第二十九話 スポンサー契約と守秘契約
第二十九話 スポンサー契約と守秘契約
僕とリスタル、カーネリアと連れの男はギルドを出て、彼女が使う予定だった宿に場所を変えた。
この宿には食堂があり、僕たちは角のテーブルを利用し、話の続きを行うことにした。
先手をきったのはカーネリアだった。
「スポンサー契約しましょう!」
「スポンサー?」
聴き慣れない単語に僕は疑問符を浮かべる。
その様子を見たカーネリアは捲し立てるように話し始めた。
「私が貴方たちを援助するわ。その代わりに貴方たちは私の剣を使って、『おっ、その剣どこで買ったんだ?』『この剣はカーネリアさんのとこの商品だよ』って、宣伝して欲しいのよ」
「なるほど」
彼女の提案は、僕らを広告塔にして、剣のスペックをアピールしてほしい。その代わりに、その剣を格安で提供するというものだった。
剣はどうしても消耗してしまうので、安く手に入れられるならそれに越したことはない。
それがカーネリアが用意した軽く頑丈な剣ならなおのことだ。
だけど、僕が剣を欲しい理由はスキルを合成するためなので、僕は首を縦に振ることが出来なかった。
「ごめん、その話は受けることができない」
「どうして! だって貴方、スキルを使わなくてもグラスクロウを倒せるできるぐらいの腕なんでしょう! それに竜級の剣持ちより強いって聞いたわ」
わんわんと、カーネリアはあることないこと捲し立ててくる。
これは断る理由をはっきり伝えなければこの場は納まりそうにもない。
「秘密にしてくれるなら理由は話すよ」
「信頼は商人の誇りよ。絶対に話さないわ」
商人としての、人として真っ直ぐな瞳でカーネリアは言い切った。
見ると連れの男もコクリとうなずき、彼女と同意見のようだ。
「わかった。これを詳しく見てほしい」
僕は彼女たちを信じることにし、グラスクロウを倒した剣をテーブルに置く。
カーネリアは訝しげに剣を手に取り、鑑定を始めた。
「何ってさっきの剣じゃーーはぁ!?」
「見たことは口に出さないで、喋るなら小声で」
パクパクと何か叫びそうなカーネリアをなだめる。
一度深呼吸をした彼女は、僕を睨みつけてきた。
「……どうして、ただの鉄の剣にスキルがついているのよ」
「カーネリアを騙すつもりはなかったんだ。だけど、見てもらった通りだ。僕が剣を探している理由は、君の用意した剣を、その剣と同じようにするためだよ。それじゃあスポンサーなってもらう意味がない」
「確かに……ううん」
彼女は今作られている剣も、伝説の剣と遜色はないんだと言わしめるため、僕らとスポンサー契約を結ぼうとした。
だが僕がその剣にスキルを付与してしまえば彼女の目的は果たされなくなってしまう。
「あなた名前は」
「ラルドだけど」
「ラルド、やっぱり私あなたとスポンサー契約がしたいわ」
「はい?」
「だって、あなたにはトラブルと金の匂いがするわ。それに、黙っていれば有利になる契約を、あなたは対等ではないと蹴った。つまりあなたは利益よりも信頼を優先する人。手を組むには十分な理由よ」
「え、えぇー……」
断ったつもりが逆にガッチリ掴まれてしまった。
僕は助けを求めるようにリスタルを見た。
「分かってるじゃない」
何故か、リスタルは自慢げな表情を浮かべ満足気であった。
これはおそらく助けてはくれないだろう。
こうなれば僕もカーネリアをしっかり利用しようと鞄に刺していたガネットを取り出した。
剣鍛治と縁の深い彼女なら、もしかしたらガネットの修理に関して何か情報を持っているかもしれない。
「ところでカーネリア、この剣を修復出来そうな人に心当たりないかな?」
「この伝説の剣の? ちょっと分からないわね」
だが、カーネリアは首を横に振った。
自称千年物の剣だ。
そう簡単には情報は得られないだろう。
「困ったな」
分かってはいたがダモンドで情報を見つけない限り、ガネットの修理は難航しそうだ。
だが、そのダモンドに行くにはまだ準備が足りない。
そうなると後は同じ時代の遺跡を虱潰しに当たるしかないだろうと、僕は考えを巡らせた。
「思ったんだけど、伝説の剣のことなら、管理協会に行ってみればいいんじゃない? ちょうどタイズには本部もあるわけだし」
「え……」
あっけらかんとカーネリアは言った。
僕は遺跡のことばかりですっかりそのことを失念していた自分を少し恥じた。
誠に申し訳ないのですが、仕事がやばいので、しばらく更新が乱れます。
なるべく毎日更新は頑張るのでよろしくお願いします。




