第1話 落ちる
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第1話 落ちる
「テリーヌ!マリ・テリーヌ!」
お母さんの声が遠くできこえた。……私――マリ・テリーヌ、13歳。
今はお母さんから隠れているの。”1人隠れ”っていって、お母さんを困らせるため、私はどこかへ隠れるのよ。
何故って?そりゃ、お母さんが私を見つけようとするから、”かくれんぼ”になって、私、それが楽しいわけ。
それにお母さんだって、私を見つけないではいられないの。
だってね、もう少しで夕食の時間だから。
”食事の時間は皆で食べよう”がうちのルール。だからお母さんは、絶対絶対私を見つけなくてはいけないのよ。
「テリーヌ!……もう、またどこかに隠れてるのね。全く、あの子もなんでこんな事が好きなのか…。こら、テリーヌ!出てらっしゃい!」
「おーい、テリーヌはまだ見つからないのか?」
「あら、パパ。ええまだなのよ。あともう少し…待っておいてね。」
「なるべくはやくしろよ。」
「ええ、それは勿論。」
私、クローゼットの中でくすくす笑った。お父さんの言葉から表情が見えたみたいで面白かったから。
私が笑うと、お母さんの足音がきこえ、クローゼットの前でぴたりととまった。
「テリーヌ……いるわよね?はやく出てらっしゃい。」
「………。」
「テリーヌッ!」
ガシャーンと音がなり、クローゼットが大きくひらいた。
その瞬間、私は…落ちた。悲鳴をあげる間もなく、まっさかさまに落ちたのだ。一瞬のことで私は言葉を失い、なびく髪を見ながらクローゼットの扉が視界にはいった。
遠くで、お母さんの声がする。
「あら、……いない?どこに隠れたのかしら。」
ぼんやりと顔が見え、消えた。それから空白の時間が流れ、気がつくと私は直立不動の姿勢でテーブルの上に立っていた。
第2話 ペパーミント
「何だね君は。突然テーブルの上なんかに落ちてきて。」
「え?」
「何だね君は。」
「えっと・・・・・・。」
「何だね君は。」
「あの、だから・・・・・・。」
「なん」
「もうやめてあげたら。」
急に目の前に、2本足で立つ犬が現れ、私に質問攻めをした。
それをさえぎるように言葉を発したのは、同じく2本足のウサギ、だった。
赤い目を輝かせ、犬の前へとでる。
「君は誰?何故ここにいる?・・・・あ、とりあえずテーブルからおりて。」
「あ、ハイ。ごめ・・・スイマセン。」
丸太でつくられたテーブルからおりる。よく見ると、テーブルの上には、たくさんの”虫”―――つまりは”ごちそう”が並べてある上、そのテーブルのまわりを色んな種類の動物達・・・それも2本足で立っているものばかりがかこっていた。
「もう一度聞くけど、君は誰?何故ここにいる?」
さっきのウサギが、大きな目で私を見つめながら言った。ちらりと清潔な歯が4本、口の間からのぞく。
他の動物達も私の答えを待っているようで、すごく見ている。
私は少し緊張しながら一度軽く深呼吸をして、口をひらいた。
「わ、私はマリ・テリーネ。13歳の・・・人間よ。な、なぜか落ちて、それで、ここに。・・・・・・私も、どうなってるか、分か・・・分かんない。」
私がしどろもどろに言うと黒い影が動き、それは私の前へでると、にやりと笑んだ。
「ふぅん、そうなの。」
以外にも甘い声だった。
その甘い声の持ち主は大きく羽根を広げ、もう一度にやりと笑んだのだ。
「私・・・カラスよ。見ての通り。ねっ?・・・じゃあえっと、テリーヌちゃん?落ちてきてしまったものはしょうがないし、えーと・・・何かつまみながら私のグチでも聞いてくれるかしら?」
「・・・・・・え?愚痴?」
「そうよ。ね、ウサギさん!テリーヌちゃん借りてもいいわよね!」
「あ、ああ・・・ま、マドレーヌさんがそう言う・・・なら。」
ウサギが耳を大きく震わせながら、苦笑した。
それから皆にむきなおり、”さあ、騒ごう!”と一声かけてから、チラリとこっちに目をやった。
そして、皆が飲み、食べ始めると、背を向け、やはりまた耳を大きく震わせた。
「ウサギさん!今はマドレーヌじゃなくってよ。今は、ペパーミント、だから!」
一度背を向けていたウサギだったが、もう一度こっちを見て苦笑いをした。
私の隣にいたカラスのペパーミントは満足そうに目を細めた。
第3話 ウサギ
「え、もう一度、言って?」
「だからね、テリーヌちゃん。彼、イイと思わない?」
「・・・・・・彼って、あの・・・カバ・・・・・・?」
「当ったり前よーぉ。超イケてるわよねっ。」
「・・・・はあ。」
私、いつまでこのペパーミントの”ノロケ”を聞かなくちゃいけないの?さっきはカラスの王君・・・だっけ。彼氏の王君の”ノロケ”をし、次は目移りして、汚い食い方をしているカバ・・・。王君もそうだったけど、このカバはもっとそう。
とにかく、キモイの。世間的にいう”ブサイク。”
時々つけるポーズにナルシスト感が漂っててね・・・・。
それから動物独特の匂いがして、すごく臭いんだ。
「何よお。テリーヌちゃん、全然楽しくなさそうねえ。」
だって、ここって汚い上に臭いんですもの。
「あ、何か食べ物とってこようか。」
「結構です。」
「まあまあそう言わず、ちょっと行ってきます。」
「あっ・・・。」
とめる間もなく、ペパーミントはさっそうと波にもまれていった。
あの虫を食べろというのか。あの虫を・・・。
その時、目の端のあのウサギがうつった。・・・笑ってる。
カバと話して、笑ってるし。何話してんのかな。気になる。
うーん、でも、あのカバとならぶと、さすがウサギも美男ってかんじがする。多分ここの中では一番かっこいいんじゃないかあ。ペパーミントも、カバはやめてウサギにすればいいのに。
もんもんと考えていると、ウサギと目が合った。慌ててそらす。
でも、ウサギの歩く音がした。毛のパサパサ、フワフワ、音がまじり、それが床をうちならす。
来てる。せまって、来てる。
そして・・・・・・。
「テリーヌ!マリ・テリーヌちゃん!」
肩に手をおかれた。体は少し動き、心ははねた。
「あのテリーヌちゃんだったかァ。大きくなったなあ。僕のこと、覚えてる?覚えてないよねえ、そりゃそうか。」
「え・・・?あの・・・何・・・?」
「ン?んー・・・。いや、特に、別に何もないんだけど・・・。あ、そういえば落ちたんだったね。うーん、どうしようか。」
「ま、まあおかげ様で・・・?」
「ウン。」
ウサギはにこにこ笑いながら私の肩を繰り返したたいた。
それから、ヒゲを震わせる。
「テリーヌちゃん、家に帰りたいよね?」
「ええ!勿論!だってここは臭くて・・・あ、ごめんなさい。」
「いいよ別に。じゃあ、”もじ”を書いてもらわないとね。」
「文字?」
私、首を少しひねる。ウサギは懐から、1冊の黄色がかったノートをとりだした。
「これにね、この次どうなるか書いて。自分はどうなってほしいか・・・。」
「どうやって書いてもいいの?」
「うん。好きなように、ね。」
「えーと、じゃあ・・・・・・。」
ウサギからノートとペンを受け取ると、さらさらと書き始めた。
”マリ・ティーネはここから出られる。”
滑らかな文字を書き、ウサギに渡す。
「これで良い?」
声を大きくして、言う。ウサギはノートとにらめっこしてから顔を上げ、笑んだ。
「ごめんね。僕、”もじ”読めない。」
「・・・よめないのぉ?」
「ウン。だから、読んで。」
「・・・最初からそう言えばいいのに・・・。」
私、ウサギを見上げる。ウサギは、赤い目をちらちらと毛の間からのぞかせながら私を見ていた。小刻みに耳とヒゲが震えている。
私はため息を1つつき、言葉にした。
「・・・・あのね、”マリ・ティーネはここから出られる”って書いたの。だから、これで良い?って・・・・。」
「ああ、何だ、そう書いたの。それじゃダメ。時刻・・・っていうか、何分くらいで出られるとか、書かなきゃ。そんなんじゃ、”死んでから出る”っていうのも有り得るでしょう。」
「ふうん。」
もう一度ペンをもち、書き足す。そして、ウサギにノートを見せながら
「”マリ・ティーネは10分後にここから出られる。”」
と言った。
「・・・なんで10分後?今からでも・・・。」
「すっごく忘れてたけど、ペパーミントが食べ物をとりにいってくれてたの。だから、1つでも受け取っとかなきゃ悪いと思って。」
「そう・・・それは、まあ頑張って。うん。あ、1つ言っとく。そのノート通り、テリーヌちゃんは出られると思う、よ。」
「ありがとう。」
私が微笑むと、ウサギは右回り・・・去っていった。
すると、肩に重い衝撃。
「お待たせーっ。じゃんっ美味しいモノいっぱいとっちゃった。」
「・・・ありがと・・う・・・?」
ペパーミントが出した皿の上には、セミ・ムカデ・クモ・アリなんかがのっていた。
実際目の当たりにすると気持ち悪くて食べれない・・・。
「私・・・いいよ、1人で食べて。」
「なんだよう、そっけないなあ。・・・あれ?テリーヌちゃん、体が・・・。」
「・・・え?あ、消えてる。」
あれ?もう10分?なんて私が思っていると、ペパーミントは私の手をゆっくり包みこみ、一言言った。
「行く・・・アナタへ幸運を・・・・。」
「えっちょっ。」
私の声はとぎれ、空白の世界に空しく響いた。体は光に包まれ、収縮されたような感覚がして・・・。
最終話 絵本
気がつくと、私はクローゼットの中にいた。
「テリーヌッ!」
大きくクローゼットがひらき、お母さんが前に立ちはだかった。
「夕食の時間ですっ。はやく出てらっしゃい!ホラッ!」
私に手をさしだし、無理にだそうとする。
その時、足の太ももあたりに硬いものがあたった。
「・・・これって、”落ちた私、いたウサギ”・・・だわ。」
「え?何、テリーヌ。見つけたの?」
手に取った、ソレは古ぼけた、小さいころ愛読していた絵本だった。
その本は、ある少女が落ちた先は動物がたくさんいて、その中でも特にウサギが気になるんだ。そしてそのウサギがある日、1冊のノートを少女に渡して。帰るか、帰らないか。
聞かれるんだけど、少女は結局帰ってしまうの。
少女は、ウサギの事はすっかり忘れて遊びまわるんだけど、ウサギはその少女の事が忘れられなくて。
・・・そういう、理不尽な話。
このウサギが可哀そうで可哀そうで、何度も読んでは胸を痛くしたっけな。
絵本にしては暗い話だったけど、この話が一番好きだった・・・。
「・・・テリーヌ?もう良い?夕食なんだけど。」
「うん、もう、いい。」
立ち上がる。
ほんの数時間ほどの、あっちの世界。私が、あの”少女”。
だったら、私が話を変えてしまうこともできるんじゃないの?できるんじゃ・・・。
私は唇を噛み、大きく目を開いた。
あっちの世界・・・今度、いつ行こうかしら?・・・また、ウサギにあえるかな・・・。
短編を一度かいてみようか、と思い、大変でしたが書きました。ウサギは好きな動物なのでだしました。いつか、もっとドラマな小説にならないかなあ。
読んでくれた方は有難うございました。よければこれから、アドバイスでも書いてください^^*