表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/31

28話「スコルピオーン王国の王族」

「僕がスコルピオーン王国に二年間留学していたのは、アリシアが他の男と婚約したことにショックを受けたのもありますが、調べたいことがあったからです」


「調べたいことですか?」


「スコルピオーン王国の魔石の埋蔵量について調べてきた。スコルピオーン王国の国王は魔石の埋蔵鉱量は充分にあると説明しているが、毎年輸出される魔石の量が減っていたので気になってね」


 スコルピオーン王国の主な輸出品は魔石。

 魔石には毒水を浄化する力があります。

 庶民の使う井戸水の浄化から、王族の飲料水の浄化まで、その目的は多岐に渡っています。

 スコルピオーン王国の先代の国王の代には、魔石の輸出量が世界一を誇り、大変羽振りが良かったそうです。

 採掘した魔石は二割が採掘者のものになるので、一攫千金を夢見て大勢の人たちが彼の国に渡りました。

 採掘する途中で落盤などの事故にあってなくなる人もいます。

 運良く魔石を掘り当てても、手に入れた金をお酒やギャンブルで使ってしまい、前よりも貧しくなった人などもいるようです。

 魔石の採掘の為にスコルピオーン王国に渡るのは、屈強な男や、理由があってまともな職につけない荒くれ者などです。

 なので庶民の暮らす街は、あまり治安がいいとは言えないようです。


「調査した結果、予想通りの結果が出た。魔石の埋蔵量は底を尽きかけている。あと数年で魔石を掘り尽くし、あの国は終わる」


 今は採掘に来ている人たちで町の酒場などは盛況ですが、彼らが去った後は、随分と寂れるでしょうね。

 スコルピオーン王国には魔石以外に、お金になる輸出品がありませんし、観光名所になるような遺跡もありません。

 卓越した技術の職人がいるわけでもありません。

 例えばダイヤモンドのカッティングで有名な街には、遠くからでも人が集まります。

 良い鉄が取れ、腕のいい職人がたくさんいて、切れ味のいい刃物が作れる街には、同じようにたくさんの人が訪れています。

 スコルピオーン王国にもそういうものがあるといいんですけど。


ルシャード様の言葉を聞いてギャロン殿下の顔色が変わりました、青い顔がより青ざめ紫に近くなっています。


「そんな国にルシャードを送り縁戚になろうとしていた方がいるなんて、考えが浅いにも程がありますわ」


女王陛下がギャロン殿下を見て冷たく言い放つ。


ギャロン殿下は父と同じタイプの人間です、人柄は好いのですが情に脆く押しに弱い。


おそらくスコルピオーン王国の国王に「ルシャード王子を我が国に留学させてくれ!」と泣いて頼まれたのでしょう。


「スコルピオーン王国の第一王女エミリーはとんだあばずれでした」


第一王女のエミリー様は十八歳、私と殿下と同じ年。


スコルピオーン王国の国王はエミリー王女とルシャード様を婚約させたくて、自国にルシャード様を留学させたのでしょう。


「エミリー王女は留学当初からやたら僕に馴れ馴れしく接してきました。婚約者でも恋人でもないのにベタベタと体に触れてきて」


その光景を想像し、胸の奥がもやもやしました。これが嫉妬というものなのですね。


「相手の策略は分かっていました。スコルピオーン王国の第一王女のエミリーと、マイスター国の第二王子の僕を結婚させ、魔石が尽きたとき我が国に支援させる」


「見え見えの手ね、子供でも分かるわ」


女王陛下がギャロン殿下をちらりと見る、女王陛下に睨まれたギャロン殿下は虎に睨まれたネズミのように萎縮していた。


女王陛下が怒るのも無理もありません。ギャロン殿下はスコルピオーン王国の策略に気づかず、スコルピオーン王国にルシャード様を留学させることを、独断で決めてしまわれたのですから。


「僕も敵の魂胆に気づいていましたから、エミリー王女に言い寄られても無視し、変な誤解を招かないように常に護衛を側に起き、決して一人にならないようにしていました」


国の行く末がかかった婚約ですから、エミリー王女もなりふり構っていられなかったのでしょう。


「僕に相手にされないことに腹を立てたのか、当てつけにエミリー王女は見目の良い兵士と付き合い始めました。僕はエミリー王女に一ミリも興味がなかったので、当てつけにはならなかったのですが、エミリー王女は兵士との関係にのめり込んでしまったようで……二人の関係は取り返しのつかないところまでいってしまった」


「取り返しのつかないところ……?」


「エミリー王女は兵士の子供を身ごもっていた」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ