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6月半ば。

インハイ予選などで運動部も公休が目立つようになってきた。

学力による特待生もあるが、もちろんスポーツ特待生もいる。

強豪校とはいえないが、文武両道を謳う学園の体面のために県大会でもそこそこの成績を収め、個人戦によっては地方大会や全国大会に出場する者も居ないではない。

今年は水泳部のエースと、弓道部の部長が地方ブロック大会までコマを進めた。



全国大会とものあれば、学園をPRする絶好の機会だ。

学校側がこんなチャンスを逃すわけない。


夏休み直前の地方ブロック大会へ出場を果たした選手のために、いつもは目立つことのない応援団(どうやら他の部活と掛け持ちしている団員がほとんどらしい)と、応援団顧問子飼のOB(意味が分からないです、先生)を引き連れて応援に行くらしい。

面白い事、にぎやかな事が大好きな生徒会役員は、こういう事には耳敏く参加するらしい。


「え~、〇〇県なんて俺初めてだ!!」


黒マリモもご機嫌でくっついていくようで、生徒会の役員と賑やかに話している声が聞こえてきた。

久しぶりに聞いた会長達の声も楽しそうだった。

留守にしてくれれば静かになるな、と通りがかった通路の外から聞こえる声にに椿木は薄く笑った。






「いやいや、逆だろう。あいつが校外でどんな恥をさらしてくるのか、俺はもう今から胃が痛い…」

いささか青白い顔色の佐野が疲れたような声で言う。

「委員長、しっかり!!」



相変わらず途切れることなく風紀から上がってくる被害届と請求書の束。

それを持って今日も生徒会室へ訪れる佐野風紀委員長。


と、なぜか一緒に来た副委員長。



「…何やってるんですか、江藤先輩まで」



二人のために入れたコーヒーをテーブルに置きながら、芝居じみたやり取りと呆れた顔で呟く。

この二人は中等部からの風紀委員コンビとして腐れ縁らしく、一人の時はいたってマトモに見える委員長も、二人が一緒にいるとギャグ要員と化すから不思議だ。


たぶん、副委員長のノリのせいだろう。



「そんなに胃が痛いならミルクつけますか?」


「すまない、頼む」


念のためにそう聞けば、珍しくミルクを所望された。

どうやら本当に胃が痛むのかもしれない。


「ダイジョブ、ミッチーが胃痛なのは今に始まったことじゃないから☆」


全然大丈夫じゃないことをキラリと笑いながら告げる江藤。

しかしよく見ればそんな江藤も目の下に熊が出来ていた。


「生徒会は見る影もありませんが、頑張ってる分風紀は大変そうですね…」



あれから一考に仕事をする気がない様子の生徒会役員に対し、風紀委員は一部の委員が職務放棄しているようだが、トップ二人がしっかりしている分だいぶマシだ。


もともと風紀「委員」と呼ばれているものの、各クラスから選ばれてくる他の各種委員会と違い、自薦他薦は問わない物の、風紀として相応しいか否か厳しく篩いにかけられ、初めて風紀委員となることが許可される。

人気で選ばれる生徒会と違い、その人となりで選ばれる風紀委員はそれはそれで一つのステータスであった。

もっともそれで天狗になるようでは風紀委員たる資格などないが。



「まったく。親衛隊どもはピリピリしてるわ、サルは暴れたい放題で器物破損、暴力行為とお構いなし。おかげで風紀の連中は被害届に現場検証に、巡回増やして授業でてる暇がない」

「おかしいよね、高校生なのにまるで警察みたいだよ。風紀だ、動くな!」

かっこつけてみても警察手帳のようなものを提示するわけでもないのでイマイチ決まらない。


「…今度から十手でも持ってみようか?」

京都出身のヤツにでも買ってこさせようか。太秦なら売ってそうだし…、とブツブツ呟く江藤はけっこうマジらしい。

「チョコレートでできたの、まえにスーパーに売ってましたよ」

「巡回中のエネルギー補給?巡回から戻ってきたら半分消えてたり、なんてね。あはははは……はぁ…」

さすがに疲れがたまっているようで、最後は思わずため息をついてしまったようだ。

一瞬だけしまった、という表情を浮かべて、またすぐ何時ものようなにやにやとした笑みにかえる。


「江藤先輩もだいぶお疲れのようですね」


いつも元気いっぱいの副委員長がため息をつくなんて本当に珍しい。

「…聞かなかったことにしてよ~」

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