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生徒会長たちから提出された「リコール申請」は、公示された途端に学園に大きな騒ぎをもたらした。



学園の生徒たちの長として生徒を守るべき会長達が、率先して同じ役員のリコールを請求するのだ。騒ぎにならない方がおかしいだろう。

良い意味でも、悪い意味でも。

純粋にどうなってるんだろうと不安に思う者と、突然降ってわいたゴシップに興味津々の者。



一部の親衛隊などは、Sクラスというだけで平凡極まりない椿木が生徒会室に入れるという事に憤慨をしていたから、会長達からのリコール請求に椿木への嘲笑を隠さない。


「だいたい貌だって平凡だし一般家庭の出身でさ、ただちょっとだけ頭がいいからって生徒会役員になれたのに、ほかの皆様に迷惑かけるなんて身の程知らずも良いところだよね」

「ほんと、何様だと思ってるんだろう」



それを耳にする風紀達からすれば、そんな事を言うオマエ等こそ何様だよと思うところである。

そしてSクラスに所属する生徒達も朝からこの話題で持ちきりだった。

ただし、他のクラスの生徒対とは少々趣が異なる。



「ばっかな会長達」


コン、と公示の貼ってある壁を軽く叩いて笑うのはSクラスの生徒。



「困ったお坊っちゃま達だね」

「あはぁ、仕方ないさ。世間知らずのボンボンなんだしさ」


どんな勝算があるか知らないけれど、この公示内容…つまりリコール請求理由を見ただけで、自滅がありありと想像できる。



「おはよう」


カラリと扉を開けて椿木が入ってくる。


「お、ユウ」


入口近くにいた友人の玉城清太郎が手を挙げて応える。

机に腰かけてパンをもぐもぐと食べている。

机の持ち主が上から零れ落ちるパンくずに眉を顰めながらも同じように椿木に挨拶をよこした。

「椿木君、はよ」

「おはよう、ジョージ。清太郎は今日もそれ?」

「ヤマ@キのアップルパイ、好きだもんね…こぼすけど」

意外と腹持ちがするんだ、と好んでいるのは知っているが、パイ生地だからかとにかく零す零す。


「本人にちゃんと拭かせるよ」

メガネをかけてちょっと見気弱そうに見えるけれど、それこそ中等部からSクラスの腐れ縁の清太郎とジョージ、こと高城譲司が肩をすくめた。



机に荷物を置いて、黒板脇にある出席簿代わりの機械にIDをかざして登録する。

授業の出席とは別に、これで遅刻などの管理を行っているため、みんなこれは最早無意識の行動になっていた。


そんな様子をみてクラスメイト達も声をかけてよこす。

「おー、椿木おはよう」

「あ、椿木くん、おはよう!」


挨拶をよこす級友たちにそれぞれ答えながら席に向かう。

「おはよう」

学校中の話題となっているリコール問題の渦中にあるはずなのに、ぜんぜんそんなそぶりも見せない。

「みんな、掲示板見た?」

改めて席について荷物をしまうと、クルリと教室内の生徒たちを見まわした。


「さすが、椿木。自分からその話題振っちゃった!!」

一瞬の間をおいて、クラスメイトが騒ぎ出す。

「あ~、一応気を使って触れない方がいいのかな、とか考えた、オレ」

「そりゃ、あの公示内容見れば椿木が全然悪くないのスグわかるし、遠慮することないだろ?」

朝のSHRが始まる前の時間、ざわざわと生徒達がクラス内で同意しあう。


「あ、やっぱり?」

クラスメイト達はわかってくれるとは思っても、廊下からチラチラ中の様子をうかがう生徒たちとあからさまに雰囲気が違うのに安堵する。

自分の正義を信じていても、正直不安になる。

椿木もまだ若干17歳の高校生なのだ。



「いやいや、あれは酷いって!俺、どう突っ込もうかと公示を前に笑いをこらえるの必死だったわ」


「「「「 だ よ ね ~ !!」」」」


もともとSクラスは持ち上がりで、他のクラスに比べて特殊だったが、こういった連帯感は半端ない。

「椿木、コテンパンにやっっちゃって!」

良い笑顔を向けてくるクラスメイト達に、逆に椿木のほうが引いてしまったくらいだ。

(なんか、皆ずい分と不満貯まってる?)


「え~と…。普通に反論するだけなんだけど?」



「「「おばかにはそれで十分」」」



なんだろうか、このいつも以上の一体感。


「そう?あ、そうだ。リコールの公示が出たから今日から生徒会室入室禁止になったんだ!」

不思議な盛り上がりに頭をかしげながら答え、ついでに生徒会入室禁止…というか、リコールが決定または無効となるまで、一時的にその権限を停止される事にも思い出した。



不利な証拠を隠滅する恐れが云々とか理由は有るらしいが。


「…つまり、白黒つくまで誰も生徒会の仕事をしないってこと??」


しーんと静まり返る。

本当ならこの時期は新歓イベントがあったはずだし、これからも夏休みの林間学校やら文化祭に向けてのアレコレが動き出してしかるべき時期なのに、はたして間に合うのか。



「あ~っ、もう!俺たちの高校生活~っっ!バ会長達め!!!」

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