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第四十四話 決別というには風のように

第四十四話 決別というには風のように


「ラルド、悪いけどスポンサー契約を打ち切ることにしたから――あ、これまで合成してきた剣は選別であげるわ」


 宿屋で借りた部屋に備え付けられていた小さなテーブル。

 そこで僕と向かいあったカーネリアは単刀直入にスポンサー契約の打ち切りと述べてきた。


「……え?」

「もしかして違った? あんたのことだから犯罪者になってでもリスタルのこと助けると思ったのだけど」

「いや、……うん、そうするつもりだよ」

「……そっか」


 呆れたというか、なんか悟ったようなあいまいな表情を浮かべるカーネリアに、僕は何と言っていいのか言葉を探した。


 少しの間、沈黙が続く。

 カーネリアとは長い付き合いというわけではないが、それでもタイズの時に僕の背中を押してくれた恩人だと僕は思っている。


 そう思うと、少し心残りを感じるが、決して「寂しくなるな」とは言えない。

 もし言ってしまえば彼女が切り出してくれた気遣いを無下にしてしまう。


 ややあって、目を伏せ、大きなため息を吐いたカーネリアは大げさに肩をすくめた。


「ま、さすがに武器商人とはいえ、露骨に犯罪に肩入れするわけにもいかないからね」

「……ありがとう。本当は僕からいうべきことなのに」


 本来ならパーティ代表の僕から説明し、スポンサー契約の打ち切りをしないといけない状況なのだ。

 それを言わせてしまったと申し訳なさが先立つ。


 そういうこっちの気持ちを知ってから知らないか、僕の対応に、なぜかムスッとカーネリアは不機嫌な表情を浮かべた。


「あんた馬鹿ね、不当に契約切られたら違約金だとか、ごねていかないと損よ」

「ははは、そうかも。でも完全にカーネリアとの縁を切りたいわけじゃないから」

「このお人好し――全く」


 カーネリアはそっぽを向いた。

 しかし視線だけこちらをちらりと見て、少し言いにくそうに言葉を続けた。


「それで、その、スポンサー契約を解除して対等な立場になったから言わせてもらうけど――あなた、私と商人やらない?」


 突然の誘い。でも確かに魅力的な提案ではある。

 この合成術を使えば伝説の剣が量産も可能だろうし、商売をするうえでこの上ない武器になる。

 カーネリアと共に移動商人として各地を回り、情報を集め、時折遺跡を探検したりすることもできるかもしれない。


 だけどそれはリスタルを見捨てるという未来。

 ガネットとの約束を破る未来。

 何より、僕が自分の目標を折った未来だ。


 決心が揺れることはなかった。


「ごめんそれは無理、かな」

「……そっか、そりゃそうよね。それじゃ、あたしは一足お先に降りさせてもらうわ」


 そういってカーネリアは席を立った。

 ただ、すぐさま部屋を出ていくものかと思った矢先、彼女は立ちどまり、振り返らずに僕に言った。

 

「最後に、一つ。この先、あなたには何か大きなものをつかみ取る機会が訪れると思うわ。

 そうなったら絶対に、死ぬ気で、つかみ取りなさい。でないと全部失ってしまうわよ」


 それは預言めいていて、どこか確信を得ているようにも聞こえる言葉だった。

 どうしてこの言葉を僕に送ってくれたのかはわからない。

 でもなんとなく僕を心配してくれているというのは理解できた。


「……ま、せいぜい、がんばりなさいな!」


 振り返ったカーネリアはにかりと笑いカーネリア部屋を出ていった。


 それはまるで風のように。

 僕はただ「ありがとう」と呟くことしか出来なかった。



――――――――。


 部屋から出たカーネリアは自分の顔が少し赤くなっているのを自覚していた。


(ああ、もう……! やってしまった)


 それはスポンサーを打ち切ることに対してではない。

 商人としてはこの選択は最善だったとカーネリアは理解していた。

 ただ一つ、会話の中でうっかり止められなかったあの言葉を彼女は恥じていた。


(どうして私、ラルドを商人に誘ったのかしら――――断るってわかってたのに)


 短い付き合いながらもラルドの性格は何となく理解していた。

 自身の目的のため進み続ける性格、いや、進み続けないといけないという何か自身を脅迫しているような思考の持ち主。

 彼が歩みを止めるわけがない。

 カーネリアはそのことを重々に承知していたはずであった。


 だがそれ故に彼は危うい存在だった。


 彼女は別れ間際に自身の能力を使い、ラルドにまとわりつく炎を確認していた。

 それは黄色く大きい炎、経験上、この先の出来事に成功すれば大きな富を得るが、失敗すれば様々なものが失われる兆候。


 身を削り、それでもなお歩みを止めないラルドを見て、おそらく彼が破綻する未来が見えてきたのだ。

 だから―――

 

(ああ、そっか……心配したんだ、私。―――バカみたい)


 


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