表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コーリング・エンジェル  作者: 小膳
6/11

コーリング・エンジェル(2)

放課後、オレは一人で帰ることになった。

ミトは教室に言いに来たように委員会があり、伊藤は部活の見学に行くと言って学校に残ることになった。

学校での予定が何もないオレは一人で帰路につくしかなかった。

人通りの無い帰り道を、一人でぼんやりと歩く。


(ヒマだなー・・・)


一緒に帰る相手がいないと本当にヒマだ。

自慢じゃないが、オレは音楽を聴くような機器も持っていなければ、歩きながら参考書を読みつつ勉強する、というような向学心も持っていない。

こんな時、ケータイでもあれば誰かにメールしたりしながら帰るんだろうか?

そう言えばミトもさっき「話しにくいことがあるから」と言っていたな。

家にはパソコンもないのでどのみちメールはできない。

「話しにくい」ことって何だ?

ミトの赤くなった顔を思い出すと、オレも赤くなりそうになる。


(もしかして・・・もしかして・・・こ、告白とか!?)


自分の考えに、頭が一気に沸騰した。

熱くなった頭を振り払い、冷静になるように気持ちを落ち着かせる。

ミトに限って、そんな。伝えたいことがあるなら、面と向かって言ってくれるはずだ。いや、待てよ。恥ずかしがりやのミトだからこそ、あえてのメール、という可能性もあるじゃないか。

考えているとだんだん分からなくなってきた。

せめてメールができれば・・・ああ、ケータイがあれば・・・。

ミトが何を伝えたかったのか、気軽に確かめることが出来るというのに。

「ケータイを持っていない」という今の自分の立場が急に恨めしくなってきた。

ケータイさえあれば・・・ケータイさえあれば・・・。


気づくとオレは、足を止め、握り拳を作った両手を空に向かって伸ばし、大声で叫んでいた。


「オレも、ケータイ、ほしいぞーーーー!!!」


自分の声に我に返る。

ぱぱっと周りを見渡す。幸いなことに、周囲には誰もいなかった。

よかったよかった。こんなアホなところ見られたら、明日学校で何を言われるかわからない。

再び歩き始めたその時。


すっこーーーーーん


頭に今までに味わったことのないような衝撃が走った。

マンガ的に表現するなら、目から火花が飛び出しているところだ。

激しい痛みに目から涙が出そうになる。事の次第を把握し切れていないオレは、激痛を訴える頭を抱えてうずくまった。


「な、なんだ・・・?」


続いて、がつっ、という何かがぶつかる音と、ざしゃーっ、という何かが滑る音が聞こえた。

文字通り涙目になりながら音がした方を見る。

5メートルほど先の地面に、おそらくオレの頭に最大級の激痛を与えたと思われる物体が転がっていた。

頭をそっと押さえながら、何とか立ち上がる。頭に触れていた手を目の前で広げて見たが血はついていない。裂傷にはならなかったようだ。

ずきずきと痛む頭をさすりながら、その物体に近づいてみる。

それは。

縦10センチ、幅5センチ、厚さは1センチほどで、角は丸みを帯びた長方形の「板」のような物だった。

頭を押さえているもう片方の手で拾い上げてみる。オレの頭に激しくぶつかり、その後地面に落ち、派手な音を立てて地面を滑っていったはずなのに、その「板」には傷一つついていなかった。

片面はテレビ画面のような液晶になっており、もう片面は黒の硬化プラスチックのようになっている。側面には銀色の小さなボタンらしきものが幾つかついている。液晶らしい面にもボタンとおぼしきものがついている。

オレはしげしげとその板を眺めた。自分の記憶にある、あらゆるものに照らし合わせてみる。伊藤に借りたゲーム端末が近そうだが、そのどれにも当てはまらなかった。

しばらく考えていたが、最近見かけたモノの中で、該当しそうなモノが一つだけあった。


これは、あれだ。

ひょっとして。


「スマホ」ってやつじゃないか??


クラスでも持っているやつが何人かいる。ちらっと見せてもらったことがあるが、こんな感じだった気がする。

さらっと触るだけでくるくると画面が展開される。従来のケータイの基本機能である「電話」や「メール」に加えて、様々なソフトを入れる事によって、多彩な機能を発揮するらしい。小さなパソコン、とも表現される。--以上は伊藤からの受け売りだ。

ケータイすら持たないオレにとっては夢のまた夢のようなアイテム。スマートフォン。略称「スマホ」。

オレは「スマホ」と思われる板を持ったまま、再び辺りを見回した。相変わらず人通りはない。

オレの頭にぶつかったのなら、上から落ちてきた、ということになるのだが。見上げても、青い空が広がっているばかりであった。

オレは軽く咳払いをした。誰かの落とし物かもしれない。警察に届けるにしても、一度家に帰らなくてはいけない。


(違う。一時的に預かるだけだ)


誰に言い訳するでもなく、自分に言い聞かせながら、オレはスマホ(と思われる板)をそっと制服のポケットに入れ、帰り道を急いだ。



閲覧ありがとうございます!


今回の話に登場した「スマホ」。何と描写したものか・・・悩みました><

「スマートフォン アプリなければ ただの板」なって川柳があった気がしますがw ほんと、ただの板ですよねえ。

これだけ硬いものがぶつかったのに流血せずにすんだ大吾朗はよっぽど石頭なんでしょうねw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ