追憶
追憶
前篇「手紙」からの続きとなる。とてもお世話になった方で、あまりにも突然の別れであった。
私が地元の大学でサークルに入り、空を飛ぶ際の手伝いをしたり、機材を貸してくださる方がいた。私たちはその方にパイロットになるためのトレーニングをしていただいたり、役員として全国の大会に手伝いに行くこととなった。
何故ここにいらっしゃるのか、それを敢えて知ろうとはしなかった。ただすごい経歴・人脈を持つ方であることは人々の会話の端々から読み取れた。
一緒に飛ぶ機会も数度あった。パイロットの指導者といち同乗者という立場の違いはあったが、よく話し、この土地出身の私のことも気にかけていただいた。
私が大学院に進学する条件、それは「サークルを辞めること」であった。もともとあまりこのサークルに好意的でなかった家族は就職ではなく進学を選んだ私に、引き換えの条件を出したのだ。私はその条件をのみ、研究に専念した。
関係者用のメーリングリストを構築し、管理されていたのもその方だった。サークルにいた当時はそのメンバーに加入していたが、一度引退した私は同期の管理するメーリングリストに参加していた。そこで訃報を知った。
その前の日から、研究の都合で三日間某所に詰めていた。しかし、それどころではない。訃報を知った次の日はある程度で早退し、現在の主人を連れて通夜へ駆けつけた。
忘れられない。「みんながその人が死んだって僕たちを騙そうとしているんだ」と信じられないような顔でいう彼の言葉を。
嘘であってほしい。しかし、そこには紛れもない証拠があるのだ。空を見上げては、涙する日が続いた。
その二年後、御家族からの年賀状が届いた。そして、私はこの土地を離れた。
前篇と合わせて考えること、それはするべき、やりたいと感じたらできるだけ早くやること、である。もし、もう少し早く連絡を取っていれば、願いを叶えられたかもしれない。今からでも何かできることはないかと考えている。
最後に、今でも空の楽しみ方を忘れないように教えていただいたあの方へ、心から敬意の意を表します。本当にありがとうございました。