第二十八話 カーネリアの剣とひと悶着
第二十八話 カーネリアの剣
「さあさあ、見ていって! これが私の商品よ!」
カーネリアが笑顔でテーブルに剣を並べていく。
短剣に片手剣、さすがに両手剣までは出てこなかったが、計5本、大小さまざまな剣が僕の目の前に並んだ。
どれも見事な白い刀身で、僕が今使っている剣とは全くの別物に見えた。
「私の売っている剣は、まず軽さが特徴なの、ちょっと持ってみて」
カーネリアに促されるまま僕とリスタルは一本ずつの片手剣を手にしてみた。
確かに軽い。
今使っている剣の三分のニ程度重さだろうか。
「これは、すごい」
「重くない」
僕とリスタルはほとんど同じに感想を口にした。
カーネリアはここぞばかりに身を乗り出してくる。
「そうでしょ! それでいて、従来の金属と同じ程度の頑丈さがあるのよ」
なるほど、確かにこれはいい剣だ。
実際に試してみないと頑丈さについては検証することはできないが、この軽さは魅力だ。
【怪力】のスキルがあれば二刀流でも難なく剣は振り回せるが、現状の僕では左手はあくまで補助的な動きしかできない。
だけどこの剣ならば、おそらく左手でも難なく剣を振るうことができるだろう。
「確かに……うーん」
だが懸念点も一つある。
それはこの剣の重さだ。
剣での攻撃の際、重い剣ほど威力は上がる。
特に振り下ろして攻撃するときはその影響が大きい。
一概に軽ければ良いわけではない。
その重いという利を捨てるべきか僕は少し悩んだ。
「馬鹿じゃねぇか! そんな剣より、冒険者なら伝説の剣だろうが!」
僕たちのやり取りを見ていたのだろうか、そばのテーブルに座っていた冒険者の男からヤジが飛んでくる。
身なりを見るにそれなりに歴のある冒険者だ。おそらくテーブルにかけてある重そうな剣はスキルを持っている伝説の剣だろう。
スキルが使える剣は確かに強力だ。
だけど、それ一辺倒で考えてしまうのははあまりに横暴ではないだろうか。
そう反論したら嫌な因縁をつけられてしまいそうで、僕は笑ってごまかそうとした。
だが黙っていられない人もいた。
カーネリアだ。
彼女は席を立ち、僕らが止める間も無くヤジを飛ばした冒険者の男に駆け寄った。
「なに? あんたこそその剣振れるの? 本当に?」
「お、お嬢!」
「言いやがったな小娘!」
連れの男が慌てて止めようとしたが、ヤジを飛ばした冒険者の男は自身の剣を持ちあげてしまった。
やはり重いのか一歩ぐらついている。
「この鬼級の剣オーガブリンガーの威力を見せてやるぜ!」
冒険者の男が剣を振り下ろす。
僕はとっさに席を立ち駆け出した。
「ちょっと待った!」
僕は二人の間に割り込み、手にしていた剣で打ち込みを防ぐように剣を水平に構えた。
重く鈍い音が響く、カーネリアに見せてもらった剣は見事に冒険者の男の攻撃を防いでいた。
「な、なんだと!?」
「……さすがにやりすぎだ」
「ふざけ――ひっ!?」
冒険者の男が僕の後ろを見て突然一歩二歩と後ろに下がった。
冷たい殺気が背中をなでる。
僕は恐る恐る振り向いた。
「やめなさい」
怒りの感情を隠さないでリスタルが冒険者の男をにらみつけていた。
ある程度の技量があれば十分理解できるはずだ。スキルがあろうかなかろうが、この距離はリスタルの間合いなのだと。
絶対に彼女の攻撃を避けられない距離で直接殺気なんて当てられたらたまったものではないだろう。
僕は冒険者に同情した。
「あ、あの、リスタル、さん?」
「あ……」
リスタルは目をぱちくりと瞬きし、スッと殺気を引っ込めた。
冒険者の男はどたんと腰を抜かし、泣き出しそうに嗚咽を上げていた。
いくらなんでもやりすぎではないだろうか。
「えー、すみません……大丈夫ですか?」
僕は腰を抜かした冒険者に手を差し伸べた。
「す、すみません、すみましぇん。だから命だけは! 命だけは!」
「あ、ちょっと―――」
男は泣きながら店を出て行ってしまった。
「おい、あの鬼のルピンがにらまれただけで逃げちまったぞ」
「お、俺あの女知っているぞ。水晶姫じゃねえか?」
「って、ことはあいつらがもしかして『金緑石の集い』の看板を奪ったってやつらか!」
店がざわつき始める。
突如、カーネリアが僕の腕を引っ張った。
「店を変えましょう。さっきのお礼もしたいしね」
「え、ちょっと――」
そうして僕らは人に囲まれる前に商人ギルドをあとにすることにした。
それにしてもと、僕は握っていた剣を見る。
異名が付くほどの冒険者の一撃を受け止めてなお、刀身が曲がらずにいる剣。
ちらりとスキルが付いていないか確認したが、正真正銘ただの剣だ。
一体どうやって作られたものなのだろうか。
それにもしかするとこの剣にスキルを加えられれば強力な戦力になるのではないのだろうか。




