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EASY QUEST  作者: 芹沢一唯
レベル4。遺跡と運命、青い道
11/12

(2)

ほんっとーにお久しぶりです。

よろしければ、第一話から読み返していただきたい気持ちでいっぱいです。

よろしくお願いします。

 しばらくの沈黙が不思議空間に漂う。岩石生命体の胃袋の中も、水を打ったような静けさ。

 流石に、この空間の支配者様も居心地が悪くなってくる頃。


「……うーん、じゃあさ」


 何が『じゃあ』なのかはよく分からないが、この気まずい沈黙を破ってくれたことには感謝すべきかもしれない。キディの次の言葉を待つ。


「聞くけど、なんで生きて動いてんの? 僕たち」


 シアンが彼らに告げた内容。

 レンとキディは人ではなく、『人形』だという。

『ヒトのカタチ』をした、無機質な存在。もちろん、ひとりでに勝手に動くなんてことはない。

 詳しい説明を求めるべく、キディは表情のない顔をシアンに向ける。

 問われたシアンは、不機嫌さを隠すことなくキディを睨みつける。そのまま徐に口を開いた。


『……その昔、愚かな人形師がいてな。そいつが遊びで作ったんだよ、お前たち二人にそっくりな人形を。……そいつは単にドールと呼んでいたがな、正真正銘、ただの人形だ。ただし、そいつは髪の毛の先から足の指に至るまで、人間のそれを完璧に模していた』


 ゆっくりと話すその声は低く、冷たく、苛立ちさえ含んでいるのがありありと見える。


「もしかして……ものすごく不機嫌になってる?」


「そうらしいな……どうやら俺たちが狙い通りのリアクションを見せないんで、面白くないらしいな」


 まるっきり人ごとで、それが自分たちの所為であることなど全く気付かない不遜な態度。こちらが真剣に話を進めているときに、逆に必死さを馬鹿にするような、メンタル弱い人間なら関わることすら避けようと思う案件だろう。


「ところで人形師って」


 レンはキディに向けていた視線を巡らせて、壁から腹の辺り……つまりは上半身だけを貼り付けたシアンに向ける。相手の姿をまじまじと見ることまではしないものの、一応相手の出方を待つ。

 シアンはかろうじてその場に留まり、あくまで通常運転のレンの言葉の続きを待つ。


「もしかして、傀儡師とか呼ばれてる類の人?」


『……いや、違うな』


 なんとか目の前の二人に意識を向け、シアンはレンからの質問に答える。


『彼は……そう、異端だった。不思議な力を持っていてな、周囲に気味悪がられて、いつしか姿を消してしまったよ』


 陰湿な雰囲気が漂う異質な空間。

 シアンの声は淡々と、感情を持って伝えられる。同じく感情を持っているが、微妙に温度差のあるレンの声と、感情どころか温度も感じられないキディの声が掛け合い。


「彼ってことは……お父さん?」


 キディはレンを振り返って問う。


「俺、どうせ片親なら美人の母ちゃんが良かったなあ」


 どうでもいい願望。


「僕はどっちでもいいけどね。でも、きっとすごく年取った人、って感じだね」


 話の腰を折られたかたちのシアンは、思わず突っ伏してしまいたい衝動を抑える。それでも咳払いで気を持ち直し、先程の話の続きをするため口を開く。


『お前たちはさしずめ、彼の忘れ形見といったところか……人形に意志を吹き込むなどという下らぬ儀式を途中で投げ出して、逃げたんだよ。……要するに、棄てられたワケだな』


 今度こそ、言いたいことを全て言い終えたシアン。気付かれない程度にこっそり息をつくと、改めて不遜な態度で二人に向き直る。


「人形に意志を吹き込む……? そんなことできるのか?」


「なんかー魔法みたいだねー」


『さて、そろそろいいか? もう話すことはないぞ』


 レンの質問には答えない。かなりイライラしているのも隠さず、声にはかなり怒気が孕まれている。

 当のレンとキディは、シアンの言葉を反芻しているような……考えているような素振りを見せていたが、少しの間を置いただけで、あっけらかんとした態度に戻っていた。


「んー……ま、お陰で記憶がないことも、コイツが無表情なのも何となくわかった気がするから、一応礼は言っとくわ。でも」


 一旦言葉を切り、レンとキディはシアンに向き直る。


「俺たちは、俺たちの意志で、生きてるんだな、残念ながら」


 一言ひとこと言葉を区切って、言って聞かせるようにレンが宣言する。


『お……、往生際が悪いわぁっ!!』


 とうとう堪忍袋の尾が切れたらしく、ヒステリックな声を上げたかと思うと、両手を振りかざして何かの儀式のような動き。同時に今まで彼らが足をつけていた場所がぐにゃりと不安定に沈み込んだ。当然、二人はつられて踊るような奇妙な格好でバランスを保つのに必死になる。


  ごばああああぁぁっ……


 腹に響くような奇妙な音。何か得体の知れないものが……例えば粘り気のある液体が大量に押し寄せてくるような音だ。


「わあああっ! レン、飲み込まれるよ!」

「食われてたまるかあっ! おぉりゃッ!」


 この際キディの叫び声がかなり大音量での棒読みだったことは気にすまい。


 レンの掛け声とほぼ同時に、『がっ』という鈍い音と、『ごっ』というかなり鈍い音が立て続けに響いてきた。


『な、か、壁に? 猿か貴様らっ!』


 シアンの叫びの通り。どうやら隠し持っていた何かをレンが壁面に投げつけ、それを頼りに二人して壁に張り付いたらしい。……壁に叩きつけられ損なったカエルのように見えなくない。


「キディ!」


「レン!」


 二人の無事を確認し合う。


「……レン、勢い余ってまた顔面ぶつけたの?」


「……痛え……」


 両手両足で自分が投げつけた『何か』にしがみついているため、顔面を庇うことができなかったようだ。鼻血が一筋、見えている。


「で? 何これ」


 キディが聞いているのは、レンが投げつけて今現在もしがみ付いているモノだ。


「ふっ……備えあれば憂いなし。俺様の愛用の武器をいつもと違う感じにアレンジしてみた」


「機能重視ってこと?」


「何?」


「助かったからいいけど……、格好悪い」


 それの形状と自分たちの現状をマジマジと見つめてから、すっぱりと言い放つ。


 いつもの武器は二節の棒もとい棍。特殊な金属製でできており、レンはよく自己流にアレンジ……つまり改造していることがある。それが今回は、ぶん投げた上に壁に張り付くという芸当をやってのけたのだが……やはりキディからの評価は厳しい。


「ちっ……やり直しか……。んじゃ、こっちはどうだっ?」


 言うと、懐で何やらごそごそしつつ、カチッという音をさせた。


「何したの?」


「起爆実験」




「は?」


お読みくださってありがとうございました。

またゆっくりと投稿していく予定ではありますので、どうぞ生暖かい目で見守っていてくださると嬉しいです。

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