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「おい、今日の分の猿の被害届だ……って、やっぱりお前しか居ないのか」

ノックもなく扉を開けて入ってきた男に、椿木侑士つばきゆうしは机の書類を片づけていた手を止めてそちらを向いた。


「佐野先輩、お疲れ様です」


豪奢な金髪をオールバックにしたまるで獅子のような男が、現在風雲急を告げるこの学園の風紀委員長・佐野光凪さのみつなぎである。

大和撫子にしか見えないという母親がクォーターで、隔世遺伝ながらも見事な金髪はもちろん天然モノとして人気が高い。



「おう、椿木もオツカレ。しっかし、またこれで処理が滞るか…」

はぁ…と大きくため息をついて、つかつかと書類の山が出来ている会長の机の上に、さらに持ってきた書類を重ねる。



一月近く貯めこまれた書類は当然「未決」のトレーに収まりきれるものではなくなっていた。

取りあえず提出期限の短いもの、重要な案件は抜き出して別にしていたが、それもそこそこ山を作り始めているくらいだ。




ここ銀嶺学園は国内の優良企業や旧家の子弟が多く在籍する、いわゆるお金持ちのお坊ちゃま校だ。

通学途中の誘拐などを防ぐため全寮制を強いており、玉の輿を狙った肉食系女子の魔の手から守るべく女子禁制であり、教師も職員もすべて男という、世間から隔離され閉鎖された空間である。


そんな学園のモットーに「自主性」なるものが存在し、学内の各種催事は生徒会が中心となって企画・運営を行っている。

そのため、普通の高校のような生徒会とは違って、生徒会役員がこなすべき物はけっこうな事務量があった。



だがその役員の選出方法は、閉鎖された空間のためか人気投票によって決定されている。

若い頃にありがちな容姿や家柄という偏狭的なものによってランク付けされ、抱かれたいランク・抱きたいランクなどが公然と存在し、それがもとに役員が決定されるという。


もっともそんな選出方法では果たして能力的に実務がこなせるか、と問題視され、人気投票とは別にSクラスの生徒から必ず1名以上の役員を選出する事になっている。

Sクラスは進学クラスとも言われ、学力・スポーツなどで一定条件を見たした人物だけの選ばれたクラスだ。そしてそのSクラスから、大抵1年か2年の生徒が教師の推薦で選ばれるのだった。



それでも人気投票という選考方法とはいえ、いずれは大企業のトップになるという自尊心から、生徒会は精力的に活動していたし、そんな学園に在籍できるという事で、一般生徒達にも誇をもって生徒会には協力していた。




そしてSクラスの椿木は生徒会役員の下っ端。

いわゆる書記だ。

花形の会長・副会長や、金銭を扱う会計とは違う。


Sクラス出身という事で選出されたランク外のいわゆる「平凡」な生徒だったが、前任のSクラス役員から太鼓判を押されて教師からも是非にと頭を下げられ、いい加減断る方が面倒になって引き受けた役職であった。



もっとも書記という役職がらか、それとも会長達のプライドなのか企画立案等からは外されて担当外であり、会議の最中も議事録を作成するため発言することもない。

基本的に会議資料の作成や報告などの事務処理を担当しているため、会議などがなければ書類の片付け程度しか仕事はなかった。

派手なパフォーマンスの会長達の裏でひっそりと仕事をこなす。

そんな地味な役職だから、目立ちたいと思ってない椿木にとってはせめてもの立ち位置だったが。





それが一変したのはつい1か月ほど前の事。

椿木が所属するSクラスに、特例の編入生がやってきたことから始まった。

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