始
───『大変だ───!!』
「…さ!宰相、宰相殿、おられるか!!」
「なんだ騒がしい」
「…っ。たった今、伝令より報告が…!!」
「陛下…並びにお妃様、ウィルス王子が…う…ウェストタウン近郊にて、暗殺されました!!」
────ざわっ
「な…なんだと…」
「…暗殺者三名…捕縛の際、自害いたしました…」
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ラステル王国城内
執務室──
「陛下、昨日のイーストタウンの書類なのですが」
「あぁ、処理しておいた」
「陛下、恒例の晩餐会なのですが」
「…今回も不参加」
「貴族たちから催促の書類が何通も来ておりますよ」
「あー、わかってる。」
「すみません、陛下、あの、今年の…"ウエストタウン"での春の祭典なのですが…」
(…そんなに気を使わなくてもいいのに)
「祭典は通常通りで」
「陛下、以前一度お話がありました、ウィルス侯爵家ご子息エドガー様を、陛下の護衛にとの件ですが」
「あぁ、断ったやつね…」
「はい。それが先日行われた騎士大会で、エドガー様が優勝されまして、
正式に陛下の護衛にと申し出がありました」
騎士大会は、王国で年に一回行われる。
出場者は王国騎士団と、貴族の騎士団。
ただし、出場できるのは入隊5年未満の、若手のみと決められている。
若手にとっては実力を提示できる場であり、功績を残せば昇進などのチャンスに大きく繋がるので、皆こぞって参加するのだ。
「それで明日、別件でいらっしゃる際にその話もしたいとの事です。
こんな適任はいない!と、引いてくださらなくて…。
有力貴族なだけにあまり無下にも出来ないですし」
(あぁ、明日来るんだったなぁ…)
ウィルス侯爵家は武力に特化しており、騎士団は精鋭が揃っている。
それゆえ、武力はウィルス家に頼ることが多い。
(腕は申し分ない。隊への刺激にもなるし、若手への指導もしてもらえる…。確かに適任なんだけど)
ただ、純粋に護衛をなんて思っていないのは明らかで、必要以上に親密にしたくないのが本音だ。
(何よりあの息子のまとわりつくような視線が嫌だ。それが毎日…)
思い出しただけで鳥肌が立ちそうになり、慌てて脳内のエドガーをかき消す。
「今の近衛兵達で十分なんだけどなぁ」
「ありがとうございます。ですが、私個人としては、陛下付きの護衛を一人付けておくのは賛成です。
なので明日、騎士団の中から何人か連れて行きたいのですが」
「構わないわ」
「ただ、エドガー様となると、うちの騎士団では団長とまではいかずとも、隊長クラスであるかと。
しかし、団長や隊長達が抜けるのは厳しいのが現状です」
「そうね、隊が崩れるような事は困るし。
引く気はないみたいだし、適当に誤魔化しても無駄だろうなぁ。
そうなると限られてくるか…」
「…申し訳ございません」
「隊の強化は今後の目標にして、とりあえず明日のメンバーは、指揮官のあなたに任せる」
「はい!全力を尽くします!」
──────
「はぁっ…はぁっ…」
(どこだここ…?)
(あーだめだ…やべ…)




