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第四十三話 覚悟の朝

第四十三話 覚悟の朝


 ファイの話を聞いた数時間後、僕はぼんやりと町を歩いていた。

 朝日が照らす大通りから僕が少し見上げるとあの巨人を思い出させるような巨大な壁がそびえたっている。

 あの壁の先が開拓地、そして、その先が人類未踏の土地、つまりは目的であるダモンドに通じている。本来ならわくわくが止まらないはずなのだが、目下の問題が重すぎて僕の気分はあまり良くなかった。


『ディアンって、あのディアンですか!?』

『はい、金緑石の集いの元リーダーのディアンです』


 先ほどのファイとの会話を思い出す。

 ディアン……僕が名を奪った『金緑石の集い』の元リーダーだ。

 ジェードとの決闘後僕の剣をねだられて以来、あの男とは会っていない。

 その傲慢な態度の姿を思い出し、僕はため息をつく。


 まさか、こんなところで再び絡んでくるとは思わなかった。


 リスタルはファイが用意している家に匿われている。

 ただそれはリスタルの存在を隠匿するわけではなく、あくまで時間を稼ぐ意味合いでの措置らしい。


 彼女は知名度もかなりあるし、またタイズで大立ち回りをした僕ら『金緑石の集い』がどのように行動しているのか案外注目されてしまっている。


 この街に来るまでに行商の人とも何度かすれ違い、また馬車などに追い抜かれていることも加味すると、ファイの言った通り、領主の耳に僕たちがこの町を目指していると耳に入るのも時間の問題だろう。


(まあ、それ以上に―――僕に対する人質だろうな)


 強かな老人はあの一合の剣でどこまで僕を見切ったのだろうか。

 何しろあのリスタルの指南役だ、並大抵の技量ではないのは確かだ。


 僕としてはリスタルを見捨てることはできない。

 だからとして天秤にかけられたものが僕に二の足を踏ませていた。


『それで攫ってほしい、とは、どういうことなんですか?』

『言葉の通りです。結婚式に異議を立て、そのままディアンからリスタル様を奪い逃げてもらいたい』

『ちょっと待ちなさいよ。さっきから自分の都合ばっかり―――それってあんたラルドに犯罪者になれっていうの!』

『そうでございます。もちろん国際手配などは致しません。ただ、この街を利用することはしばらく難しくはなりますな』


 ファイのいう通りにことを運べば、僕は犯罪者になり、ダモンドへの拠点であるこの街に戻ることができなくなる。それは人類未踏の地を進むにあたってかなりの痛手だ。


 僕が取れる手は三つ。

 一つ目はファイと直接戦いリスタルを奪取する。

 正直これは勝算が全く見つからない上に、たとえ勝てたところで僕はこの街でお尋ね者として扱われるだろう。


 二つ目は、リスタルを置いて先に行く。

 一応、選択肢として一応上げてみたが、それはない。


 三つ目は、ファイのいう通りに結婚式にリスタルを誘拐する。

 おそらくこれが一番なのだろう。ただ、それでも僕はこの街でお尋ね者となり、街に戻ることができないまま人類未踏の地へと足を踏み入れなければならない。


 僕は選び、進まないといけない。


(ここまで来たんだ。ダモンドのたどり着くために。誰も見たことの無い景色を見るために)

 

 タイズの時、僕はリスタルを助けた。

 それはどうしてという自問に僕は答えを返す。


 僕にとってリスタルは大切な人だからだ。

 鍛えてくれた師であり、ともに並び進む仲間であり、そして――――。


「我がままであることは自覚しているよ」


 誰に聞かせるつもりもなく、僕は自分の揺るがない部分を見定めるためにそう言葉を吐き出した。


「この先の景色をリスタルと一緒に見てみたいんだ」


 そのためにはこの壁だって越えなければいけない。


(そうなると、まずは宿に戻ってカーネリアと話さないとな。あとリスタルとも――)


 スポンサーとしてなぜか僕たちについてきている彼女だったが、さすがにこれから犯罪者扱いされるパーティのスポンサーをしてもらうわけにもいかない。

 なんといえばいいのかと、言葉を考えながら僕は夕食を調達し、宿屋に向かうことにした。


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