恋するスライムが嫉妬して女勇者をぶっ○すのは仕方ないのです。(リム。修正ver/2.00)
近頃、勇者一行も減った。
水帝リムは任された仕事の最中、ふとつまらなさそうな表情をする。
その任務が大魔王から与えられたものではないから、なおさら。
可憐な美少女の憂鬱顔はそれだけでも人々の視線を集めるだろう。
現に部下のいくらかは彼女に釘付けになっていた。
「女の勇者がいたら、城に辿り着くまでに殺そーね?」
勇者の卵を抹殺、神託やら加護を受ける前の勇者を仕留める任務についている。
女勇者殲滅は私情も含んでいる。
大魔王のところに女勇者がいけば、戦いの末の辱しめが待っているだろう。
死にゆく命とはいえ、一瞬でも他の女が大魔王に触れるのが気にくわない。
大魔王には一途で忠実、仲間や部下には気さくで温厚なリムの悪癖は嫉妬である。
ひとたび嫉妬すれば部下だろうが殺す、それも酷い手段で。
人魚を魔物の餌にしたり、雪女を焼き殺したり、悪魔の四肢を切断してから人間に犯させたりと凄惨な逸話がある。
リムがスライムであること、スライム族のことを馬鹿にしたものも似たような末路を辿ることになるらしい。
この間は魚人がスライム兵達の糧にされたという。
「リム様、東の村に勇者が生まれたのことです」
「ありがとう、じゃあ殺しにいくね」
に、と微笑む姿は無邪気、それでいて残酷。
勇者の可能性があるものを次々とリムは殺す。
赤子だろうが老人だろうが、皆殺し。
別に人間嫌いというわけではない、初めての友は人間だったし、部下にも人間がいる。
むしろスライム族と変わらぬ脆弱な種族である人間族には好意的ですらある。
その人間達を殺すのは、大魔王の指示だから、ただそれだけだ。
「ねぇ、なんか最後に言うことある? 聞いてあげなくもないよ?」
精霊の守りを得たばかりの新米女勇者を捕らえた。
粘液状にした腕で女勇者の首や腹を閉めながら問うのは苦しめるためだ。
「こ、故郷には手を出さないで……っ」
「ボク、無駄な殺しはしないからね。じゃあね」
女勇者の最期の願いは叶うだろう。
リムがいかに残忍とて、罪なき存在には手出しはしない。
絞殺された女勇者を手放すと、完全擬態。
ある程度強くなった勇者来ないかな、とため息をつく。
スライムながら四天王に昇りつめたリムは、戦うことも趣味である。
同僚の炎帝グランディオと切磋琢磨し、頻繁に手合わせしている。
「リム様!」
「今度は何?」
「伝令です、帰還せよ、と大魔王様から!」
「リムはすぐさま戻ります、と大魔王様に返事して!」
虹色の瞳を輝かせてはにかむ少女はまさに恋する乙女。
彼女のこの笑顔に憧れ、そこ恋路を支持する者も少なくない。
一部では、異種恋愛や身分差恋愛の守護神ともされている水帝リム。
そのせいで水軍は駆け落ちしてきた恋人やら何やらが沢山いる。
仕事帰りのリムが、ふと空を見上げる。
今頃大魔王様は何してるだろう、とか考えながら。
【終】