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24話「会心の一撃」微ざまぁ回


「そこまでだ二人とも! 伯父(叔父)と姪の関係であったとしても距離が近い!」


父が私の手を握っていたコアト伯父様、ベン叔父様の手を離させた。


「お父様も助けて下さりありがとうございました」


「愛しい娘を助けるのは当たり前だろ、むしろ気づくのが遅すぎたくらいだよ」


父が私の手を握り眉尻を下げ悲しげな顔をした。


「私はまだ許していませんよフィルタ侯爵。だいたいあなたがイエーガー公爵の泣き落としに負け、レイモンドという品性下劣な男とアリシアを婚約させるからこんなことになったのです」


女王陛下が父の手を扇子で叩いた。父を見据える女王陛下の目は氷のように冷たかった。


「申し訳ありません、全ては私の浅はかな行動が招いたことです」


父が女王陛下に頭を下げた。


「その件に関しては私も女王陛下に同感です。レイモンドなどという顔しか取り柄のないゴミと天使のように可愛いアリシアを婚約させたブロックに、激しい憤りを感じている」


「私もイエーガー公爵家などという家柄しか取り柄のないクズ一家のバカ息子をアリシアの婿に選んだ兄上の軽率な行動に、腸が煮えくり返っております」


コアト伯父様とベン叔父様がお父様をギロリと睨む。二人から尋常でない量の怒りのオーラが溢れている。


父は「申し訳ありません」と呟き、泣きそうな顔でうなだれた。


「お父様、最初のダンスを私と踊って下さい」


このままでは父が哀れなので、この場から父を逃してあげることにした。


お父様が私の手を握りダンスを始める。


「助かったよアリシア」


ダンスをしながら父が言った。その顔は安堵に満ちていた。


「私もレイモンドとの婚約については思うところがありますわ」


助かったと思ったら、私にまで責められ父はまた泣きそうな顔をした。


「お前まで私を責めるのか?」


「次は私が婚約者を決めます、レイモンドの時のように私の意思を無視し勝手に婚約者を決めたらフィルタ侯爵家と縁を切り、シュティーア公爵家かクレープス公爵家の養子になりますわ」


コアト伯父様とベン叔父様からは婚約破棄のあと「人の良いだけのダメ親父は捨てて我が家に養子に来なさい」とお誘いを受けている。


私と縁を切られるとは思っていなかったのか、父の顔色が真っ青に染まる。


父のことは嫌いではない。だがレイモンド様との婚約期間にイエーガー公爵家の人間にされたことを思うと……。


レイモンド様は浮気者で怠け者で礼儀知らずで金遣いの荒いくず。


レイモンド様の母のロビサ様は、自分にとって都合のいいことしか信じず、ネチネチと嫌味を言ってマウントを取ってくる陰険で根性の曲がった女。その上頭が悪く礼儀を知らない。


レイモンド様の父のイエーガー公爵は、父に土下座までして私とレイモンドの婚約を取り決めた。フィルタ侯爵家から多額の融資を受けておきながら、私がレイモンドやロビサ様から酷い仕打ちをされていると訴えても見て見ぬふり。土下座をすれば何でも許されると思ってる甘ったれのろくでなし。


こんな人たちと家族になるところだったのだと思うとゾッとします。


「アリシアがシュティーア公爵家かクレープス公爵家の養子になる……!? まさか冗談だろ!?」


父がすがるような目で見てくる。そんな目で見つめられても絆されませんよ。


「いいえ本当です。今度私に無断でどこかの家と婚約を結んだら私はフィルタ侯爵家を出ます」


父の頭に目に見えない一トン岩が落ちてきた。父の顔に【会心の一撃、メンタルに一万ダメージを受けた】と書いてあった。青かった顔は真っ白に変わっていた。


「分かった……勝手なことは今後二度としない。約束する」


父は力なく頷いた。


父とのダンスのあとはコアト伯父様と踊り、そのあとベン叔父様と踊った。


二人から「父親と縁を切りたくなったらいつでも言いなさい」「無礼を働く貴族がいたらすぐに報告するんだよ」と言われた。お二人とも過保護すぎです。ですが父よりも頼りになるのは事実です。




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