第二十話 再会のドラゴン
第二十話 再会のドラゴン
「次、来るぞ!」
「くそっ、手がたりねぇ!」
「スキルを使う!」
「まて、早まるな!」
『本隊』との闘いは序盤は順調かに思われた。
しかし、本来必要な人数に達していない僕たちは、猛攻を止めない魔物の群れに徐々に押されてきているのが現状だ。
覚悟して挑んだ長期戦であったが、初めに集中力がかけ始め、次に握力、腕の力、体力が徐々に失われていく。
さらには敵はこちらが疲弊していることなどお構いなしに全力で襲ってくるのだ。
まだ死者が出たとは聞いていないが、大きなケガを負い、一人、また一人と戦線を離脱していく。
それは僕もまた例外でなく、息が上がり、手に力が入らなくなってきていた。
「ラルド、交代だ! 下がってこい!」
「は、はい! 助かります」
背中から声がかかると同時に、金属鎧を着こんだメジストが僕の前に出てきた。
メジストはその勢いで戦前よりもすこし突出し、剣と盾を打ち鳴らし、大きな音を鳴らす。
「よっし、休ませてもらった分、仕事するぞ! 前出るぞお前ら!」
「馬鹿、はしゃぎすぎ!」
「へっ新人には負けてられないぜ!」
「周囲警戒! リーダーにジャンジャン集まってるよ」
メジストの勢いに乗って残りの『青紫の水晶』の面々も前に出てくる。
連携の安定感が本当に頼もしい。
僕のパーティメンバーはというとーー。
「ぬわあアあ!?」
無限の体力と脅威の防御力を誇るガネットはウルフの群れに飲まれもみくちゃにされていた。
それをフォローするようにリスタルが余分に動き、僕はリスタルの背中が狙われないよう気を配りながら立ちまわらざるを得ない状況だ。
この『本隊』との集団戦、必要なのはいかに早く敵を倒すかだ。
これまで、僕らのパーティが相手取ったのは四十体ほど。そのうち撃墜数は僕が九、リスタルが十二、ガネットが一である。他は周りののパーティからフォローされ事なきを得ているが、【攻撃者】が機能していない状態なのは明白だ。
今はギリギリ何とかなっているが、ボスが近づいてくるにつれ、敵が強力になってきていることを鑑みるにまずい状況なのかもしれない。
なんとか話をしなければと僕は二人に声をかけた。
「ガネット、リスタル! 交代だ! メジストたちがフォローしてくれている隙に一度下がって!」
「わ、かっタ!?」
「了解」
リスタルが再びもみくちゃにされたガネットを拾い、僕の元まで駆け寄ってくる。
合流した僕たちは、戦線から少し下がった防衛線まで後退することにした。
「二人とも無事?」
「ええ、ラルドが背中を守ってくれたおかげ」
「小指がもゲたが大丈夫だゾ!」
ガネットがひょこりと右手を挙げて見せた。
小指に当たる部分がぷらんと皮一枚だけでつながっており、一見するとゾっとなるようなむごい状態になっていた。
一般人ならアウトな案件なのだが、ゴーレム感覚だと大丈夫ってことでいいのだろうか。
「しかし困った、人が多いから、ドうしても全力稼働で戦えン」
「仕方ないよ。途中で攻撃されたり、あとで追及されたらどうするのさ」
「ううム」
ガネットが上手く機能できない理由の一つに人間の可動域に合わせて戦ってもらっているというところもある。
魔物だと間違えられでもたら、この状況下だ、戦線が混乱し、下手すると崩壊してしまうかもしれない。
僕は気づいたことを二人に提案することにした。
「やり方を変えよう。僕とリスタルが前に出て、敵を引き付ける。ガネットは僕たちの周りを警戒して、隙があったら敵に攻撃を加える」
「それならもミくチャにされないナ!」
「さすがラルド。それでいきましょう」
その後、十分と少し休憩をとり、ある程度回復した僕らは『青紫の水晶』の面々と交代するように前に出た。
「交代します!」
「助かる。 こいつら徐々に強くなってきてるから気をつけろよ!」
「はい!」
先ほど打ち合わせて通り、僕はリスタルと互いの背中をフォローするようにスライムとヴァイパーの群れに飛び込んだ。
それを見て、ヴァイパーたちは僕らを獲物と判断したのか一斉にとびかかってくる。
「任せロ!」
ヴァイパーたちの強襲に呼応し、ガネットが攻撃に参加していないスライムを蹴り飛ばす。
吹き飛んだスライムは僕たちを狙うヴァイパーのほうへと飛んできた。
予想されていなかった飛来物にヴァイパーたちは回避行動をとり、態勢が崩れ、一瞬動きを止めた。
「そこ!」
「取った!」
その隙を逃さず、僕とリスタルが攻撃がヴァイパーたちを切り裂いていく。
「おい、あの男、本当に新人か!」
「あの水晶姫の動きについていってるぜ」
「『金緑石の集い』を奪ったって話、冗談じゃなく本当なのかもな!」
余裕のできた周りのパーティからこちらに声が上がる。
こちらを見て声を交わす余裕ができるということはこの方法が今回は合っているみたいだ。
僕たちはこのコンビネーションを軸に次の交代まで、順調に戦果を挙げていった。
「な、なんだあいつは!?」
ややあって、僕が二十七匹目の魔物を倒した時、少し離れた冒険者が叫び声をあげた。
あまりに切羽詰まった声が気になった僕は敵の攻撃を躱すさなか、一瞬だけその方向に視線を送る。
「なっ!?」
それは人のように二足で立っていた。
だがその皮膚は、人のものではなく、全身が深い緑色をした鱗に覆われている。
爬虫類によくみられる口や、顎が前に長い頭の形、振り払うだけで地面が抉れるしっぽ。
まるでそれは、伝承に残るドラゴンが、人に取り憑いたような姿だった。
あんな種類の魔物は見たことも、聞いたこともなかった。
だが僕が驚いたのはそこではなかった。
(なんで、ジェードが持っていった剣を!)
理由は分からないが、その人型ドラゴンの手には、ジェードが持ち去った竜級の剣が握られていのだ。
なにかの間違えではないかと僕はもう一度、人型のドラゴンに視線を送った。
そこで、僕たちは目が合ってしまった。
「ラァァァァァァァァァァァルウウウウウゥゥゥゥゥドオオオオオオオ」
人型ドラゴンは人間のように狂気に目を光らせながら、僕に目がけて尋常ではない速さで突撃してきた。
魔物にも冒険者にも目をくれず、人型のドラゴンは全てを吹き飛ばしこちらに近づいてくる。
狙いがわからない。
だけど逃げるわけにはいかない。
今の連携を崩されたら、僕らだけではない、多くの人に被害が出てしまう。
僕は剣を構え、人型のドラゴンを迎え撃つことにした。




