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-2 日常

≪2032年1月14日≫


 真夜中の大きな公園、『東第3公園』には11人の影があった


それは1人のお面をかぶった人間が大きなジャングルジムの裏に隠れ、体格のいい青年が9人のチンピラに囲まれているのを見ているという構図だ




1時間程前




「クソッ! ふざけやがって…! なんでどの雑誌に読めないようにカバーかかってんだよ…! 立ち読みさせないようにって、明らかに雑誌1つ1つにカバーつける方が手間だし、カバーの代金が無駄でしょうが…!!」


僕はコンビニで肉まんを買うついでに、久しぶりに少年雑誌を読もうとしたらカバーがかかっていることに気がついてキレていた


せっかくいつも行ってる保存食だらけのコンビニと違うコンビニに来たのに…、これじゃぁ意味がないじゃないかおいこの野郎! そうだ店長! 店長を出せぇ!!


僕は肉まんの入った袋を振りまわしながら手近な店員に店長は何処だと聞こうと近寄る


「!?…?……!!」


「…!!…!!…!」


そんな時、コンビニの外がにわかに騒がしくなっている事に僕は気づいた


見てみるとコンビニの駐車場にたむろしていた複数のチンピラが、暴れてる1人の青年に向かって何かを叫んでいる


そんな中、チンピラの1人が青年を殴ろうとする。


だが青年はチンピラの拳を前に踏み込みながら上半身を逸らしてかわし、そのままの流れでチンピラの鳩尾に膝蹴りを放ってどこかへ駆けていく…


チンピラらも青年を追い掛けるために駆けだす


そして僕もコンビニから飛び出して駆けだす




~回想終わり~




そして僕がチンピラ達に追いついた時にはもうこんな状況でした


「よし。ここなら他人に迷惑がかからねぇよな…」


「テメー! 追いつめたぞ!! いきなり俺のダチ殴りやがってよぉ!」


「泣いてもゆるさねーからな!」


「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


「あれ!? 『るっちゃん』は!?」


「あっ! たぶんあいつひざ蹴り食らったっきり微動だにしてなかったから、まだコンビニで悶絶してるかも!」


「お、おまえ、『ノノたん』を殴るだけじゃ飽き足らず『るっちゃん』までも…!」


「おぅゴラてめぇ! 慰謝料払えや!」


うん、だいたいのいきさつは分かった。ようするに青年が『ノノたん』と『るっちゃん』をいきなり攻撃して倒してきたんだな


そんなことよりチンピラたちのあだ名が可愛すぎるな


「ぅるせー!! てめーら屑はここでくたばんだよ!! 覚悟しろやぁあぁん!?」


聞いてる限り青年が悪いのに何故かめちゃくちゃ怒ってる…


「なんであんなにキレてんだあいつ!?」


「そ、そうだよ!! 別に俺らはあんたに何もしてないんだぞ!?」


「何もしてないだと? ハッ!! 笑わせるぜ! てめーらが全て悪いというのにな!! 自覚ない分ほんっとに救えねぇぜ! おら全員ぶっ殺してやんぞごらぁぁああああ!!」


青年は顔を上に向け雄たけびを上げる


ヤベーやつだ


「怖ッ!! あいつ怖ッ!!」


「いやいや、だから俺ら何も悪いことしてないって!!」


「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


「そうだぞ! 何が理由ならそんなバーサーカー状態に(おちい)るんだよ!?」


さっきも言ったけど、僕も99:1で青年が悪いと思うな


「理由!? そうか理由か!! ならば教えてやろうゴミクズ共がッ!! お前らの罪を、懇切丁寧(こんせつていねい)に分かりやすくなぁ! お前らが! 毎回! あのコンビニ付近で! 下卑た笑い声を出すから!! 俺の可愛い可愛い妹が寝られないんだよ! 可愛い顔にクマが出来ちまったんだコノヤロー!」


999:1でチンピラ達が悪いですねぇこれは


「そ、それは確かに悪いことを」


「ハァ!? 知ったことじゃねーぞ!」


「お前そんなんでキレてたのかよ!!」


「ねーわ! その理由はねーわ!!」


「あぁん!? お前らは8歳の女の子が『おにいちゃん、おそとうるさくてねられないよぉ』って言うんだぞ!! もう可愛いったらありゃしない!! よってお前らをぶっ殺してやる!」


「うわ! こいつマジだ! マジでロリコンだぜキメェ!!」


「おめぇはロリコンに人権無いのしらねぇのかよ!!」


「生きてて恥ずかしくないんですかぁ?」


いや、これはロリコンではなくシスコンだ


あと、ロリコンにも人権は認めてやってほしい


そして、これからあの青年はシスコンと呼ぼう


「ロリコン? あぁくそったれ!! てめーらここで死ぬんだよぉ!!」


シスコンはチンピラの集団に走り出す


「うわ向かってきた!? ロリコンが向かってきたぞぉ!! 行くぞみんな!! 返り打ちにしてやれ!」


「数は力なんだよ、わかるかいボク?」


「ロリコンに人権は無い。なら殺しても罪にならねぇよなぁ!?」


「え、ロリコンに人権無いの?」


「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


こうして、シスコン1人と不良9人とのバトルが始まり


…そうだった


「グギャぁぁぁああッ!!?」


「!?」


不良たちは急に後方で奇声を上げた仲間を見る


そこには、不良を踏みつけている




僕がいました




…あれま、皆あっけにとられてる。


まぁそうだろうな~、これから乱闘って時に不良たちの仲間(シスコンから見たら敵)の1人が、いきなり現れたお面の青年に踏まれて悶絶してるんだから


「…誰だてめぇ!?」


おっ、シスコンが誰よりも早く正気に戻ったぞ


「元気百倍、アソパソマソ!!」


僕は大声で名乗る



……


………


まいったな。すべったぞ


「…あー、うん。安心して、僕は君の味方さ」


僕はシスコンを指さす


「…どうゆうことだ?」


「僕は妹の事を大事に思う君の心に感銘を受けました。そして、君の力になりたいとも思った。だから」


「だから?」


「この、女の子の安眠を妨害する生命体の底辺どもをぶち殺すのを手伝うよ」


僕はすぐに未だに僕の足元で悶絶してるチンピラを両手で持ちチンピラたちに投げつける


「よいしょぉぉぉおおおお!!」


「んなぁっ!?」


チンピラ達はそれを受けとめようとし、勢いに負け倒れる


「……そうか」


「あぁ、そうさ」


僕とシスコンは少し見つめあい、


「いくぞゴラァッ!!」


「ウラァ!!」


同時に叫び走り出した


「っ!!」


僕に一番近くにいたチンピラが蹴りを放ってきた


僕は蹴りだされた足をかわしながら掴んで、仲間を受けとめ体制を崩している2人に投げる


…重い!


一瞬こちらも体勢を崩しかけたが、うまく投げられ3人を転がすことに成功した


僕はそのまま3人の下半身のアレを思いっきり踏みつける


「「「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」


チンピラ3人はこれでしばらく立てまい!!


多勢相手は囲まれたら終わりだし、何としても囲まれる前に数を減らさないとね


そう思いながら仲間であるシスコンの方を見てみた


4人に囲まれフルボッコにされてる


「え~…」


かっこよく啖呵(たんか)切ったのにフルボッコにされてる…


ダサすぎる


僕はチンピラ達に気づかれないよう死角から音を立てずに近づく


その時に僕の後ろから石で攻撃してきた奴を半身になって見ずにかわす


ついでに夜の草むらに伏せて僕の足をつかもうとしてきた、もう1人のチンピラの手を踏みつけシスコンの救助法を考えた


軽く7通り思いついた


でもとりあえず、中々うまい連携をしてくるこのチンピラ2人をなんとかしないといけないから、シスコンの救助をするのは少し時間がかかるね


「ヒャヒャヒャヒャヒャ!! なぁんで俺の攻撃をかわせるんだいこのお面野郎? 明らかにを俺を見ていなかったろぉ? てか誰だお前!! ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


「確かに8歳の女の子の安眠を妨害をしたのは悪かった…!! あとは俺がなんとか皆を説得するからもう見逃してくれ!! お前は俺と同じロリコ、子供好きなんだろ!?」


キャラ濃いなこのチンピラ1と2


因みに僕は空間認識が異常なのと、相手の感情を感じたりできるだけだ


近くに隠れる生き物ならどう動くかまで予測できる


それで、攻撃は空間認識で相手の攻撃が当たらない所を割り出せばかわすこともカウンターを決めることだって楽だ


…あと感情といえば、シスコンの方から明らかな殺意の感情をずぅっと感じるんだが


気になってしょうがないのでチンピラ2人から目線を外してシスコンの方をみてみる






シスコンが笑いながらチンピラ4人を地面に寝かせ、僕たちを獲物を見る目で見ていた






「ヒャヒャヒャヒャヒャ!! ありゃヤベェわぁ! 俺なんかよりよっぽど立ち悪ぃぜぇ! ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


「同じロリコンとしてあの笑顔は駄目だね。…子供たちが泣いてしまう」


「あらら。珍しいな? この平和な日本でほんとに『戦闘狂(バーサーカー)』がいるなんて。よし、明らかに僕にも殺意を向けてるね。よし」


僕はチンピラ二人と肩を並べる


「不本意だけど、あれを何とかするよチンピラさん」




そしてシスコンは笑いながら僕とチンピラ1・チンピラ2に向かってきた





*****






僕は今、落ち着いたシスコンとあのバカでかい公園(個人的には『秘密要塞型遊び場所・東第3公園』と呼んでる)を離れてシスコンの家に向かっている


チンピラたちの事は唯一生き残ったチンピラ2が何とかするらしい


最後にこれからうるさくしないと約束してくれた


…いやぁそれにしても、最後の戦い熱かったなぁ


チンピラ1の倒れる瞬間の素の笑い声がかっこよすぎたね。うん


チンピラ2のシスコンの意識を取り戻すための魂のこもった言葉には不覚にも涙したし


「…ありがとな」


「うん?」


僕が先程の戦いに思いをはせていると、シスコンがお礼を言ってきた


「あぁ、別にいいよ。あいつら弱かったし」


「いやいや、あいつらの事じゃなくてだ。あの俺を止めてくれて」


「あ。そのこと?」


「あぁそうだ」


「…あとな、俺がロリコンでも普通に接してくれて」


「? 何言ってん」


「おにいちゃん!!」


何言ってんだお前病院行くか? って言おうとしたら幼い声にかぶされた…


声がした方を見ると、ピンク色のパジャマを着た6~8歳くらいの女の子がトテトテと走ってきた


ぎゃぁぁぁぁああああかわえぇぇええええ!!!


「なっ! 妹!?」


「え!? あれ妹!? マジでか! 触らせて! お願いします!!」


「うるせぇ朽ちろ!」


「お前さっきのショボーンとした態度はどうした!?」


僕とシスコンが口論していると、その妹ちゃんはシスコンに抱きついた。


というか飛び付いた


僕はこの時、シスコン死ねばいいのにと思いました。


「おまえ、何でこんな時間に外にいるんだ?」


シスコンが少し怒った風に言う


「おにいちゃんがいきなりおそとにおでかけしちゃうからしんぱいしたんだよ!!」


おうおう、いいねぇお兄ちゃんはよぉ…


…どうする? 


()るか?


「だからって外に出…どうしたお前!!」


シスコンが僕の殺気に気付いたようです


何お前も感情読めるの?


「別に? 何でもないんですけど? これから夜道には気をつけろよ?」


「おにいちゃん。このおめんのひとはだぁれ?」


「ん? あぁ、このお面の人はお兄ちゃんを……手伝ってくれた人だよ」


『手伝った』ね~、まぁ2人で怖いお兄ちゃん達をフルボッコにしてましたとは、こんな純粋そうな女の子には言えませんよな~


「そうなの? ありがと!! おめんのおにいちゃん!」


僕は幸せになりました


「いいよいいよ~。そのありがとで僕は2日間飲まず食わずでもやっていけるよ~」


「? アハハ! このおにいちゃんおもしろいね!」


「そうだぞ、こいつはなかなか面白い」


そういってシスコンは妹の頭をなでた。妹も気持ち良さげに目を細める


だが、シスコンはハッと僕を見てなでるのをやめた


「ぁう…?」


妹ちゃんが急になくなった温もりを追いかけるようにシスコンの離れた手を見る


「? どしたの? 今僕は殺気は出してないはずだよ?」


「いや、…お前はロリコンってさけないのか?」


「はいぃ? 君何言ってんの?」


「おにいちゃん?」


「…いや、なんでもない」


なんだよそれ、意味ありげにしちゃってさぁ…


「はぁまったく…。別に僕は君をロリコンだーって馬鹿にする気もさける気もしないね。逆に尊敬すらするよ。てか君『ロリコン』じゃなくて『シスコン』だからね」


僕はため息をついて言う


「は?」


「家族である妹を大切にしたり、可愛がるのは簡単そうで難しいんだよ? なんせ『1番近い他人』なんだから。うざかったり邪魔だったりと案外マイナスな所が多いもんだよ。もちろんいい面もあるけど、若いうちは忙しかったり自分のことでせいいっぱいだったりと気付かない奴が多いからね。それなのに君は兄の最大の義務である妹の面倒をちゃんと見ている。そこらの家族をないがしろにする奴なんかより、君はずっっっっとましってことさ」


言い切ったらシスコンが呆けてた。馬鹿にしてんのかな?


「うん? おめんのおにいちゃんはなにをいいたいのですぅ?」


妹が首をかしげながら聞いてくる


かわえぇ…


「妹ちゃんがこんなに可愛くて素直なのは、お兄ちゃんがしっかり妹ちゃんを大切にしてるからだよ~って教えたのさ!」


「ん! そうだよ! おにいちゃんはいつもみてくれてるの!!」


「ハハッ。やっぱり可愛いなぁ…。さ、じゃぁ僕はここで帰るよ。兄妹みずいらずってね」


僕はそういって踵を返し歩き出す


「まてよ…」


「…なぁに?」


僕は歩みを止めて振りかえらずに聞く


「お前、名前は?」


「『狂人』」


そしてまた僕は歩きだす…


「あっ!ま、また来てくだしゃい!!」


…あぁ、やっぱいいねぇ【愛】ってのは











あれ? 待って、僕の肉まんどこいった?

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