第二十三話 魔物の大移動のあとに
第二十三話 魔物の大移動のあとに
その後、僕の倒した人型のドラゴンが魔物の群れのボスだったのか、魔物の群れの勢いは急速に弱まった。
その期に乗じた冒険者たちが周囲の魔物を一掃し、防衛戦は僕らの勝利で終わった。
僕はスキルの反動か、まったく身動きが取れず『青紫の水晶』のヤモンたちに担がれ戦線の後ろで最後までその光景をぼうっと見ているだけだった。
「終わった。僕たちの勝ちだよ。ガネット」
「……」
「……ガネット」
ガネットはラズワードの手によって壊され、何もしゃべることはなくなってしまった。
僕はガネットの柄を握りしめることしかできなかった。
「ラルド、ギルドに戻りましょう」
「……うん」
あの後も戦いを続けていたリスタルが戻ってきた。
話を聞くと最終的に四十匹ほどの魔物を仕留めてきたらしい。
さすがだと思ったが、今はそれを言葉にすることができなかった。
僕は彼女に促されるまま、ギルドに戻ることにした。
「『金緑石の集い』の報酬は三万Gね。どうする冒険者ギルドのほうで預かり証書いておこうか?」
「やったじゃねえか! ラルド!」
「さすが『金緑石の集い』を奪っただけはあるじゃないか!」
「今夜は奢ってくれよな!」
「おいおい、一番の功労者に奢らせんのかよ!」
冒険者ギルドに戻った僕を待っていたのは、群れのボスを倒した僕への破格の報酬と称賛の嵐。
だが、僕の心は晴れずにいた。
あの時、もう少し早く動ければガネットが壊されることはなかったのかもしれない。
隣にいたリスタルは僕に声をかけてきた。
「ラルド、大丈夫?」
「うん、【強化自然治癒】のおかげでもう大丈夫だよ」
心配をかけてはいけないと僕は話題をそらした。
リスタルはじっと僕のことを見つめ、がしりと腕をつかんだ。
「宿に行きましょう」
「ちょ、ちょっと!?」
振りほどこうにも彼女に抵抗できず、僕が引っ張られるまま、僕が借りている宿部屋まで運ばれた。
「休みなさい」
「いや、大丈夫だって」
「いいから」
じっと青い瞳で見つめられて、僕は言葉を失った。
いわれるがままに荷物を置き、ベッドに入る。
ドッと疲れが湧いてくるのと同時に、涙が少しずつあふれてきた。
冒険者になれなかったといわれた時でさえ出なかった涙が今になって出てきていた。
ガネットは確かに人ではなかったが、仲間だったのだ。
それを守れなかった。
それがただただ悔しかった。
「ラルド、いいの。誰だって泣いていいの」
リスタルはそんな僕を見てそっと僕のそばに座り、頭に手を置いた。
ひどい顔を見られるのは少し抵抗があったが、一度流れ始めた涙を止めることができなかった。
そうしてひとしきり泣いたのち、落ち着いた僕はリスタルとギルド支部に戻ることにした。
報酬をもらう前だったので、受け取りの話をまとめるためだ。
「お~、ラルドじゃないか! おーいみんな! 俺たちの英雄が戻ってきたぞ!」
「うおおおおお!」
「乾杯のやり直しだな!!」
ギルド支部はお祭り騒ぎであんなにクタクタだったはずなのに、冒険者たちは酒を片手に食事を摘み、飲めや騒げやとどんちゃん騒ぎに興じていた。
尋常じゃないテンションの中あれよあれよという間に僕は酒を手渡され、仮設されたお立ち台のような台に立たされた。
「それじゃあ、一言乾杯を!」
「え、えーっと」
周囲を見渡すと今日の防衛線を生き抜いた冒険者たちが、全員僕を見ている。
何を言っていいのか言葉がまとまらない僕はとりあえず一言だけと酒の入ったコップを掲げ、口を開いた。
「か、乾杯ー!」
「なんだそりゃー! 乾杯!」
「いいじゃねえか、乾杯!」
「乾杯」
そうして、防衛線を無事に乗り切った僕らは夜が明けるまで騒ぎに騒いだ。
のちのギルドの記録にこの戦いは資料として残されることになる。
魔物討伐数352、軽傷者多数、重傷者8(内引退者2)、死亡者0、この戦いの最大の功労者はDランク冒険者ーーラルド、と。
体調がすぐれず、更新が遅れ、文字数が少なくなってしまい申し訳ありません。
宿屋のシーンはあまり詳細に描くとR指定上がってしまいそうなので省略してます。




