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第十話 勝負を挑まれました。

第十話 勝負を挑まれました。


 翌日、僕は昼食の少し前ほどの時間に目が覚めた。

 昨日の疲れのせいか、だいぶ寝過ごしてしまったが、おかげで体が軽い。

 僕は二、三軽く体を動かし、僕は自分の調子を把握した。


「今日はどうするんダ。スキルか! あの謎のスキルを試すのか!」


 やけにハイテンションなガネットを見て、僕はくすりと笑った。

 気持ちはすごいわかる。僕も遺跡の探索を予定した日はわくわくしてあまり眠れなかった。


「まさかと思うけど、実は寝てない?」

「もちロん。そもソも、私は眠レる……のカ?」

「それを僕に聞かれても」

「アァ……ウゥム、もしかして眠レるのか? どうなのだロう? いやしカし――……」


 ガネットはぶつぶつと剣に睡眠は必要なのか、そもそも自分は無機物なのか有機物なのかなどと、一人の世界に入ってしまった。

 その間に僕は身支度を済ませ、ガネットを鞄にセットする。

 鞄にセットされたことでガネットは一度思考を中断したのか、独り言を中断した。


「それで、どうするんダ、ラルド」

「今日はまず依頼が何があるのか確認してみようと思う。出来そうなものは挑戦して、無理そうなものしかなかったらスキルの実験の予定」

「依頼ナいといいナ!」

「それだとダモンドに行けないよ」

「うグぐゥ……」


 ストーンゴーレム討伐の報酬がそこそこあるとは言え、人類未踏領域の探索が目標ならばお金が全然たりない。

 とにかくまずはこの町を出てもしばらく生きていけるだけのお金と準備が必要だろう。


 僕はガネットの柄が飛び出した鞄を背負い、買った二本の剣を左右の腰に差す。

 回復用の棒は落とさないようにと鞄にしまっておいた。


「まずはコツコツ進めていこう」

「そうだナ。ヨシギルどにいくゾ」

「うん」


 そうして宿を出た僕らはさっそく冒険者ギルドの支部へとやってきた。


 これから冒険者としての活動が始まる。


 そうワクワクしながら、中に入ろうとした僕に突然突然の怒鳴り声が飛んできた。


「俺様のいうことがわかんねえのか、てめえらは!」


 僕は思わず足を止め、中の様子を伺った。


「ああ! ラルドを出せってんだよ!! 意味が分かんねえってのか!!」


 怒号の直後、重いものが倒れる音と、皿か何かが割れる音が店の外まで響いてくる。


 声の主はおそらくジェードだ。

 僕になんの用だろうか。ただならぬ事態のようだが。

 僕は気を取り直して、ギルドの支部に入ることにした。


「なんだこれ……」


 ギルド支部の中はだいぶ荒らされていた。

 テーブルが破壊され、椅子が散乱し、その中心には剣を振り回すジェードの姿があった。


「ジェード! 何をしているんだ!」

「ラルド! 見つけたぞ、この嘘つき野郎が!」


 ジェードの怒鳴り声に、僕は疑問符を浮かべた。

 僕はジェードに対して嘘を言った記憶などない。

 大体、交流がほとんどないのだ。伝説の剣の儀というスタート時点でおちこぼれた僕と違い、順調に冒険者としてスタートラインに立てたジェードに僕が嘘つきだと罵られる理由がわからない。


「はい? 嘘つき?」

「そうだよ! てめえらもよく聞け、ラルド、お前は嘘をついている! 伝説の剣も持たないお前がストーンゴーレムなんて倒せるわけがねえ!」


 ジェードは顔を真っ赤にしながら、がなりたてる。

 どうやらだいぶ興奮しているようで、彼から僕に向けた敵意がびりびりと伝わってきた。


「あのフォレストウルフの群れだってそうだ。あんなものスキルのないお前ひとりで倒しただなんて、嘘もいいところだ!!」


 もしかしてジェードもあの遺跡に行ったのだろうか。

 そうなのだとしたら、ストーンゴーレムはともかく、フォレストウルフの群れと戦闘したのかもしれない。

 ただ、ジェードも『金緑石の集い』で同じような訓練を受けているはずだ。さらに【強化自然治癒】を持っているはずなので難なく倒せると思うが違うのだろうか?


「もしかして、あの遺跡にでフォレストウルフの群れと戦ったのか?」

「黙れッ!!  黙れ! 黙れ! この嘘つきがッ!!」


 質問を怒鳴り声で一蹴され、話し合いにならない。

 周りを見渡すと「なんとかしてくれと」テーブルやカウンターに避難した冒険者一同から視線が飛んでくる。

 何とかしたいのはやまやまだけど、どうしてこうなってしまったのか皆目見当がつかないから困ってしまう。


「……この騒ぎはどういうこと」


 そこにリスタルがギルド支部に入ってきた。

 ギルド支部に入ってきた彼女は周囲は見渡し、頭を押さえた。


「リスタル。俺より弱いこいつがフォレストウルフの群れやストーンゴーレムを討伐したなんて嘘だって証明すんだよ!」

「……そう、でも現に彼はゴーレムのコアをギルド員に見せている。まぎれもなく実力が――」

「うるさい!」


 ジェードはまるで駄々をこねる子供のようにリスタルの話をも遮った。

 そしてついには剣を抜き、僕にその剣先を僕に向けてきた。


「お前をぶっ潰して、すべて嘘だったと白状させてやる。決闘だラルド、嘘つきは俺様が殺してやる!」


 そうジェードは宣言してきた。

 リスタルはため息を吐き、僕に頭を下げた。


「ごめんなさい。ラルド。彼、昨日のフォレストウルフと戦って死にかけてしまって、おそらく気がたっているの」

「そんな、馬鹿な。彼の指導員は何を教えてだんだ」

「ブラッドはスキルがあれば何とでもなるって人間だから……。私もできるなら彼を止めなければならないけど――」


 そういってリスタルは自分の剣をちらりと僕に見せてくれた。

 彼女の剣は、何か強い衝撃を受けたのか、刀身に亀裂が走っていた。

 これではスキルが正常に発動するかもわからない。


「二人で何を話してやがる!! リスタルから離れろよ、ラルドぉ!!」


 ジェードを刺激しすぎるのはいけないとリスタルは僕からはなれ、ジェードが暴れたら対応できる距離についた。


 だが、彼女の剣は壊れている。

 今のリスタルではジェードの攻撃を受け止めることさえ難しいはずだ。


 僕は決めた。この場を収めるには―――。


「分かった。やろう―――それでジェードの気がすむのなら」

「ヒャッハァ! いいぜお前が偽物で冒険者の資格がないってことをこの手で証明しやる」


 ジェードは僕の応えに、目を見開き、まるで山賊を思わせるような悪辣な笑みを浮かべた。

 今にもとびかかってきそうな気配に僕は思わず剣に手を置いていた。

 ジェードも、一歩二歩とこちらに近づき間合いを図ろうとしている。


「―――その話、聞かせてもらった!」

  

 一触即発の空気を破るように、突然、ギルド支部によく通る大きな声が響き渡った。

 僕が声の主を探すとギルド支部のVIP部屋から、男が一人、勢いよく扉を開け放ち立っていた。

 僕にとってはあの夜以来の再会だった。

 『金緑石の集い』のパーティリーダー、ディアン。

 ……彼は僕をパーティから追放した男だ。


「決闘、いいじゃないか。なら、我ら『金緑石の集い』が最高の舞台を用意しようではないか」

「ディアン、あなた何を考えているの!」


 リスタルがディアンをにらみつけた。

 当のディアンはまじめに取り合わず、彼女の言葉を笑い流している。


「俺は言ったはずだ。スキルこそすべて! リスタル、お前の考え方は間違っているとな」

「そんなことはない。技術もなしにふるう力はすぐに限度が来る」

「果たしてそうかな。だったら証明してもらおうじゃないか」

「それで決闘ってわけ?」

「そうだとも!」


 大げさに両手を広げ、ディアンは演技じみた動きで、僕とジェードの間に入ってくる。

 リスタルを見ると、ディアンを不快な目で見ている。

 ジェードは新たな味方にニタニタと品のない笑いを浮かべていた。


「我々の代表としてジェードを、君の代理としてラルドを。彼が負けたらおとなしくこのパーティを出ていてもらおう」

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。リスタルは俺の女だ。俺が勝ったらリスタルは好きにさせてもらうぜ」

「いいだろうパーティから出ていったものは我々は関与しない。お前ができるのなら好きすればいいさ」

「さすがリーダー話が分かるぜ!」


 話がどんどん大きくなっていく。

 僕とジェードが決闘をして、僕が負けたらリスタルが危ういことになってしまった。 

 どうしてこうなっていくのか、まるで初めから決められてみたいな段取りで進んでいく。

 リスタルもこの違和感に気が付いたのか、嫌悪感を隠さず吐き捨てた。

 

「……そう、それが狙いだったのね」


 そう、おそらくこの茶番はディアンとジェードの二人で練った計画だったのだ。

 僕を使い、リスタルをパーティから追放する口実を作る。

 なんて卑劣な。


 すでに勝利を確信したのか、ジェードは喜びの表情で剣を収めた。

 とりあえずこの場ですぐに戦うということにならないようで、僕も剣にかけた手を離すことにした。


「決闘は明後日の午後、この町の闘技場で行うことにする」


 話がまとまったとばかりに、ディアンとジェードはニタニタと笑いながらギルド支部を出ていこうとする。


 さすがに一方的すぎる。

 僕は、何かしなければとディアンに声をかけた。


「ちょっと待ってください。僕が勝った場合はどうなるんですか」

「好きなようにすればいいさ。君が勝つことなんて万に一つもないのだから」 


 見下したような目でディアンは僕を笑ってきた。

 この男が何を考えているのか、僕は気味の悪さを覚えながら僕はギルドから出ていく彼ら見送るしかなかった。


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