愛、苦しい。
愛くるしいの貴方が。
無防備に私を信用しきっている、その首元に
そっと牙を立てて貴方の全てを吸い上げてしまおうか。
記憶、時間、感情、才能、能力、
そして私への、恋心。
じっくり時をかけて育てた愛の果実を
食み潰して、とろりと滴る果汁を味わうの。
どんなに美味しいことでしょう。
どれほど胸がつまって苦しいことでしょう。
愛くるしいの私は。
貴方と居ると獣になってしまう私を抑えられなくて。
いつしか牙や爪が凶器のごとく生え揃ってしまったの。
想えば想う程に鋭利になっていく狂気。
これはきっと本能で、そして運命で……
背徳を飛び越えて私は決心を深める。
狙うのは、そう、貴方との蜜月を過ごした夜。
愛狂おしい夜はとても喉が乾いてしまうから
貴方の果汁が欲しくなったの。
仕方が、なかったのよ。
だって愛しているんだもの。
口元から滴らせながら貪り、また飲み込む。
甘美って、こういうことなのでしょう。
甘くてとろけて、夢中になって髄まで吸い尽くす。
あぁ、美味しい。愛してる。もっと、もっと。
そうして。
幸福なディナータイムの終焉には、
鳴り響くサイレンと重く冷たい永久の手枷。
何も怖くないわ、少しも後悔なんてしないわ。
でもね、ちょっとだけ名残惜しいのは、
きっと貴方の味を思い出せなくなること。
だから、
その度に残った貴方を胃から喉に反芻して味わうでしょう。
何度でも、無限に貴方を感じる為になら。
そうして、
私は規則正しく管理され監視され閉ざされた壁の中で
終わらない夜の中で朝日を見る時を待つのね。
だけれど。
私の中で貴方は永久に生きているから寂しくないわ。
吐いて、味わって、飲み込んで。
ちょっと苦しい……、でも。
ふふふ。美味しい。愛してる。
大好きなんだから。