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29話「国交の断絶」


「エミリー王女は兵士の子供を身ごもっていた」


「なんということを……!」


一国の王女が結婚前に男と契るなんて……しかも相手は平民。


「国王とエミリー王女は『エミリーのお腹の子を僕の子として発表し、エミリーと結婚してほしい! ルシャード王子がエミリーを大切にしないから、エミリーは寂しくて他の男に走ったのだ! だから責任をとれ!』と無茶苦茶な理由で責任を取らせようと迫ってきた! 厚顔無恥にも程がある!!」


ルシャード様が拳を強く握り、テーブルを叩きました。


私もお腹の底からむかむかしたものがこみ上げて来ました。

他の男と通じておきながら結婚してほしい、お腹の子をルシャード様の子供にしてほしいなんて……どこまで恥知らずな方たちなのでしょう!


「魔石の輸出を条件に他国と有利な交渉を結んできたから、自分たちの意見が通って当たり前だと思い上がっているのね。魔石を掘り尽くして自国が風前の灯だということを本当の意味で分かっていないのね」


女王陛下の言葉には怒りが(にじ)んでいた。当然です、ルシャード様を虚仮(こけ)にされたのですから!


「もちろんそんな要求突っぱねたよ。そうしたら今度は、要求を呑まないなら僕がエミリー王女に懸想して襲ったと噂を流す、証拠は既に捏造してある、マイスター王国にも慰謝料を請求すると脅してきた」


「なんて理不尽な要求なの!」


気がついたら机を叩き、立ち上がっていた。


「すみません、はしたない真似を」


皆からの視線に気づき椅子に座る。


「気にすることありませんよ、アリシア。筋の通らない要求を突きつけられたのですから怒って当然です」


女王陛下が穏やかに微笑む。


「ありがとうアリシア、僕のために怒ってくれて」


ルシャード様が私の手を握る。


「ルシャード様」


ルシャード様と手を取り合い数秒見つめ合っていました。父からの射るような視線に気づき、慌てて手を離す。


「僕は国王と王女の言葉を魔石に記録し、時間差でスコルピオーン王国中に流した。衛兵が血相を変えて玉座の間にやってきたときには、国王と王女の会話は国中の民の知る所となっていた」


「流石ですルシャード様、その話を聞いて溜飲が下がりました」


スコルピオーン王国の国王と王女の企てが失敗したと分かり、ほっと息をつく。


「国王は第一王女がだめなら第二王女のローザを……としつこく勧めてきたよ。第二王女はまだ七歳。しかも第一王女を小さくしたような性格で男に媚を売ることしか取り柄がない。あの国にはろくな王族がいなかった」


わずか七歳で男性に媚を売ってるなんて……なんてはしたない。ルシャード様のおっしゃるとおり、スコルピオーン王国の王族にはまともな方がいないようですね。


「僕は魔石を通じ母上にスコルピオーン王国で起きたことを報告、その足で急いで帰国した」


「私はルシャードから報告を受け、スコルピオーン王国で起きたことを上位貴族に知らせました。そしてスコルピオーン王国で商売をやっている者は速やかに引き上げるように命じたのです。スコルピオーン王国に留学している貴族の中で優秀な者はルシャードと共に帰国させました。


逆にマイスター王国内の無能な貴族はスコルピオーン王国に送りました」


無能な貴族……ザックス男爵家、トーマ男爵家、コッホ男爵家、ヴァイル準男爵家のことかしら? 彼らは爵位を返上しているので元貴族ですが。


「ルシャードが魔石に記録したことを国民に見せ、スコルピオーン王国との国交を断絶しても良い頃合いね」  




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