19話「見破られた嘘」
「では最後に女王である私を罵倒した罪を裁きます。その前に一つ確認したいのですが、ザックス伯爵、トーマ子爵、コッホ子爵、ヴァイル男爵、前に出なさい」
女王陛下の命令に従い四人が数歩前に出た。ザックス伯爵はロビサ様の実の兄だ。
「四人に尋ねます、ザックス伯爵令嬢、トーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人がアリシアを突き飛ばし、アリシアを罵倒し、アリシアのドレスを破り宝石を奪う話をしていたとき、あなた方はどこにおりましたか?」
各家の当主が顔を見合わせる。何やら思案しているようだ。
「私はその時、飲み物を取りに行っておりました。妹がフィルタ侯爵令嬢に何をしたかは存じません」
ザックス伯爵が答えた。
「私はテラスにおりましたので、会場内で起きたことは存じ上げません」
トーマ子爵が答えた。
「私は廊下におりました。妻がアリシア嬢にしたことは、女王陛下が会場に入られたあとで知りました」
コッホ子爵が答えた。
「私は壁際で知り合いと話しておりましたので、妻の行動は把握しておりません」
ヴァイル男爵が答えた。
「四人とも今の言葉に間違いはありませんね?」
「「「「はい、間違いございません」」」」
四人の男性が声を揃えて答えた。
「そうですか、影報告なさい」
ジュストコールに身を包んだ男性が女王陛下の前に進み出る。
「はい女王陛下、ザックス伯爵とトーマ子爵とコッホ子爵とヴァイル男爵の四人は、ザックス伯爵令嬢とトーマ子爵夫人とコッホ子爵夫人とヴァイル男爵夫人の側におりました」
「「「「…………っ!」」」」
ザックス伯爵、トーマ子爵、コッホ子爵、ヴァイル男爵が息を呑んだ。自分たちが影に見張られているとは思っていなかったようだ。
「四人は会話が聞こえる距離にいて、ザックス伯爵令嬢がアリシア様を突き飛ばし、ザックス伯爵令嬢とトーマ子爵夫人とコッホ子爵夫人とヴァイル男爵夫人がアリシア様を罵倒し、女王陛下を侮辱する発言をするのを、にやにやしながら見ておりました」
ザックス伯爵、トーマ子爵、コッホ子爵、ヴァイル男爵の顔が一気に青ざめた。
「妹や妻が侯爵家の令嬢を罵倒し、女王である私を侮辱する発言をしているのを知りながら、止めもせず笑いながら眺めていた……これは由々しき事態ですね」
「女王陛下、それは……!」
「発言を許していませんよ、ザックス伯爵」
女王陛下にきりっと睨まれて、ザックス伯爵は口を閉ざした。
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