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生きる死ぬか

 仙人はクリルを抱え、家に着いた。

ドアを足で押しながら、店に入って行く。

コップなどを拭いていた神治は仙人を見るなり・・いや、仙人が抱えているクリルを見るなり


「おや仙人、その背負っている美少女は?あとさっきまでいた素敵な女性はどこに?」

コップを拭くのをやめ、神治はフライパンを手に取り聞いてくる。


「背負っているのは怪我人で、さっきのは還った。(土へ・・・)」

仙人はテーブルに置いてあるだいぶ覚めたコーヒーを、クリルを背負ったまま飲んだ。

(この子を病院へ連れていくべきか・・・いやなんかわけありそうだし、どうするか。)

そんな事を考えているうちに奥から仙人の母親、鬼灯ほおずき 時雨しぐれがやってきた。時雨は背負っているクリルの顔を見て、


「うーん、擦り傷みたいなのが結構あるけど、気絶しているのとは少し違うようね・・・たぶん疲れがたまってたんでしょ。仙人の部屋で少し寝かせてあげなさい。直に目を覚ますでしょ♪」

それを聞いていた神治は少し興奮気味に


「母さんそれは危ない!そんな気絶している少女を自分の部屋に連れていくなんて一体何をしでかすか分らない!それにまだ幼い顔つき!まだ成長しきっていない体!父さんならそんな状況になったら迷うことなくっぷぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

まだ言い終わらないうちに時雨は神治に向かって引き出しから取り出したフォークを投げつけた。

それは神治の眉間みけんに見事に命中し、血が飛び散った。

時雨はこめかみに血管をうかばせ、引き出しから取り出した何本ものフォークを指と指の間にはさみながら笑顔で


「少し黙ってなさい神治さーん?妻の目の前でそんな話をするなんて何考えているんですか?ロリコンなのは構いませんが限度ってものがありますよ~♪」

そういう時雨は身長140cmと、とても小さな体型で顔もとても幼く見える・・・というかどう見ても中学生か小学生にしか見えない。神治の性格がうかがえる。

神治は眉間から血を流し、半分涙目になりながら。

「母さんそれはちょっと違う、おれはロリコンなのではない、ロリも好きなのだ。」

自信満々に言い切った神治だが、時雨から新たなフォークをプレゼントされ、ついに倒れた。


「ふぅー、困った人だわ。仙人、貴方はその子を休ませてあげない。後始末はお母さんがしておくわ♪」


「いや母さん、殺しちゃ駄目だからね。」

仙人はまだフォークを手元で遊ばせている時雨の横を通り過ぎようとする。

時雨は仙人が通りすぎる直前に耳元で


「貴方はそんな子じゃないと信じているけど、もしもその子に何かすれば・・・お仕置きだから覚悟しなさいね♪」

仙人は顔をかなり青くし(そんなに信用ないなら自分の部屋つれていけばいいだろ!)的なことを思ったのだがそんなこと言えるわけなく。


「そ、そんな事絶対にありえないから信用してよ・・・」

時雨は完全にチキンモードになっている仙人の首元にフォークを突き付けていた。


「うーん・・・それもそうね♪」

時雨はフォークをどけると、倒れている神治の服の襟をつかみ起こして


「ならお母さんちょっとやることがあるから♪」

そう言って神治をつかみ起こした時雨は


「神治さーん、あまりにも無造作に手を広げているとのちのち々ひどい目にあうのよ。それを今から教えてあげる♪」

仙人は全力で2階の自分の部屋へ駆け込んだ。

(この下の階は今地獄と同じだ!)

下の階からは何やらおぞましい音が聞こえる。

兎にも角にも仙人は自分のベッドにクリルを寝かせる。そして窓を開け、


「ウランいるんだろ?入ってきな。」

そう叫んだ。

するとふわふわとフクロウのような生物、もとい魔王が飛んできて、


「お前の父親・・・大丈夫なのか?」


「たぶん死にはしないと思う。ただ、それに近い状態にはなってるかもしれないな。」

前にも神治は時雨をこれと似たようなことをして怒らせ、全治3週間の大怪我を負っている。

全て神治が悪いのだが・・・

仙人はそれを目の当たりにし、それ以来時雨の逆鱗に絶対触れないようにしている。

仙人はテーブルに座り


「ウラン、さっき燐とかいうやつが話していた魔族だとか妖力とかいうものを詳しく教えてくれ。」

ウランは仙人の顔を見据え


「どうしてもか?」


「どうしてもだ。」

ウランは少し考え


「分かった。またこんな目にあうのもたまらんだろうからな。教えてやる。」

ウランはテーブルの真ん中を陣取り


「まずは妖力の説明だ。妖力ってのは簡単にいうとエネルギーみたいなもんだ。妖力というエネルギーを使うことによって、クリルのように空間から小太刀を召還させたり、俺のように衝撃波を飛ばせたりすることができる。特殊な能力を発動させるためのエネルギーと思ってもらうと分かりやすいかな、うん。」


「特殊な能力を発動させるためのエネルギー・・・」


「まぁどんな能力があるのかは、個人で違うんだがな。エネルギーである妖力が必要ってことだけは変んねえんだわ。」

ウランはどこからともなくタバコを取り出し、それを吸いながら



「お前はその妖力をたくさん持っている・・・いや作り出しているか。んでそれだと都合が悪い連中がいるから襲われた。」


「それがさっきのりんとかいう奴か?」


「まあそんなとこかな。」

仙人は顔を少しひきつらせながら


「ちょっと待てウラン。今連中っていったな・・・ということはまた俺は殺される可能性があるってことなのか!?」

ウランはタバコの煙をふかしながら


「少なからずお前は妖力があるって分かっちまったんだ。まあ殺されるだろ。」


「そんな・・・」


「情けは人のためならず。だけどそれは、助長じょちょうという形でかえってきたさね~。」

仙人が振り向くと、いつの間にかクリルは起きていて、髪をクルクル指でいじっていた。

クリルはするりとベッドから這うように滑り降りながら仙人と鼻がくっつきそうな位置まで近づき、仙人の頭を軽く撫でながら


「貴方はとっても運が悪い人さね、まぁ厄病神やくびょうがみである私が言うのもなんだけどね・・・そうだウラン、奴らの事話したさね?」


「いや、まだだが~。」

ウランはタバコをさらに五本取り出し、同時に火をつけ吸い出した。部屋がタバコ臭くなるので止めてもらいたいのだが・・・


「じゃ、私が話すさね。」

クリルは仙人の頭を撫でるのをやめ、ベッドに腰かけると


「さっきの襲撃者しゅうげきしゃの事だけど、あれは四季しきっていう組織の奴さね。」

クリルは眼帯の位置を整え直し、伝線したストッキングを履き直しながら答えた。


四季しき?」

仙人はテレビの画面をぺたぺた触りだしたウランをちらりと見ながらそう答えた。


「そっ。季節をモチーフとした、妖力を使いこなす『人間』の集団さね。その組織は貴方みたいな妖力が強い人間から妖力を奪う集団さね。」

クリルはテレビを殴りだしたウランを腕で抱え込みそのまま強くめ付け始める。


「なんでそんな事するんだ?」


「そこが魔族まぞくと関係するところさね。」

クリルは髪を指でくるくるいじりながらウランをさらに締め付ける。


「魔族ってのは妖怪ようかいたぐいの者の事さね。妖怪って聞くとどんなイメージがあるさね?」


「う~ん、昔話とかによく出てきて、悪さしたり、人をさらったりする・・・?」


「そのとおり。悪さしたり、人食べちゃったりするイメージがあるのが一般的さね。」

(少し改ざんされてるような・・・)

そんな事お構いなしにクリルは話を続ける。


「それはあながち間違ってなくて、妖怪ってのは悪さしたり、人を食べちゃったりしてるさね。まぁ人を食べちゃったりするのには理由があって・・・。」

クリルは仙人を指さして


「人間を食べるのは別にお腹を満たすためじゃなくて、妖力の補給ほきゅうのために食べるさね。妖力がそこそこあって、力を持たない人間は妖怪にとっては最高の栄養食品ねぎかもってわけさね。」

クリルはウランが泡を吹き、白眼になった事を確認すると、部屋のすみに投げ捨てた。


「・・・ん?待てよ・・・じゃあ今ぶん投げたのは妖怪ようかいの頂点の魔王だよな!?そしてお前も魔族って言ってたよな!?じゃあお前も人間を食うのか!?」

仙人は空のペットボトルを身構え、臨戦態勢にはいる。

クリルは軽くため息をついて


「そんなペットボトルで無駄な殺気を飛ばす必要ないさね・・・別に食べるつもは・・・・・・・・・・無いさね・・・」

(なぜそこでそんなに考えた!?)


「まぁ実際、人を食べなくても妖力の補給はほかにいくらでもある・・・でも魔族にとっては人間を食べたほうが効率よく妖力をもらえるさね。」


「・・・話がそれたさね。んじゃ戻すさね。四季しき魔族まぞくと戦うために結成された組織さね。つまり妖怪から人間を守るための義勇軍みたいなもんさね。」


「ふむ、ふむ・・・・ふむっ!?ちょっと待て!話がおかしくないか?四季は人間を守る集団って・・・さっき俺は殺されかけたし、お前もさっき妖力を奪う集団って言ってただろ。おかしくないか!?」


「その通り、おかしいよね。でもね、それは組織の目的が途中から変わったとしたら?」


「・・・はい?」

仙人は首をかしげる。


「つまり、義勇軍だったのは昔の事で、今は違うものになったって言ってるさね。奴ら・・・四季は人間を魔族から守る組織から人間から妖力や命を奪って、魔族を絶滅させる組織に変わっちゃったさね。」


「・・・」


「さっきも言った通り、魔族は妖力を人間から補給して能力を使うさね。つまり妖力をもった人間から妖力を奪えば魔族は妖力の補給ができなくなり弱体化させ、滅ぼせるって奴らは考えたさね。


「そういう理由で俺は殺されるところだったって訳か。」

仙人は開いている窓を閉め、ロックする。


「そういう事。妖力を奪う事は別に殺さなくてもできる事なんだけど貴方みたいに妖力が多い人は奪いきれないから殺すわけさね。たぶんこれからも狙われるさね。」

それを聞いたとき仙人は全身から血の気が引いていくのを感じた。


「この流れだと魔族からも四季って組織からも俺は命を狙われるパターンですか!?」


「は~い正解。よくできました~。ようやく自分の状況を理解してもらえて私は嬉しいさね~。」


「・・・」

クリルは少し間をおいて


「そこでだよ仙人?私からちょっとしたお願いがあるさね~・・・」

なんだかさっきとは違い、妙に上目遣いで聞いてくる。


「実は私もその・・・四季の組織に追われているのは分かっているとは思うんだけど・・・その・・・魔族からも・・・追われているさね。」


「え?だってお前!そこにいるの魔王じゃ・・・魔族の頂点じゃ・・・」


「そんな事より、貴方は生きたいさね?死にたいさね?」


「そりゃ生きたいにきまってるだろ。」


「でしょう?・・・そこで貴方を私がこれから守る・・・ボディーガードをしてもいいんだけど・・・」

クリルは一呼吸おき


「そのかわり・・・やっぱ貴方を食べさせてさね!」

突然クリルは仙人の胸に飛び込んでいき首元軽く舐め、牙を突き立てた。


「はいぃぃぃぃ!?」


「貴方は生きたいさね?それとも死にたいさね?」

たとえ生きたいと願っても、無事では済まなさそうな状況に仙人は必死に打開策を探し始める・・・。

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