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キューズヴァンプ  作者: もちみみ
3/5

ハル

(あ…寝てた。起きないと…)



ソファーで本を読んでいたら、少し眠ってしまっていたらしい




「おはよう」



「──!!」




昨日悩んだ末に、放っておこうと思ったが、結局引きずってリビングに転がしておいた


その男が寝室の、目の前の床に座っている



(え、鍵かけてたはず…)



「昨日助けてくれたんだよね?あんまり覚えてないんだけど。ありがとう」



リンはハッとして左手の中指を見る



「(あーだよなぁ。誤魔化せないか…)

痛かったよね。ごめん」



「傷が…」



「あぁ、小さい傷は治ったよ。お腹の傷はちょっと深かったから、もう少しかかるかな」



「…ありえない…」



「あはは。だよねぇ。

でもまあ、俺人間じゃないから」



目の前の男がにこりと笑う

整った顔が、恐怖を煽る



「吸血鬼ってやつ」



ドキリと心臓が音をたてる。



(人間じゃない──)



考え付いたいくつかの答えのなかで、有り得ないと無理矢理蓋をした単語が男の口から出た。

心の中を覗かれたような動揺と、納得が頭の中で混じり合う。



小さい頃、隣国の森の奥には、吸血鬼が居たという話を聞いたことがある。

と言っても、おとぎ話や都市伝説的に語られている程度だが。

それでも、昨日のアレを見た後では、納得する方が自然だった。



リンは短く息を吐き、悟られないように冷静に言葉を出す



「…吸血鬼って?

あの傷は?」



「吸血鬼は、昔からいるんだよ。

元々はここよりずっと南部の地域に居たらしいんだけど。

だけどそこには吸血鬼を捕まえる組織があってね。


そいつらは、血や一部を使って研究したり、何かに利用してるみたいなんだ。

そのせいで数が減って、吸血鬼達は人間に紛れて、隠れて生活するようになった。


で、俺も目を付けられて襲われた。それがあの傷。

なんとか逃げて、追いかけてこれそうにないこの辺で、安全な場所を探してたんだ」



「…なんでバレたの?」



「…あぁ、それはね―――」



―――ぐいっ


また早い動きで手を引かれ、左手が腰に回された



がぷ。



今度は首筋に。


氷水をかけられたように体が硬直する


が、すっと体が離れて、



「なんてねー?血でも飲んでたからだと思った?」



冷えた体が今度は一瞬で沸騰した



バシィッ


「~~~さわるなっ!」



「あはは。痛いー

まぁ冗談は置いといて、吸血鬼(俺ら)は血がなくても普通の食事でも生きれるんだよ。

バレたのは、その組織を"潰す"為に、裏で色々動いてたからね」



「あっそ。

で、なんでここに?」



「あぁそれは…」


(ノアの匂いに似てたから…)



「そういやここってどこ?

どう見ても普通の家じゃないけど」



「王城よ」



「…マジ?

俺すげーとこに来ちゃったな。

オーサマとかにバレたら殺されるね」



ケラケラ笑う男に、本当に吸血鬼なのかと不思議に思う



「…血を飲まないなら、人間とどこが違うの?」



「そうだねー、色々あるけど一番は運動能力かな。あと人間より丈夫だね。

ちなみに、血を飲むと運動能力も治癒能力も格段に上がる。だから昨日、傷が治ったんだ。

それから太陽はそんなに得意じゃないから、夜のほうが調子はいい。ってところかな」



俺、結構強いよーと言いながらファイティングポーズをとる男を見ながら




(あ、そういやノアって…)



「ねぇ、昨日ノ――」




──コンコンッ



「リン様、ご朝食をお持ちいたしましたぁ!お目覚めでしょうか?」



リンは慌てて寝室を出て入り口に向かう



「お、おはようラナ

昨日あれから仕事したままで散らかってるから、ここでいいよ。

あと、今日は掃除もいいから」



「おはようございます、リン様。

まあ、あれからお仕事をされてたんですか?

…せめてご朝食くらいは、ゆっくりとってくださいね?

あ、それから、宰相レイブン様よりご伝言です。

ウィルス侯爵方のご到着は午後1時頃の予定です、との事です」





───バタン



(そうだ、今日は護衛の…)





──あ。


「ねぇ、あんた名前は?」



「俺?…ハル」



「ハル。行くところはあるの?」



「いや、特定の場所は元々ないけど」



「強いのよね」



「え、うん、まぁ」



「剣は使える?」



「使えるけど…」



「そう。じゃあ採用」



「えっ。採用?じゃぁって何…」



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