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第五十話 婚前異議

第五十話 婚前異議


 三週間が経過した。

 僕はファイとの特訓でより力をつける……ことはあまりできなかった。

 いわく、基礎的な部分はもう十分に身になっているそうで、短い期間で伸ばせる場所がないとのことだった。


 そこで僕がファイから教わったのは上位の敵と戦う時の心構えのみ。

 あとの時間はそれを実際に行えるようにするための訓練だった。

 結果は上々、過信はできないがそれでもディアンと戦うための一手にはなるはずだ。


 そうして準備を終えた僕は今日行われるディアンとリスタルの結婚式に向けて最後の確認をしていた。


「いよいよだナ」


 ガネットが幼女ゴーレム化した状態で僕に話かけてくる。

 僕が乗り込んだ後は戦いか、もしくはリスタルの誘拐になるだろう。

 ガネットにはどちらの展開にすぐに動けるようにゴーレム化し準備をしてもらっていた。


「うん、やれるだけはやってみるよ」


 左右の剣を腰に下げ一度握りを確認し、僕はガネットと一緒に宿屋の部屋を出る。

 宿屋で退室の手続きをし、外に出るとそこにはカーネリアとタイズで一緒だった付き人の男が僕を待っていた。


「あんたの合成魔術がすごいのは認めるけど、もうちょっと絵面考えたほうがいいんじゃない?」


 カーネリアは僕とガネットを交互に見てなぜか深いため息をついた。

 彼女にはガネットのことは詳しく話していないので、ゴーレム状態になったガネットを合成術で作ったスキルの効果だと思っているのだろう。


 幼女と一緒に宿屋から出てくる。

 今後の対応のためとは言え、確かに悪目立ちしてしまうかもしれない。


「次からはお互いに退室する時間をずらすことにするよ」

「そーいう話じゃない」

「まあまあ、お嬢」


 いら立つカーネリアに付き人の男がなだめに入る。

 僕は一体、何を間違えたというのか。


「まあいいか。ほらさっさと行きなさいな。私は私で見物させてもらうから」

「うん、それじゃ行ってくるよ。あと、ラズワードの件はありがとう」

「……どういたしまして。正直、あれには二度と会いたくないわ」


 訓練の合間、カーネリアからの情報提供もあり、僕はできる範囲でラズワードの捜索を行っていた。

 しかしこちらの結果はあまり良くなく、何かしらの情報を手に入れることはできないでいた。


 カーネリアいわく、ディアンに会いに来たそうなのだが、いったい何が狙いなのだろうか。

 正直、ラズワードの行動に対しては、完全に情報が足りない状態である。

 だが、タイズの時のように完全に頭に入っていない状態で襲撃されるより、そういう可能性があるかもしれないと考えを回せるのはありがたい話だった。


「おそらく彼女がディアンを探していたのなら、僕とディアンが戦い始めるときに何かしら動きがあるかもしれない。

 カーネリアも彼女が出てきたらすぐ逃げて」


 思いつく限りで一番高い可能性の高い話をカーネリアに共有しておく。

 カーネリアも心得たとばかりにうなずく。


「分かってるわよ。危なくなったらとっとと逃げるわ」

「うん。それじゃ行ってくるよ」


 僕はカーネリアと別れて北の教会へ向かうことにした。

  

 僕のわがままを通すために――。


 ニキスの街の北。僕は教会に到着した。


 王国に根付いているモルガナ教。

 王国建国以前にをこの地の魔物を撃退し、平穏をもたらしたとされる勇者モルガナの名を関する宗教。

 モルガナは魔物の王と対峙しその命と引き換えに王を打倒しただとか、村を救うために千の魔物を蹴散らしたとか、どこまでが真実かわからない伝説を残している勇者だ。


 現在は国教として王国から推奨されており、主に学術や武術で心身を鍛えよと教えを説いている。

 王国の教育の一角を担っており、入信者には文字の読み書きや武術の基本を教え、王国に深く根付いている。

 

 結婚に関してもモルガナの前で結婚を誓うことで生まれてくる子どもが強く丈夫な子が生まれてくるといわれている。


 その教会の前に僕は立っていた。

 周囲はディアンとリスタルの結婚を祝福する人たちであふれている。

 冒険者の僕の恰好よりも上等な衣装を着ているところから、それなりの権力者たちが多く集まっているのかもしれない。


 じろじろと僕の姿を品定めするような視線が突き刺さる。

 だがそんなことは気にしていられないと僕はそのまま教会の扉に近づいていく。

 会場から聞こえる声からは式は少し早く進んでいるようで、制約の言葉を交わす場面まで進んでいた。


 僕は扉に手をかけた。


「この結婚に異議のあるものは申し出よ!」


 神父の大きな声が響いてくる。

 もちろん、あるに決まっている――――


「その結婚に異議を申し上げるっ!!」


 僕は扉をあけ精一杯の声で叫んだ。


 その扉の先にはウェディングドレスを着たリスタルと、悪辣な笑みを浮かべるディアンが僕を見ていた。


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