コーリング・エンジェル(導入1-3)
エビル・マシュマロたちは一瞬動きを止めたが、オレが動かないことに気づくと、一斉に飛んできた。
オレは腕をひき、溜を作る。エビル・マシュマロたちがオレにぶつかりそうになる寸前で体を引いて突進をかわし、下からすくい上げるようにして思い切り剣を振り抜いた。エビル・マシュマロは綺麗に真っ二つになった。
「おお、やるではないか」
そばにいたミルフィが少し驚いた表情を見せ、オレを誉めた。
「それほどでもねえよ」
誉められるのに慣れてないオレは、つい照れてしまう。真っ二つに切られたエビル・マシュマロは、指の関節一つ分ほどの小さなマシュマロに姿を変え、動きを止めた。
「その調子でどんどん叩き斬れ!」
「おう、分かってるさ!」
初めて対する相手でも、動作を見切れば何ということはない。何度かの実践で体得したことだ。ミルフィの戟もあり、オレは次から次へとエビル・マシュマロをただのマシュマロに変えていった。
「しっかし、キリがないな・・・」
結構な数を倒したはずなのだが、エビル・マシュマロの数は一向に減らない。むしろ、増えているようにさえ見える。力をセーブせずに剣を振り回していたので、段々腕が重くなってきた。このままじゃジリ貧だ。
少数編成での特攻では意味がないと気づいたのか、エビル・マシュマロは集団を作り始めた。顔を寄せ合い、ひそひそと話をしている・・・ように見える。
「おいおい、内緒話か? ずるいんじゃねーか」
「油断するなよ」
ミルフィがオレに耳打ちする。
「仲間を呼んで誘い込むぐらいの知恵はあるようだ。気をつけろ」
「たかだかお菓子の集まりじゃねえか。そんなに何を・・・」
オレがミルフィの言葉を否定しようとしたときだった。
ごつん、ごつんと固い物同士がぶつかりあうような音が繰り返される。
エビル・マシュマロたちが、お互いの体をくっつけ始めたのだ。
「な、なにを・・・?」
周りにいたエビル・マシュマロ全てが一つに密集した。
「もしかして、合体!?」
ミルフィが驚愕の声を上げる。ぼん、と大きな音がした。
「ええ~!?」
今度はオレが悲鳴を上げる番だった。エビル・マシュマロは合体して、大きな大きなマシュマロになっていた。
高さはミルフィと同じぐらいだが、幅は五倍以上ある。
どちらかと言えば、見た目は巨大なあんまんのように見える。中心には二つの黒い点があり、その下には細い線が引かれている。線はやがて赤い半月になり、まるで笑みを浮かべているようだ。月光に照らされたその巨体は暗闇の中で不気味な発光体となっている。
「こんなのありかよ~」
オレは情けない声を上げた。
「弱腰になっている場合か!攻略方法を考えろ!」