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7話「レイモンドの後悔」レイモンド視点・ざまぁ回


フィルタ侯爵家のアリシアが苦手だった。女のくせに俺より勉強が出来るし、格下の貴族の分際で俺に説教を垂れる。


美人だがいつもすました顔をしていて面白みがない。  


 婚約者なのだからキスぐらいさせてくれてもいいのに、指一本触れさせてくれない。


そんなとき現れたのがミランダだった。ミランダはランド男爵家の令嬢で、身分は低いが、己の分をわきまえていて男を立てることを知っていた。


ミランダは俺がやることを「すごーい!」と言って褒めてくれた。


美人だし、愛嬌があるし、胸はでかいし、キスをさせてくれるし最高だった。


美人だから連れて歩いていると他の男どもに羨ましがられて気分がいい、ミランダは愛人にするにはもってこいの女だった。


ミランダは教養がないし、礼儀作法がなってないし、身分が低いから正妻には出来ない。ミランダだってそのへんはわきまえているはずだ。


俺はアリシアへの嫌がらせを思いついた。学園であいつに婚約破棄を言い渡す。


成績優秀、品行方正で通っているアリシアを、嫉妬に狂いミランダをいじめた悪女に仕立てる。


そしてアリシアの前でミランダといちゃつく。


見下され、罵られ、蔑まれ、女としてのプライドを粉々に打ち砕かれたら、能面のように表情のないあいつでも顔色を変えるだろう。


泣きべそをかき「婚約を破棄するのだけは止めてください」と俺にすがりつくアリシアが見たかった。


アリシアは俺に惚れている、婚約は家同士を結ぶもの。学園で「婚約を破棄する」と叫んだぐらいで成立するものではない。


この婚約はアリシアが俺に一目惚れし、フィルタ侯爵が父に頭を下げて結ばれた縁組だ。


俺がアリシアを侮辱しても、格下の侯爵家から婚約破棄を切り出す事は出来ない。


俺は格下の侯爵家のアリシアを貰ってやる立場なのだから、何をしても許される。


皆の前で婚約破棄すると言われても、俺が愛人といちゃついていても、アリシアは俺の足にすがり付き、泣いて許しを乞うしかないのだ。


なんて爽快な計画なのだろう。


すかしているアリシアを泣かせてやる! そう思って食堂で婚約破棄を口にしたのに……。


「婚約破棄」という言葉を聞いても、アリシアは眉一つ動かさなかった。


そして意味の分からないことを口にした。


アリシアと俺の婚約は昨日付けで破棄されている?


女王陛下がアリシアに影を貸した?


影が不貞を働いた証拠も、その他の悪事の証拠も集めた?


婚約破棄の話し合いの場所には女王陛下もいらした?


そもそも俺とアリシアの婚約は父がフィルタ侯爵に頭を下げて成立したもの?


イエーガー公爵家の領地が天候不順で不作?


父が事業に失敗しイエーガー公爵家には多額の借金がある?


アリシアが公爵家の嫁に来るのではなく、俺が侯爵家の婿に入る?


なんだよそれ……そんなの全然知らない。


 アリシアとの顔合わせの日に父が何か話していたけど、難しくて上の空だった。


フィルタ侯爵家から借金を耳を揃えて返すように迫られた?


婚約を破棄され多額の慰謝料を請求された?


イエーガー公爵家の財産をほとんど売らないと金を払えない?


母上は俺と父上を捨てて離婚届を置いて実家に帰った?


俺は隣国の鉱山行き??


俺の稼いだ金は父が立て替えたアリシアへの慰謝料に消える??


そんな話聞いてない!


助けてください! 父上!


鉱山なんか行きたくない!


悪かったアリシア! 酷いことをして済まなかった!


謝るから婚約者に戻してくれ!!


馬車に揺られながら、俺は激しい後悔に襲われていた。







レイモンドは隣国の鉱山に送られ、劣悪な環境で働かされ肺を患って死んだ。




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