部屋と寝顔
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適性検査を終えた私達は、一先ず自分たちの泊まる部屋へと、案内してもらうこととなった。
先程まで共にいた女魔法使いは、王に結果を報告するとか何とかいっていたので、当然別行動である。
生徒の何人かは、彼女とあの短期間で親しくなったようだが、やはり寝床の方が大事である。
何とも煌びやかな場内を、生徒が「ほへー」と東京に上京してきた田舎の人のような声を出す。物珍しいのは分かるが、その反応は少しみっともない。
この状況で少し興奮してしまうのも、分からなくは無いが、冷静になるように努めるのが「大人」というやつである。
すでに彼らは高校生。あと数年で社会に出る者もいるかもしれない。そんな時、トラブルに遭ったらどうする。一人だけギャーギャー喚き散らしても、鬱陶しいだけである。
まぁ、その辺のことは彼女に任せておけばいいだろう。私には、この手の話は無理だ。
無駄な思考をしているうちに、部屋へと着いた。流石に部屋数が足りなかったのか、二人部屋である。
しかし、彼女と同じ部屋にするのはどうかと思う。一応、私達は男女であるし、その前に教師であり、大人である。これでは子供に示しがつかないでは無いか、そう思う自分もいるし、もし生徒が私と同室となっても、それはそれで問題となるであろうと、そういう自分もいる。
ドアを開ける。
そこにあるのは異常な存在感を放つベッド。その数一つ。そう一つなのである。
大事なことなので二回言わせてもらったが、ここは二人部屋であり、共に住むのは彼女。そしてベッドは一つ。少しだけ、何か作為めいたものを感じ取れなくは無い、がもしそうだったとしても特にメリットはないはずだ。
例え何かあるとしても、それもまた運命。振り回されるのは、些かシャクではあるが、まだまだ力が足りない。
溜息を吐き、部屋の中に入る。グルリと見渡しても、ただただ無駄に金を掛けただけの部屋にしか見えてこない。
熟語で表すならば「豪華絢爛」この一言に尽きる。
人が一人、寝れるほどのソファーに、パッと見てふかふかの椅子。壁には何かの絵が飾ってある。そして、天蓋付きのベッド。
これらを前に間抜けな面を晒したのも、私の隣にいる彼女だけではあるまい。
おもむろにベッドのそばへ行き、倒れ込む。布団が柔らかく私の体を包み込み、眠りへと誘う。
彼女はソファーで読書でもするようだ。
しかし、まだ寝るには時間が早い。暇潰し、として何か考え事でも……
私は日本の侘び寂び、というものを気に入っている。
最低限の質素で、寂しい住まい。何気ない日常に潜むものに、何らかの価値を見つける。
何と面白い考え方なのだろうか。
殆どの国では、物というのは豪華で煌びやかであってなんぼ、そういう考え方をしていると、私は思う。
だからこそ、日本という国は面白い。
豪華なものを好む者もいれば、質素なものを好む者もいる。こうも正反対に、考えが分かれるのだから。
その話は一旦置いておくとしよう。
とにかく今一番行いたい事、それは睡眠から変わっていた。
「風呂、入りたい」
布団に顔を押し付けているため、くぐもった声が少し響いた。
別に湯船がなくてもいい。水を浴びたいのだ。少し慣れない事をして疲れてしまった。
メイドを呼んで聞いてみる事にしよう。部屋に案内される時に渡された、ハンドベルをチリンと鳴らす。
鳴らせばすぐにメイドが部屋に行くという事だったが、流石にすぐは来れないだろう。……そうだ、自分の足で行こう。呼び出しておいて何だが、城の構造くらいは知っておきたい。
思い立ったが吉日、ベッドから降り、彼女に声をかける。
「ちょっと、城の構造調べてくる。メイドさんには、申し訳ないと言っておいてくれ」
……返事がない。ドアの前にある足を、彼女の座るソファーに向ける。しかし、このカーペットはどうにかならないのだろうか、2センチも沈むせいで、歩くのが少し難しい。
彼女のもとへ向かう。
「寝ているのか……」
私の前にあどけない寝顔を晒していた。
無用心だ。いつ襲われても文句は言えない状況だぞ、コレは。私にその気はさらさら無いが。
疲れているのだろう。そのまま寝かせておこう。
床にポトリと落ちている、本を近くのテーブルの上に乗せておく。上着を脱いで、彼女にかけた。
もう一度、穏やかな表情をしている彼女に目を向ける。
「おやすみ」
そう言って、私をドアを開け外へ出た。
全く話が進まなかった。やはり、プロットというものを作成した方がいいのだろうか。行き当たりばったりなので、どうも文章が締まらない。
次回は、おそらく土曜日に更新する。