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-1 日常

≪2032年1月15日≫




 真昼の大きな公園、『東第3公園』には2つの影があった


それはお面をかぶった人間が無様(ぶざま)に這いずりまわる(ざま)を、黒と金が入り混じった鈍い色の髪が目立つ女がそれを見下ろしているという構図だ






*****





肉まんどこいったのおぉぉぁぁぁぁぁぁあああああ!!??


僕の肉まん!! 僕の肉まん? 僕の肉まぁぁぁああん!!!


くそ! 


絶対ここで落したんだ! 


昨日の乱闘の際どっかに落としたんだ! 


きっと!!


きっとなんだからね!?


1時間くらい探してんのになんで見つかんないんだろ!? 


しかもなんでこの公園無駄にでかくて草ボウボウなのさ? 


誰か草むしってよ!! 


あぁジャングルジム邪魔!!


今、僕は昨日ちょっとした成り行きで参加した乱闘の際に落としたであろう肉まんを探している。


だがこれが全く見つからない…


それに、僕の後ろから気配がする


誰だか知らないけどめっちゃ僕の事見てるな


暇だったら話しかけてきたらいいのに


あっ、もしかして喋れないのかな?


「…さっきから何やってんだよおめぇ」


そんなこと考えてたら喋りかけて来た


「ぎゃぁぁしゃべったぁぁぁあああ!?」


とりあえず叫んだ


「うぉおぉおぅ!?」


うわ何この人自分から声掛けて来たのに驚いてる


「ちょっとなんなんですかいきなり変な声出して?」


若干引きながら声をかけてきた人を見てみる


その人は女性で、髪染めを失敗したのか黒と金の混じった髪を腰まで伸ばしていた


顔の造形は結構いい方なんだけど、厳しさを感じる美人って感じかな?


少しツリ目で、背は僕より5cmぐらい高いね


胸は…まぁ、うん。


「テメェがいきなり大きな声を出すからだぅおうぁ!?」


僕の顔見た瞬間この女性また変な声だしたよ


にしても、女性の驚いた声が『ぅおうぁ!!』ってどうなのかな…?


「おめぇ何だそのお面は!?」


? なんで怖がるんだ? 今日のお面はプリティだぞ?


「なんだって言われても…『カマキリ』のお面だよ?」


「そうゆうこと聞いてんじゃねーよ!! 化け物かと思ったわ!! そもそもなんでそんなお面してんだって聞いてんだよこっちは!」


テンション高いなぁこの人


「え~と、怪しい人にはお面のこと教えません」


「草むらで変な動きで這いずりまわってるお面野郎よりは怪しかねぇわ!!」


それはごもっともでございます


ただしこれは肉まんのためなんだ!


「僕には、こうしなきゃいけない理由があるんだ!!」


「そんなことしなきゃならない理由って何だ!?」




~説明中~




「…お前バカだろ?」


ジャングルジムに座り、丁寧に説明して相手から貰った感想がこれかぁ…


「え~、なんなの君。こちとら真面目に説明したのにさぁ」


「肉まんのこともそうだけど、お前みたいなチビが男9人に無傷で勝てる訳ねぇだろ。もちっとましな嘘つけ」


「これでも19歳です~」


「だから嘘つくなって」


クソ、全部ほんとなのにこの女性全然信じてくれない…


「じゃ、肉まん探すか」


女性は座っていたジャングルジムから飛び降り言った


「? えっ、探すの手伝ってくれるの?」


「あぁ、暇だからな」


嬉しいこと言ってくれるじゃん


「ありがとね」


「は? あっ、いやその」


ん? なんかおどおどし始めたぞ…


「どうし」


「別にお礼なんか言わなくていい。一緒に探すのは俺が暇だからだ。暇じゃなかったらお前みたいな怪しい変態の手伝いなんかしないんだからな!」


…え? 何でこのタイミングでツンデレ?


「…とりあえず、僕は変態ではない」


「いやいや、あのままだったらお前の世間体ご臨終だからな?」


「ほう。ならそんな奴を手伝う君はさてはいい奴だな?」


「い、いい奴とかそんなんじゃねぇって! ほらっ! そんなんいいからさっさと探すぞ!!」


女性は照れを隠すように僕から離れて肉まんを探し始めた…


僕もそれに続くように地面に這いだす


「…だから、なんでお前は地面を這うんだよ!?」




*****





「あったぁぁぁぁあああ!!!」


「マジでかぁぁぁぁあああ!!?」


あれから女性と無駄話をしながら2~3時間探してたら肉まんが見つかった


いやぁにしても広い


この公園無駄に広すぎる


こんなかかるとは思わなかったよ


「ありがとね…えーと…不良?さん!!」


「不良ってなんだ!?」


「いやそういや名前知らないなぁって」


「確かに名前は言ってなかったが、なんでそれで俺が不良になるんだ!?」


「えっと、…見た目?」


染めたっぽい金髪とツリ目


あと口が悪い


…うん、不良だ


「…はぁ~、やっぱりこの髪のせいか~」


女性は黒と金の混じった前髪をいじる


「どしたの? なんか憂鬱そうだけど」


「この髪、染めたように見えるか?」


「うん」


即答した


「…地毛だよ」


「え!? 本当?」


いや、でも所々黒まじってるよ?


「俺はハーフなんだ。父さんが金髪で、母が黒髪なんだよ。そんで、中途半端に父さんの金髪が遺伝したからこんな髪色なんだよ」


「へぇそんなことが…なるほどね~」


いや、でも…ねぇ?


「こんな髪のせいで俺から人は離れていくから友達できねぇし、どうしたらいいんだろうなぁ…。やっぱ黒に染めるしかねぇかなぁ…」


「さびしいの?」


「あぁ?」 


女性がどすを利かせた声で返事をしながらこちらを見る


多分そういう態度も皆が怖がる原因だと思う


「…いや別に、さびしくはねぇーがよ。1人って言うのがなぁ」


女性は僕をそのまま見ていたけど、ふと空を見て呟くように言う


「うーん…。それなら別にそのままでいいんじゃない?」


「ハァ? 何言ってんだ?」


「だって1人でも別にさびしくないんでしょ?」


「あぁ」


「じゃぁ別にいいやん」


「だから何の話しだ?」


「別に1人だからってダメって訳でもないでしょ?」


「あん?」


「必ず人と関係を持たなくてはならないって法律なんてないでしょ? だったら別に1人でもいいやん。そりゃ人間関係とかもあると思うけど、無理に自分の個性を変えたりなくしたりして人と関わろうとするのって、なんかおかしくない?」


「あー…。まぁ確かに」


「人の目を気にするのはいいけどさ。それで自分が無理するのも、嫌なのに自分を変えるのもなんか嫌じゃない?」


「嫌だな」


「じゃぁ君はそのままでいいんだよ。ていうか、心のどっかでそう思ってたんでしょ? だからその髪、まだ染めてないんでしょ?」


「…ハハ、なんかいままで友達って作った方がいいのかなって悩んでたおれがバカらしく思えるぜ。確かにおれは親からもらった髪色を染めてまでして友達がほしいとはおもわねぇわ」


「でしょ?」


「あぁ、・・・ありがとな。おまえのおかげで髪染めなくてすみそうだ」


そうして女性はほほ笑んだ


なかなか魅力的な笑顔だ


「どういたしまして。…さて、肉まんも見つかったし僕は帰るね」


あぁ冷めてる


この肉まん暖かくない…


「あ~、ちょっとまて」


「ん? なに?」


女性が目を泳がす


クロールしてるんじゃないかってくらい目が泳いでる


「あ~その、なんだ? 俺は無理してまで友達はいらないとは思うんだが、全くいらねぇって訳じゃないんだよ。だから…」



……


………?


「? だから? だから何? 何でもない? 帰るよ?」


「俺の友達になってくれねぇか!!」


うるさっ!!?


「いきなり叫ぶなよ!」


「え、あっ、す、すまねぇ・・・」


全く…


いきなり叫んだりしおらしくなったり忙しい人だな~


「別にいいよ。僕の親友には君のような金髪じゃなくて一部以外白髪の親友がいるし」


「…どうゆうことだ?」


「世界は広いってこと」


僕は何を言っているんだろうか?


「まぁ、いいか。それより友達になってくれんのか?」


「君みたいなきれいな子に友達になってって言われればなるに決まってるでしょが」


「…は? !? ばっかかよお前っ!!」


「またバカって言った!? ほんと口悪いよね君!? 顔赤くしてどんだけキレてんだよバカ!!」


「ふざけんなよお前…!」


やばい怒りだした!!


「また今度!!」


僕は駆けだした!!


「あっ!! 待てよお前!! お前名前教えろ!?」



「『狂人』って呼ばれてるサイコパスって覚えておいて!!」


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