は倒れると思う。だから、事後処理は頼んだ」
エーギルは、光耀く一本の剣をどこからともなく引き抜き、防壁の外へと飛び出して行った。
主人公がここまで出てこない作品が、今だかつてあっただろうか?いや、ない!
え?ある?あ、はい。その通りです。すいません調子に乗りました。