第十話 こんにちは、餡蜜です。
ひさびさの更新。これで一章完結です。
「あー痛てー」
うっそうと生い茂る森の中、俺は寝っ転がって無くなった右腕の止血をしていた。え?あの坊主の剣に斬られて死んだんじゃなかったのかって?おいおい死体の確認はちゃんとしろって話だ。俺が若い頃なんざちょっと手ぇ抜いたくらいで上司にぶん殴られたってもんだぜ?
右腕を犠牲に空間魔法で逃げる。俺にとっちゃ朝飯前よ。まあ、ぶっちゃけ空間魔法で逃げられるから指揮官に選ばれたんだがな。後は厄介払いだ。王都での政権争いには嫌気が指すってもんさ。
・・・はあ、いい加減現実見ますかねぇ。
「居るんだろう?密偵さん。出てこいよ」
俺は体を起こし、見渡す限り木々が生い茂った森の中へと問いかける。これ、いなかったら相当な羞恥だな。
すると、クスクス、クスクスといった笑い声が森中に響き渡った。
「あははっ。勘のいいガキは嫌いだよークスクス」
全身真っ黒の装束、あれだ、東方のニンジャってやつ?それに似たもんをまとい、両の目だけが黄色に輝く少女?(そもそもこいつ人間か?)が現れた。
「あーはいはい。あんたみたいなのからしたら俺はガキだろうよ」
「クスクス。やだなぁー誰がヨボヨボのおばあちゃんだよ。私はまだまだ現役だよ?」
「OK。人の話は聞かない感じだな?」
理解した。んなら話しても無駄だ。無視だ、無視。
「クスクス。冷たいねー。寂しいねー。くふふふふ。あぁとりあえず君たちで言う『荒原』ちゃん?彼女はいたよー。元気にしてたよー」
「ああそうかい。ありがとさん。んじゃ、行っていいよ」
俺はシッシッと手を振る。こんなろくでもない雰囲気をプンプンさせてる奴には近寄らない方がいい。相場はそう決まってるってもんだ。
「クスクス。まーまーまー待ちなよー。そう悪い話はしないからさー。私はね?君たちの戦い、けっこー面白くって楽しかったんだよ。それでさぁ。もっと楽しくしようと思ったんだよねー」
「その楽しいってのはお前にとってだろ?俺には利点がないんだよ。散った散った」
「プププ。話は最後まで聞いてから判断するものだよー?坊や、君にね?いくつかの未解物質をあげよう。好きに使うがいいさ。独占して楽しむもよし。撒き散らして混乱に落とすもよし。クスクス楽しそうだねー」
あ?未解物質だ?国の剣聖様が過失技巧なら持ってるが、確か未解物質ってその上だろ?
「断る。んな怪しいもん金払ってでも欲しくねぇわ。どうせあれだろ?後で対価に腕貰うーだとか、命貰うーだとか言ってくるんだろ?」
「クスクス見た目で人を判断しちゃいけないよ?私は餡蜜。探索家の最上位に位置するモノ。約束は守るよー。だって、じゃないと楽しめないもん。てことではい、これー。じゃねー」
あんみつ、そう名乗った少女は、ワケわからん探索家?とかいう名乗りを上げたあと、8つの得体の知れない物を渡してくれやがった。ああ、持った瞬間使い方がわかるとか、絶対やベー奴だわな。
「、、、はあ、とりあえず、部下共と合流すっか」
今頃あいつらは集合場所で待機しているはずだ。さっさと合流して、お国に報告済ませて、んでベッドでぐっすり寝る。うし。完璧だな。
餡蜜さん。快楽主義者です。