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第二十七話 流通都市タイズとカーネリアの事情

第二十七話 流通都市タイズとカーネリアの事情


 僕とリスタルは、魔物の襲撃から助けた移動商人たちと共に流通都市タイズにやってきていた。


 流通都市タイズは各国への道が交わるところに生まれた都市だ。

 その名の通り、立地上、交易が盛んな町で、各国からやってきた商人たちによって、物品と情報が集まり、それを求めて様々な思惑を抱いた人が集まる街である。

 一応、大陸で一番大きい王国に属した都市ではあるが、この街においては王国の法はなんの意味もなさず、ほぼ独立状態だといっても過言ではない。


 その象徴ともいえるものが貨幣である。

 一つこの街での買い物は、この街独自の通貨、Tであらわす、タイズ共通貨幣を利用が推奨されている。

 もちろん自分たちの持ち込んだお金をそのまま使ってもいいのだが、それで起こったトラブルは個人の問題として取り合ってくれないのがこの街のルールだ。


 なんでもタイズ共通貨幣が生まれるまでは、国の貨幣価値の差を利用して金儲けを目論んだ商人がひどい商売をしてはトラブルを多発させ、一時は「地獄の次にひどい街」と揶揄されていたそうだ。


 僕が幼いころ、田舎町でも移動商人がそんな話をしてくれていたのを覚えている。

 「良いも悪いも何でもある街」それがタイズという街なのだと。


「そう聞いていたから身構えていたんだけどな」

「タイズ共通貨幣さえ使っていれば、ちゃんと公共の警備団が対応してくれる」

「なるほど、それでトラブルが激減したってわけか」


 僕たちは移動商人たちに促されながら整備された道を進んでいた。

 左右を見れば武器に防具、アクセサリー、なにかの部族の民芸品、食べ物の屋台に、謎のばあさんが水晶に手をかざして不気味な笑みを浮かべている。

 混沌とはしているが、特に敵意は感じられない。


「ラルドさん、こちらです」


 先ほど僕に頭を下げてきた男が一件の店に入っていく。

 店の看板を見ると、商人ギルド兼冒険者ギルドと記述されていた。


 特にギルドであれば突然何かがおこるわけでもないだろう。

 僕は彼らに促されるまま、ギルドへと入っていった。

 

 ギルド内は食事をとるためのテーブルがいくつものあり、冒険者たちが依頼が張り付けられている看板を眺め、奥のカウンターでは報酬の交渉が盛り上がっている。

 店の造りは前の町の冒険者ギルドの支部によく似ていた。


 移動商人の二人組はテーブルを一つ確保し、僕たちに話がしたいと席を勧めてきた。


 席には僕とリスタル、先ほど僕を殴ってきたカーネリアと頭を下げた男が座り、ややあって軽食が運ばれてくる。


「まずは大変申し訳ない。改めて、謝罪させてほしい」


 食事がテーブルについてほどなく、男が頭を下げる。

 そう何度も謝られても、こちらとしては怒りよりも戸惑っているだけなので、少し困ってしまう。


「いえ、でも一体どうしたんです?」

「それが――……」


 男はちらりとカーネリアに視線を送った。

 カーネリアはいまだに怒っているのか脹れ気味であったが、少しの間のあと話し始めた。


「私たちね。剣を専門に扱っている商人なの」


 彼女の話を聞くと、カーネリアの一族は代々剣を始めとした武器を取り扱う商人で、鍛冶師たちと様々なコネクションを持っているのだという。

 ところが現在、伝説の剣の存在のせいで良い剣が一向に売れないらしく、それで鍛冶師たちが軒並み店をたたんでしまっているのだという。


 確かに冒険者として考えれば、伝説の剣があれば大丈夫と考える人も大勢いるだろう。

 せいぜい予備として安い鉄の剣か、ナイフなどがあれば事足りる場面がほとんどだ。


 もしかすると僕の剣を見て殴りかかってきたのも納得した。

 僕が安い剣を使っているから、スキルが付与された伝説の剣を持っているではと思われたのだろう。


「私が知っている最高の剣はその辺にあるオンボロなんかに負けやしないのに!」


 よほど悔しいのか、涙を浮かべた彼女は俯き言葉を投げ捨てた。


「お嬢……やっぱり剣での商売はもう無理ですぜ」

「うーん……」


 少なからず僕は興味を惹かれていた。

 様々なスキルが付与されている伝説の剣に負けないと彼女が自負する最高の剣。

 ちゃんと見ないで評価をするのは失礼だというものだ。


「もしよかったら、その剣見せてもらえませんか?」

「え、いいの?」


 顔を起こし、けろりと商人スマイルを浮かべるカーネリア。

 それを見た僕は本能的に、これは買わないと返してもらえないと直感し、リスタルに目配せした。


「これも勉強」


 だがリスタルはにこりと笑うだけだった。


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