第二十四話 伝説の剣に選ばれなかった落ちこぼれの僕は
第二十四話 伝説の剣に選ばれなかった落ちこぼれの僕は
――防衛戦から三日後。
僕は以前ヤモンが教えてくれた加工品屋まで来ていた。
店内は薄暗く、カウンターに並ぶ装飾は無骨であるが、しっかりとした作りのものばかりだ。
カウンターの向こうに座っていた店主の男はちらりと僕を見た。
「いらっしゃい。見ない顔だが、誰からの紹介だい」
「ヤモンさんからの紹介できましたラルドです。よろしくお願いします」
「なるほど、あいつから話は聞いているよ。それで、何を加工するんだい」
僕は以前倒したゴーレムのコアを鞄から取り出し店主に差し出した。
「これで首飾りを、三人分」
「ほう、いい品じゃないか……工費は二千百G、納期三日間後だ」
二千百Gは確かにかなりの額だ。
だが、アクセサリーにはそれだけの価値がある。
魔物の素材を利用して作られたアクセサリーには微々たる程度だが、装備者の身体能力を向上させる効果があるのだ。
その効果は様々で、素材の元となった魔物の種類や、素材の品質で変わってくる。
もちろん、アクセサリーがなくても十分戦える冒険者は多い。
だがしかしわずかな差で生死を分けるときもある。
その差を買うという意味では二千百Gは安いものだ。
「分かりました。それでお願いします」
そうして僕は店主にお金を渡した。
店を出て、一度背を伸ばす。
これでこの町でやることはほぼ終わった。
あとは首飾りができる三日間で、この町を出るための保存食や水の調達、近隣の情報集めだ。
魔物の大移動で資金は貯まった僕はこの町を出ていくことにした。
この後は町を渡り、人類未踏の領域へおもむき、ダモンドを目指す。
ガネットとの約束を果たすために。
それに、もしかするとダモンドにはガネットにまつわる情報があるのかもしれない。
実のところガネットの修復は、どの鍛冶屋でも首を横に振られていた。
使われている金属が僕たち冒険者が使っている剣とは全く別のもので、溶かして形を整えることも、金属を足して補強することも難しいのだそうだ。
それにもしかすると剣そのものにガネットが存在する可能性もある。
その場合剣を溶かしたりしてしまったらガネットは二度と戻らないかもしれない。
ともかくガネット……彼女の情報を探さないと、修復は難しいだろう。
「ラルド、武器の修理は問題なさそう」
「うん、ありがとう。こっちも用事はすんだよ」
リスタルと合流し、僕たちはギルド支部へと足を運んだ。
ギルド支部はいつも通り、冒険者たちがまばらにテーブルでくつろぎ、依頼が張り付けられた掲示板を覗いていたりしている。
「おう、ラルド! 遅いじゃないか」
すっかり聞き馴染んだ声に呼び止められる。
僕がテーブル側に振り向くと、メジストが片手をあげていた。
「……って、そうか、そろそろ旅立つんだな」
「メジストさん、お世話になりました。準備もあるので3日後、出発の予定です」
「そっか寂しくなるな。まあ、生きていたらまた会おうぜ」
「はい」
『青紫の水晶』の面々にも挨拶をし、僕はカウンターで忙しそうにしているイズにも声をかけた。
「何? ラルド。どうしたの?」
「一応別の町に行こうと思っているので挨拶しておこうかなと」
「殊勝じゃない。次はどの町に行くの?」
「ここから南にある流通都市タイズに行こうかと思っています」
「それじゃ話が通りやすいようにギルドの紹介状書いておくから、明日受け取りにきなさいな」
「ありがとうございます」
イズはけらけらと竹を割ったような快活な笑みを浮かべていた。
こういうのが人の入れ替わりが多い冒険者を扱う人たちの見送り方なのかもしれない。
その後、僕は防衛線で知り合った冒険者たちに声をかけ、町から離れることを伝えていった。
その日の夜。
僕は宿屋の主人に事情を話し、残りの滞在期間中のお金を先に払い、部屋に戻った。
あたりを見ればずいぶんと荷物が減り、すっきりとしている。
不要な荷物は捨て、必要なものだけを残した結果だった。
そっとベッドに置いていたガネットを手に取る。
思い出されるのはあの日の出来事。
おそらく彼女の言葉にガネットを直すヒントがあるのだろう。
ラズワードはガネットのことをラピス姉さんと呼んでいた。
そしてラピスという人物はラズワードに殺され、世界を祝福し、ガネットはその祝福を集めた存在なのだとも言っていた。
正直意味がよくわからないところが多い。
だが世界を祝福する存在それは昔話に聞かれる神様みたいな存在なのだろうか。
ガネットが神様……女性だから女神だろうか。
「というか、お前、女だったんだな」
口調からは全然想像できなかったと僕はくすりと笑った。
僕は買ってきていた鞘にガネットをそっと収めた。
次に彼女を抜くときは、修復の方法が分かった時だ。
そして三日後、僕とリスタルはこの町を出発した。
「行きましょうラルド」
「うん、目指すは流通都市タイズだ」
道は明るく、僕たちの前にある。
僕らは進む、胸に赤い首飾りを揺らし、同じ首飾りで封をした剣を一本携えて。
目指す目的地はまだ遠いけれど着実に一歩ずつ。
これは、女神が宿った剣、それこそ誰も知らない伝説の剣を生み出す旅。
かくして伝説の剣に選ばれなかった落ちこぼれの僕は、自力で伝説の剣を作ることにしました。




