手紙
手紙
私が実家へ帰ってきて、まず一番にしたことは年賀状を探すことだった。メールアドレスをうっかり消去してしまった友人のアドレスを探すのも一つの目的であったが、もう一つはお世話になったある人のご家族の住所を調べたいと思ったからだった。
その人はすでに鬼籍に入られている。
数年前にご家族より年賀状が届いていた。現在住んでいるところに偶然近い住所が記されていたため、その方のお墓にお参りしたい、無理ならばお仏壇にお線香でも、と考えていたのである。
こちらへ戻ってきて、手紙を書こうと考えていたら主人が言った。「まだそこにご家族がいらっしゃるか分からないから、電話とかで確かめてみたら?」
そういえばそうだ。最後の年賀状からもずいぶん長い時間が流れている。まずは電話してその住所にまだいらっしゃるかどうかを確かめてみることが先だ。
年賀状に記された電話番号に電話してみる。
「オカケニナッタデンワバンゴウハ、ゲンザイツカワレテオリマセン…」
やはり、この住所にはもういないのだ。そのまま詳しいことを知る友人に電話をかけて聞いてみたが、やはりご家族と個人的に付き合いがある方は周りにはおらず、彼女も知らないとのことだった。
結局、手紙は書けずじまいだった。「あて先にたどり着きませんでした」のスタンプと共に還ってくる可能性が高いと考えたからだ。目的を、一つ、失った。
ここでも、時間の流れの速さと、やりたいこと、やるべきことは早くやる、ということを身にしみて感じた。
その方との関係は次篇「追憶」にて述べたい。