選択 3
しばらくして個人端末にメールが来ていた。
『ささやかながらガーデンパーティーを開きたいと思います。親しい人しかお呼びしていません。ぜひお越しください コラリー』
ちっちゃなあたしは行かなかった。
それがあたしの選択。
イタリアンレストラン
それは二年ほど前のお話、あたしがまだこの世界にいなかった頃のお話。
そのお店は北地区では名の知れたイタリアンのお店。
仲むつまじい夫婦がお店を切り盛りしていました。
シェフが大切に育てた採れたての新鮮なハーブをふんだんに使った料理は評判がよく、とても繁盛していたそうです。
とくにバジルとトマトのパスタは最高だと聞きました。
ある日、シェフだった夫が言いました。
こうやって日々暮らしていく、あたりまえのように暮らしていく、だけどその生活の下では人々は悲しい思いをしている。
妻にはわかりません。
どうして幸せだといけないの? どうしてそんなこと言うの?
夫は言いました。
自分のできることがしたい、幻じゃなくて、自分の手で掴めるものを手に入れたい。
夫は妻を置いて戦場に行きました。
妻はそれでも幸せに生きようと努力しました。
夫の思い出、ハーブの花壇に目もくれず、ずっとずっと働きます。
おいしいお菓子を焼いてお店はまた繁盛しました。
ある休息日、ふと、少し庭を散歩してみました。
夫の大切に育てていたハーブはぜんぶ、枯れていました。
妻はお店をやめてしまいました。




