第十七話 強化案
第十七話 強化案
毒を受けてどれだけ時間がたったのだろうか、スキル【強化自然治癒】が間に合った僕はなんとか目を覚ました。
「う、うげぇぇー」
「オお、目が覚めたカ!」
だが、意識は取り戻したものの、体は重く、僕は激しい吐き気と戦わざる負えなかった。
握っていた回復の棒のスキル【強化自然治癒】のおかげでだいぶましだが、これはうっかり普通の人が浴びると死んでしまうのではないだろうか。
「ラルド、水を飲んで」
「ありがとう」
リスタルが用意してくれた水を飲む。
吐き気がだいぶ落ち着き、僕は大きく息をした。
空気がおいしい。
呼吸ができるって素晴らしいことだと再認識したところで、僕は木に寄り掛かり、立ち上がった。
荷台を見ればだいぶ時間がたったのか、モンスターの死骸は砂となり、いくつかの素材を残しただけの状態になっていた。
時刻はまもなく日が暮れるぐらい、夜間での戦闘は人数の少ない僕らでは厳しいのでそろそろ撤収しないとまずいだろう。
「今日のところはこのあたりで町で戻ろう」
「分かった」
「うム、ラルドが動けるようになったなラ、帰れるナ」
僕たちは日が暮れる前に冒険者ギルドまで戻り、依頼の報酬を手にして、宿に戻ることにした。
合成用に素材は各種類一つずつ残してもらい、残りはお金に換えた。
今日はだいぶ儲けたとはいえ、今後の課題が浮き彫りになった一日だった。
その日、僕は宿の借り部屋で宣言した。
「戦力を強化しないといけない」
「その通りだナ」
「ええ」
リスタルとガネットがうんうんとうなずく。
僕は違和感に気が付いた。
「……なんでリスタルが僕の部屋にいるの?」
「……心配だから」
「う、うん」
銀色の髪を弄り、リスタルがなぜか照れ臭そうに言ってくる。
毒で体力で落ちているので、その心遣いは素直にうれしい。ということにしておいた。
そういうことならば、リスタルにちょっと相談してみることにしよう。
「リスタル、僕、二刀流をやってみようと思うのだけど。どうかな」
「ラルドがやりたいというのなら、やってみましょう」
「ありがとう」
僕たちのやり取りに、わかっタと、ガネットが飛び跳ねた。
「合成した剣を二本もって戦ウつもりだナ!」
「うん、グランドヴァイパーと戦って思ったんだよ。
もっといろんなスキルが使えれば、うまく戦えたんじゃないかって」
「なラ、マずはスキル合成からだナ。スキルが使える剣を増やスべきダ」
「うん、そうなるね」
時間もたってだいぶ楽になったようで、体調はそこまで悪くはない。
僕はさっそく今日手に入れた魔物の素材を使って合成魔術を行ってみることにした。
手元にあるのはスライムのコア、フォレストウルフの爪、グランドヴァイパーのうろこだ。
僕はそれらを順番に剣に合成していった。
――――――――――
鉄の剣
モンスタースキル
【スライム】【弾性強化】
――――――――――
――――――――――
鉄の剣
モンスタースキル
【ヴァイパー】【毒性付与】【強度強化】
――――――――――
――――――――――
鉄の剣
モンスタースキル
【ウルフ】【敏捷性強化】
――――――――――
「ふう、ちょっとうまくいかなかったか……」
だが、どうにも集中力を欠いていたようで、出来上がった剣にはスキルが数個ついているだけだった。
しかも合成中はすべて青い水晶が生成され、すべての剣に謎のモンスタースキルが付与されている。
もしかすると、魔物の素材を合成するとその魔物に対応したモンスタースキルが付与されるのかもしれないと僕は合成の法則の一つを見つけたと心に留めておくことにした。
「おそらく【ゴーレム】スキルと同じだと思うけど、全部モンスタースキルが付いた」
「今は魔物の大移動中、さすがに試している時間はない」
「うん、実際に戦いながらいろいろ試してみるよ」
試しに両手にそれぞれ剣を握ってみる。
左手が重く思いのほかしっくりこない。これまでそういう訓練を積んでなかったからとは言え、この調子だと二刀流習得には時間がかかりそうだ。
「大丈夫。フォローは任せて」
「……なるべくフォローされないように頑張るよ」
ふんふんとやる気を見せるリスタルに、僕は苦笑気味に答えた。




