コーリング・エンジェル(4)
目の前にふわふわと浮かんでいる少女がぐっと肢体を伸ばした。
その瞬間、背中からばさっと羽根が広がった。真っ白な羽がふわふわと辺りを漂う。
少女は左右をきょろきょろと見回し、やがてオレのほうを見つめた。
オレの視線と少女の視線が空中で交わる。
「あ・・・」
あまりの出来事にオレはしばし言葉を失っていたが、何とか声を絞り出した。
しかし彼女はふと視線を逸らし、細く白い腕を折り曲げ滑らかな手を顎の方に持っていった。
「何だ、これは? αテストは延期されたと聞いていたが・・・・・・」
「あの」
「直前に発生していたバグのフィックスが終了したということか。つまり、テストは予定通り実施される、と」
「えっと」
「ふむ。彼奴らにしてはよくやったではないか。誉めてやらねばな」
「・・・・・・もしもーし」
目の前にいるオレをガン無視して独り言を続ける少女。
しばらくして数度頷くと、再びオレの方に視線を向けた。
「そうか。そなたがαテストの参加者だな!?」
顎にやっていた手を、今度はオレの方に突き出し、人差し指をびしりと突きつける。
「参加者って何だ!?ってか、人をいきなり指刺すんじゃねーよ。失礼じゃねえか」
美少女だからって甘やかしたりはしない。人としての礼儀を欠くってーんなら、びしっと言ってやらなきゃな。
「失礼・・・・・・この動作は失礼に当たるのか。一通りの所作はプログラミングされているのだがな。時と場合によって使い分けをせねばならぬのだな」
少女はまた考え込みそうになったが。
「キャラ設定上、仕方がない。このまま進めるぞ!」
両手を腰に当て、すすすと音も無く降りてきた。ちょうど、オレの目の高さの辺りで止まる。
足の先から床までの距離を考えると、かなり小柄らしい。
「さあ、『コーリング・エンジェル』チュートリアルテストの開始だ!」
「ちょ、ちょっと待て! さっきから何なんだ、テストとか何とか・・・・・・」
「そなた、αテストに選ばれたユーザだろう」
「ユーザってなんだ。そんなもん、選ばれた覚えなんざねえぞ」
「ではなぜ、αテスト専用の端末を所持しているのだ」
「端末??」
少女がオレの右手を指差す。
右手には--オレの脳天を直撃した--スマホ、が握られたままだった。
「これは、その、ひ、拾ったんだよ」
脳天を直撃した後、地面に落ちたこいつを拾った。うん、それは間違いない。
「拾った、だと? 端末は厳正なる審査を通過したユーザにしか配布されないはずだが」
少女が怪訝な顔をする。
久しぶりの投稿になりましたー続きは考えてあるので、これからもよろしくお願いします^^