第十五話 冒険者活動を再開します
第十五話 冒険者活動を再開します
あの決闘から一か月が経った。
元『金緑石の集い』のディアンや、ブラッドたちは散り散りになり、個別で冒険者活動を始めたようだ。
大勢でパーティを組んでいても分け前が減ってしまうし、有名ではなくなったために高い報酬の依頼を受けることができなくなってしまったのが原因らしい。
ジェードに関しては行方不明のようで、あの闘技場の一件以来、竜級の剣と共に姿をくらませてしまったそうだ。
心配ではないが、彼とは色々因縁ができてしまったところを感じているので、気になると言えば気になる情報だ。
さて。僕はというと特に大きな傷も負わなかったので、三日ほど休み、ダモンド探索活動のため、資金稼ぎを再開しようとしたところ、リスタルにしばらく宿で謹慎を命じられていた。
理由を尋ねると、元『金緑石の集い』を始めとした一部の人間たちが僕から『金緑石の集い』の看板を狙おうとしているらしいのだ。
さすがに複数人に囲まれでもしたらひとたまりもないので僕はリスタルが調査を終えるまで宿にこもることにした。
「――というわけで、宿に残った僕たちがやることといえば、スキルを調べることぐらいなわけで……」
「これは、どこからどう見ても人間の子供」
「アはハは、私は自由を手にしタゾ!」
僕はリスタルと現状の報告と、今後の打ち合わせをしていた。
だいぶ鎮静化したみたいでそろそろ活動を始められそうだ。
「それじゃ、今日の午後からギルド支部に行くことにするよ」
「オい、ラルド、話を聞け!」
「……かわいそう」
「いや、もうこの話何度も聞いているから……」
僕は目の前をぴょこぴょことはねる女の子に目をやった。
赤く短い髪、赤い瞳、背丈体格は幼い子供の様だが、ベッドを真っ二つに割れる超怪力がチャームポイント。
彼女はガネット内臓型ゴーレム、自称ガネットちゃんだ。
ちらりと見える八重歯がこだわりらしい。
前回は服がなくて困ったが、今回は抜かりなくリスタルが用意した白いワンピースを着こんでいる。
しかしこの一か月本当に大変だった。
ガネットちゃんが歩くと何故か本体のガネットが乗り物酔いを起こすし、ならばと歩き方の工夫に頭をひねらせ、触覚をどこまで設定するかとか思考錯誤の日々だった。
正直とても楽しかったけど、見た目が幼い女の子をあれやこれやと調べるのはなんかよくない気分になり、僕の精神はかなりボロボロになっていた。
「こノ服動きやすいシ着るのも楽でいいナ」
ワンピースがよほど気に入ったのか、くるくると回るガネットちゃんを見て、これまでの苦労がふと浮かんできて思わず涙ぐみそうになる。
リスタルを見れば微笑むような顔でガネットを見ている。
なんだか子供が初めて歩き出したみたいな感動がここにあった。
「それじゃあそろそろ行こうか」
「うん」
「おーヨ」
僕は鞄の中身を確認し、背中に背負った。
リスタルとガネットの身支度が完了したことを確認し、僕たち三人はギルド支部へと向かうことにした。
ややあって、特にトラブルなく僕たちはギルド支部にやってきた。
だが、なにやら支部内が物々しい。
怒号が響きわたり、あちらこちらで、ばたばたと人が走る音がする。
それに見渡せばあちらこちらで冒険者たちが力尽きるように倒れていた。
異様な光景にぎょっとなったが、よく見れば傷こそあるものの、皆ただ眠っているようなので僕は胸をなでおろした。
「おお、ラルドじゃないか……」
弱弱しい声に呼ばれ僕はそちらを向いた。
テーブルを占拠し『青紫の水晶』の面々がぐったりと突っ伏していた。
歴戦の冒険者たちがこんな状態になるとは……。
「何かあったんですか?」
「稼ぎ時だと思ったんだがな……実は、いや、詳しくはカウンターのイズに聞いてくれ。俺はもうだめだ……」
「戻ってきてありがとう」とうわごとのように呟いたメジストは、がくりと力尽きてしまった。
ほかの『青紫の水晶』のメンバーも、もう動きたくないとばかりにぐっすり眠っている。
「ラルドカウンターに行きましょう」
「うん」
「死屍累々だナ」
ガネットのよくわからない言葉はおいておいて、僕はクエスト受注のカウンターへと向かった。
カウンターでは目にクマを作ったイズが驚いた顔で僕を指さした。
「ラルド! あんた、北の町に行ったんじゃないの!?」
「え……いえ、ずっとこの町にいましたけど」
「リースータール……!」
「ごめんなさい。ラルドを狙っている輩があまりに多かったから」
何となく何があったか予測ができた。
リスタルは僕を狙う冒険者たちを誘導しようと偽の情報を流したのだ。
実際、僕も一か月ほど宿屋に引きこもっていたし、みんなその情報を信じていたらしい。
「すみません。ところで何があったんですか」
「……大移動よ」
イズは苦々しい顔でつぶやいた。
このギルド支部の様子をみるに途轍もなく嫌な予感がする。
「えっと……何の、ですか?」
「魔物」
恐る恐る聞く僕に、イズは天を仰ぎたはーと息を吐いた。
その様子を見るにギルドとしても相当大変な状況らしい。
「二人とも、やろう」
さすがにほってはおけないと僕は二人に声をかけた。
「うム、私モこの体ノ性能を試してみたいしナ!」
「集団戦の連携の訓練にもなる」
ガネットとリスタルは僕の提案にうなずいてくれた。
「イズ、僕たちもやるよ。クエスト回して」
「助かるわ。それじゃフォレストウルフの群れが数グループ確認されているところがあるからそこからお願い」
そうして僕たちは魔物の大移動に対処することになった。
でも、どうして突然魔物たちが町を目指すようになったのだろうか……。
ふと湧いてきた疑問に対して僕はまだ答えを持ち合わせていなかった。




