表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハローハローワーカー  作者: おおやま
6/16

デジレさんとあたし

 うちに帰るとデジレさんが仁王立ちで待っていた。


 ……あぁー。


 デジレさん、あたしの住んでいるフロアを勝手に(みんなには結構尊敬されているらしい、あたしにはわかんないよ)まとめている女性。ていうか基本的にきれいで素敵な人なのだけれど、なぜかあたしには過保護、しかもあたしと違って身体がおっきいんだよね。あぁーって感じ。


 「みーやっ おかえり。 あんた、今日はうちでご飯食べなさい!」


 開口一番そんなことを言う、あたしにも都合があるのにさっ。


 「……あたしはみやです。 ご飯くらいひとりで食べれます」

 「みーやっ 今日はガビーからいい蟹を貰ったんだよ、あははっ うちで茹でて食べようぜっ」

 「行きます」


 うぅー ……即答してしまった。蟹さん好きだもの。

 でもガビーさんのデジレさんに絡まれているかわいそうな顔が浮かんだ。

 オーストラロイドの陽気なガビーさん、荒れ狂う海の男と本人は言っているが、ただの漁師さんでしょ?


 「きょうはいい酒が手に入ったんだ、チャーリーの奴がくれたよ、あははっ」

 左隣のチャーリーさんも今日のかわいそうな人だったのか…… 

 まぁあの人はあたしをからかうからいい気味だ。


 「よーし、みーやっ 今日はとことん飲むぞっ」

 「……あたし飲めないんですけど」

 「き・に・す・る・な」


 ……あぁー。


 蟹を豪快に鍋に突っ込んで茹でる後姿が勇ましい。

 たまに思う、この人は本当に女性なのだろうか? 

 しかも片手にはワインのボトル、料理に使うんじゃなくてグビグビ飲んでるよ……

 

 「あははっ 暴れてやがるぜっ この蟹野郎、あぁっ酒がうめぇなっ」


 ……おっさんだ。黙ってれば素敵なのに。。。


 「ああん? なにか言ったか? みーやっ」

 「なんでもありません それとあたしはみやです!」


 そんなこんなで大笑いで茹でた蟹さんを豪快にばらしてテーブルに並べる。

 ほんとに豪快ですよデジレさん。

 さすがに活きが良いだけあっておいしかった。隣に酔っ払いさえいなけりゃもっとゆっくり味わえるんだけど、がはははっと笑い声がこだまする。

 

 まぁ ……楽しいからいいか。


 酔っ払ったデジレさんが少し真剣な目でこっちを見る。


 「あんた、今日は北地区に行ったんだって?」

 「はい、お仕事です」

 「そうか……」


 少し時間が止まる、デジレさんが笑ってないとそんな感じがした。

 そしてやっぱり少し真剣な目であたしに言う。


 「郊外に住んでいる人間てさぁ、結構のんびり生きているから、いろいろ考えちゃう人が多いのよね」

 「……」

 「あたし達みたいに毎日なにも考えないでせわしなく働いているメインシティの人間と違ってさぁ、暇だと人っていろいろ考えるんだよね、まぁ、あんたみたいなガキにはわからないと思うけどさぁ」

 「……あたしは子供じゃないです、ちっちゃいだけです」

 「あははっ ガキじゃんあんた、まだまだ子供だよ ……でもさぁ、結局人って行き着くところは一緒なのかもしれないね」


 「……」


 「……あははっ 酔っ払いの戯言だ、ガキは気にするな!」


 デジレさんはいつものように酔っ払ってわけのわからないことを言う、わけがわからないからあたしはまだ子供なのだろうか? 

 でも少しだけ、デジレさんの言いたいこと、ほんの少しだけだけれども、ちっちゃなあたしは気づいているのかもしれない。


 気づかないふりをしているのかもしれない…… 


 それから、デジレさんはずっと笑っていた。ここではいつもこういう時間が流れている。


 あたしの大好きな居心地のいい時間。


 「おぅ、子供は早く寝るんだぞっ みーやっ」

 「……みやです。今日はご馳走様でした」

 「あははっ それはガビーに言ってやれ、おやすみ、みーや」

 「おやすみなさい、デジレさん」

デジレさんは黙っていれば綺麗で素敵な女性です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ