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さようなら僕の乙女  作者: 鴇嶺
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カミラ、魔法にかけられる

カミラは蝶よ花よと育てられてきた。

それというのも家が貴族の血筋であり、親は大公、つまるところ自分は大公令嬢なのだから当然と言えば当然だ。

愛情をいっぱい受け、家臣達にはちやほやされて何不自由無く、いつも自分が物語の主人公のような立ち位置で生きてきた。




しかし、それは12の冬までの話――……。




カミラはある一人の女家臣に言われるまま、母で大公であるルアンナに呼ばれていると聞き薬品棚のある倉庫まで行った。

その倉庫はあらゆる魔術道具を保管、封印をしていた倉庫だった。


数百年前、他国アドリアナとイリエスク間で起きた戦争以来、この世界クルーエル全土で魔術を使用することを禁止もしくは控えることを義務付けられたのだ。

その為、カミラのいるセンシュアス公国は魔術道具を始め魔術に関するあらゆる道具は大公の屋敷で厳重に保管をすることにしたのだ。


そもそも、センシュアス公国は空挺公園という飛空挺を公園にして空を飛ぶ観光名所が有名な自然の多い田舎だ。

国土の大半が自然保護地区であり、自然観光名所。魔術を頼らなければいけないことなど殆どない。


それもあってか、魔術について具体的なことは一切知らなかった。

カミラが生まれた時にはもう魔術を目にすることなどなかったのだ。

魔術道具を保管している倉庫に行っても何も思わなかった。

魔術については何も思わなかった。

自分の母が何故そんな魔術道具の倉庫に呼び出すのかという疑問は少しあったが、魔術の脅威を知らないカミラはただただ不思議なまま母を待った。



そんなカミラが魔術の脅威を知るのはその直後のこと。



カミラに言伝をした女家臣がカミラを倉庫に案内した後、カミラが倉庫に入りきったのを見届けると薬品棚に手を伸ばし、不意を突いてカミラに“ある一つの魔法薬”が入った瓶を投げ付けた。



カミラは全身が焼けるような暑さに包まれた。

小さな体に瓶の中なみなみと入った魔法薬は充分過ぎるほどの威力を放った。

耐えきれず意識を手放し、カミラは倉庫の石畳に倒れてしまった。




カミラが気が付いたのはその3日後だった。

目を回しながら重い頭をもたげて、心配そうに顔を覗く母を見た。

柔らかなベッドに横になっていた。

何があったのか理解が追いつかない。

何から聞いたらいいのかわからない。

とにかくカミラは声を上げることにした。


「何なのあの女!?」


それが第一声だった。

思ったより元気だと感じたのか、母ルアンナはほっとした様子だ。

そして説明された。

カミラは巻き込まれたのだ。



あの女家臣は母ルアンナに恨みがあったのだ。

大公ルアンナは数年前、極悪犯罪人で名を馳せていた男の処刑に許可を降した。

センシュアス公国では裁判員長と、大公の両者から許可が出なくては如何に極悪非道の輩だろうと処刑は認められていない。拷問も右に同じだ。


そう、その数年前に許可した処刑の男こそが今回の事件のキーパーソン、カミラを倉庫に案内して魔法薬の入った瓶を投げ付けた女家臣こそが極悪犯罪人の男の恋人だったのだ。

女家臣は男に大層懸想しきっていた。

犯罪人という肩書きすらも格好良いとのたまう程に。

処刑された男の仇を取る為、女家臣は大公ルアンナへの復讐を考えていた。


自分と同じ境遇に……と考えていたが、大公ルアンナは未亡人だ。

ルアンナの旦那はとっくの昔に亡くなっている。

ルアンナの旦那の政治を良く思わなかった者に殺されたのだ。

復讐をするにはどうしたらいいかと考え直した末「大切な者なら誰でも構わない」その結果、娘であるカミラを狙ったのだ。





「確かに、大人から見たらあたしなんて隙だらけなのかもしれないけど……だからって子供を狙うなんて外道のすることだー!!」


カミラは叫んだ。

本当に怖かったのだ。

一体何の魔法薬をかけられたのかもわからなかったし、魔法薬自体どう作用するのか、どんな風に効果が出るのかも何もかもわからなかった。

しかし、叫ぶ様子を見てルアンナはクスクス笑う。

これだけ騒ぐ元気があれば問題無いという判断なのだろう。

カミラはそれが余計に気に食わなかった。


それにしても……、とカミラは身体を動かす。

少しストレッチをしてみたりしたが、まるで何も変化が無いように思う。

あの魔法薬はどんな効果があるのか。



ルアンナは一言。



「あれは外見維持薬よ」



カミラの脳に届くのに数秒かかった。


維持薬……?

維持、外見維持って……え?


「カミラの今の姿が維持される薬なのよ。もう少し詳しく言うなら……そうねえ、12歳から身体の成長が止まるってことよ」


訳が分からなくなった。



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